血統鑑定士の災難

やよい

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血統鑑定士の災難【本編】

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2人の動きがピタリと止まる。

先程まで私が何かを発する度に言い聞かせるように言葉を被せてきたのに、沈黙する2人。

エドゥバルドの腕の中で叫ぶように詰まっていた言葉を吐き出した私は、固まる空気にどうしたら・・・と涙目になる。

次第にエドゥバルドの身体が小刻みに震えだしたのを腕の中で感じた。

「く・・・っ、くくっ、くくくく・・・っ」

笑いを押し殺しているようで全く出来ていないエドゥバルドの笑い声に、私は恥ずかしくなり離れようとグイグイと両手で胸を押して「なんで笑うんですかっ」と抗議の声を上げた。

腕の中から何とか見えるトゥマエレ教皇も声は上がっていないが、目を逸らして口元に手を当て、肩を揺らし笑っているようだった。

なんでですかっ、大事なことではないのですか!?

1人では満足できず、2人どころか3人に想いを寄せるなんて・・・

しかも、2人から同時にされる事になんの抵抗も疑問も持たなかったのにっ

寧ろ、気持ち良いという思いの方が強くて・・・いや、今は思い出すのを止めよう。

この事について何故か2人が全く問題視していない事にまだ納得いっていないけれど、この先のことを考えると己が怖いというか、信用できないというかなんというか・・・

これで、4人も5人も・・・いえ、それ以上求めるようになってしまうんじゃないかと危惧してもおかしくはないではないですか!

そんな事を思わず口走り、腕の中から出ようと身を捩るがガッシリと抑え込まれたままで思うように動けない私の顎を掬い上げてキスが落とされる。

そしてまた抱き込まれてしまい、突然のキスに言葉を止めてしまった私にエドゥバルドはまだ笑い足りないらしく、声に笑みを残したまま言葉を紡いだ。

「あー・・・、まずロアンが望まないのなら、これ以上増えていくのは俺らも望まないな」
「でも、リリちゃんが望み、その相手が私達の存在を容認するのなら、私達に否やはないわね」
「淫乱、結構なことじゃないか。というか、想うだけで淫乱なら、陛下はどうするよ」
「王妃陛下の他に側室が5人いるわね」
「そ、側室様は跡取り問題もありますし、政治的なことが・・・」
「あぁ、違う違う。坊主・・・殿下が産まれた後は率先して王妃陛下が陛下へ側室を宛がっているから、そういう事でもない。側室は全て陛下との見合いの下、王妃陛下が陛下の意図を組んで一気に5人据えた。この5人とも、実家との繋がりは切っているし、王妃陛下を母や姉、友と云う様に慕っているし、何よりも国を想い、陛下を愛しているから、全員同意の下で出来上がっている関係だな。すごいぞ、陛下が粗相をしようもんなら6人で説教だ。今じゃ宰相は陛下よりも后達に相談していたりするぞ。裏で」
「お子に関しては、教会が管理する秘薬の一つではあるけれど、子を授かることの無い様にできるものがあるのよ。想い合う同士でそれを服用させるのは教義から外れてしまうのだけど、両陛下と側室達が望むからと教会側も容認というか黙認しているってだけだけどね」

聞きたくないっ、聞きたくないぃぃっ!

「秘薬は服用を止めてしまえばいつでも子を授かれる身体に戻るから、今王太子殿下ただ一人しか居ないってことは必要ない。と王家で判断しているって事でしょ?」
「ま、以前は外野がいらんこと喋くって陛下をせっついていたが、坊主がそれを行動で黙らせているからなぁ」
「それはさて置き、リリちゃんは、あとは何が懸念なの?」

王家を取り出したのは極端だけれど、高位貴族や裕福な家で見られる事でもあるとトゥマエレ教皇は付け足した。

「すべては相互同意の下で。だ」
「そうね、嫌がる人に無理矢理こういった関係性を押し付けたりはしていないわ。でなければ直ぐに破綻してしまうから。家同士の婚約も婚前にかなり細かい契約書を交わすわ。それで本人同士の折り合いが付かない場合は円満解消という事で終わらせているわね。オリヴィエ嬢とハロルド君だって最初は良好だったのよ? 頭のおかしい子マリアンナ嬢が介入してくるまでは」
「だいたいは一夫多妻、一妻多夫が当たり前の中で育つから疑問にも思わんしな」
「現宰相閣下のご家族は一夫一婦ですよ」
「あそこは特別だわね。魂の伴侶を得たのだから。珍しいのよ?サヴォイ宰相夫婦にその長男夫婦も魂の伴侶なんだもの。執着や独占衝動が小さいから本人たちは気付いていないけれどね」
「一般家庭ではっ」
「経済的な観点から。というものが殆どだな。経済的に余裕のあるそこそこの家庭なら2人くらいは抱えているぞ?それで事足りていない奴は娼館へ行っている。隠れてか、同意でかは知らんが」
「旦那様の絶倫ぶりに奥様が根を上げて、お願いだから娼館へ行って!と懇願しているところもあるわよ」

逆も然り。とトゥマエレ教皇の言葉に付け足すエドゥバルド。

なんでそんなお家の事情を知り尽くしているんですか・・・

教皇と鑑定士長ですものね、色々な情報は耳にしますものね。

「・・・で、三股、四股はリリちゃんが悩むほどのものかしら?」
「淫乱ではないだろうか。と来たときは笑ってしまったが、ま、可愛い悩みだな」

本気で悩みだしたのが馬鹿らしくなってくるかの様な言葉の羅列に私はぐうの音も出ずに押し黙った。

つまりは、私のこの一人に定まらない優柔不断な心は咎められるものではなくて・・・

ただの独り相撲だったと・・・いうこと、で・・・

この日は何度自分を情けなく思う日だろうか

「ああぁぁぁぁぁ・・・」
「抗うのは諦めたのか?」
「ふふ。リリちゃんは本当に色々と考えすぎなのよ。言ったでしょ?心の赴くままに、って」
「相互同意の下で、とは言ったが、説得できるつもりではいたがな。・・・俺もトゥマも、坊主も、恐らくお前を離してやれん」
「そうねぇ、本気で嫌がらない限りはありとあらゆる手を使ってリリちゃんをこちら側に引き込むつもりではいたわね」
「わ、私の嫌がることはしない、と・・・」

なんだか不穏な雰囲気に恐る恐ると聞けば・・・

「だって、お前(リリちゃん)、嫌じゃないだろう?(でしょう?)」

と声を揃えて返された。

「ロアンは、俺の事を慕っていると言ってくれたよな?」
「リリちゃんは私とのキスが気持ち良いと思ってくれたでしょう?」

後悔先に立たず。

私はあの時の私を全力で止めに行きたい。

口を滑らせたばかりに、こんな事になるなんて。
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