血統鑑定士の災難

やよい

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血統鑑定士の災難【本編】

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魂の伴侶・・・

その無意識の呟きに私は目を見開き、ガバと身体を起こす。

まさか?・・・いや、まさかなんて疑うべきじゃない。

あの触れ合った時の溶け合う様な幸福感と、一つになりたい、エドゥバルドが欲しいと奥底から湧き上がる衝動を思い出し、身体が震えた。

あれは、魂の伴侶に対する衝動だ。

孤児院に居た頃、幾度となくシスターが話していたものだと確信できた。

――出会い、心を通わせ合った瞬間から、神が定めた夫婦は誠の夫婦になるのです。皆、居るのよ。ただ、お互いが持つ時間が交差しない時もあるでしょうし、住んでいる場所が大きく違ったり、生まれた種が違ったりする場合もあるでしょう。・・・出会えるのはまさに奇跡ね。神様の思し召しだわ。それでも、ここ、サマリティシア教の御膝元はその奇跡がよく見られるそうよ。・・・ロアンちゃんにも、きっと居るわ。だって、貴方は出会う為にこの国へ来たのだから。

――だから、求める心から決して目を逸らしては駄目よ?すれ違ってしまうから。

あのシスターは、修道院長のばあ様だ。

修道院長のギフトが天啓を受け、私にそれとなく話してくれていたのかもしれない。

それなのに・・・、あの触れ合いが無ければ、気付けなかった事に私は自嘲した。

「なんて、鈍感なんだろぅ・・・」

あんなにも言われていたのに。

出会った頃の私は、求める己の心から目を逸らし、何だかんだと理由を付けてこの想いは憧憬なんだと、決して思慕ではないんだと誤魔化す事が出来るほどに子供だった。

蓋をしてしまった想いを取り出すことが無ければ・・・、今日の出来事が無ければ、それこそ死ぬまで目を逸らしたままでいただろう。

だが、今日のあの触れ合いで、私の中で眠っていた衝動が急激な成長を遂げて花開いていくのを感じていた。

それなのに、エドゥバルドもトゥマエレ教皇も私と出会った頃は、もう充分過ぎる大人で。

予想でしかないけれど、自意識過剰と笑われてしまうかもしれないが、あの2人は湧き上がる衝動を強く自制してくれていたのだろうと思う。

だからこそ、エドゥバルドは私を隣に置きながらも逃げ回っていたのかもしれないと思えてしまった。

・・・仕事をサボる理由には一切ならないが。

トゥマエレ教皇の時々見せる過剰なスキンシップだって、私は冗談だと折り合いをつけていなしていた。

見習い期間中、何やら臀部に添えられた手が怪しい動きを始めた時は、修道院長が「あらあら、うふふ」と笑顔でトゥマエレ教皇の手の甲を力いっぱい抓って止めていた事を思い出した。

・・・あれ?自制出来てない?

警備兵さんお巡りさん、こっちです?」

・・・、王宮に見習いとして入ったばかりの時にまだ鑑定室付ではなかったが、メイドのシアさんが、ぐふぐふ笑いながら呟いていた言葉が思わず口をついて出た。

幼い子によからぬ事をしようとしている人に言うセリフだとかなんだとか説明を受けた様な・・・?

いや、照れ隠しに別の事を考えている場合ではない。

――私達から逃げようとするよりも、最適な方法を探してみて

あの時は何だかんだと逃げ道を探してしまい、幾分冷静になった今、かなり都合の良い説得をされていた様な気がするが・・・

もう逃げてはいけない。

いや、逃げられない。が正解だろう。

私に芽吹いた魂の伴侶の衝動は、今も尚、2人を求めている。

――リリちゃんがエドも私も好きで・・・2人ともリリちゃんの事が好きなのよ?

はっきりとは言葉にされていないし、私も曖昧な言葉で告げた気がするけれど、心をくれた2人に私はきちんと向き合いたいと思い始めた。

・・・エドゥバルドには多少、勢いで告げてしまって、既に呼び名を貰っているが。

きちんと向き合って、2人には告げたい。

そう、思った。

ぽふん、と倒れ込み、天井を仰ぐ。

あのぐるぐるとどうしようもない事を言い訳にしていた、先程までの自分が何だったのだろう。と笑えて来た。

そうだ。私は、いざ、こう!と腹を決めたらもう、そこへと突き進むだけだと割り切る性分だ。

それまでは、まぁ、どうしようもない程に悩んで悩んで・・・逃げようとするのだけど。

でも、私も腹を括った!

認めよう。

ヴァルと心を通わせ合えたことが幸せなのだと。

トゥマエレ教皇の気持ちが嬉しいのだと。

そう、素直に伝えよう。

この際、魂の伴侶が一対一ではない事は些細な事・・・にはまだ到底思えないのだが、そうなのだから仕方がない!

サマリティシア教の女神、愛と豊穣を司るアシュケリュスから送られた祝福なのだ。

愛があれば、一夫多妻、一妻多夫など当たり前!平等に愛せさえすれば問題ないのだと、教会でも教わった(少し極端な要約だったが)、そんな女神の『神の定めた夫婦』なのだ。

「そうだ。私は2人が好きだ。彼等は私の伴侶だ」

1人、声に出してみると、心の在り方がしっかりと固まった気がした。

ストン、と胸に嵌ったのだった。
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