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第18話
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「今日はAmber Youthのライブに来てくれてありがとう! 最後まで盛り上がってくれよな!」
ボーカルの煽りでライブが幕を開け、ライブハウスの1番後ろでエリオットと彼らのステージを見守る。スモークの匂いと熱気で空気が震えている。
動画で見ていた時の演奏とは大違いだ。PCのスピーカー越しで聴いていた時とは桁違いのライブハウスでの音の渦に圧倒されるのはもちろんだが、何よりも黒川と篠崎の演奏が生き生きとしている。お互いの音がお互いを爆発させ、その勢いに乗って他メンバーの音も重なっていく。彼らのエネルギッシュな音は客席を揺らし、拳を突き上げる者、声を上げる者、各々が音楽の楽しみを享受していた。あっという間にアンコールまで駆け抜けていく。
「それではAmber Youthでした! ありがとうございました!」
客席に手を振るメンバー、満足そうに拳を掲げるメンバーたちの中、黒川と篠崎がお互いの顔をじっと見つめている。すると引き寄せられるかのように、2人が唇を重ねた。客席からは囃し立てるような歓声が沸き上がり、何が起こったのかと横を見た他メンバーたちがあんぐりと口を開けている。そんな周りの視線を無視するかのように、2人は貪欲にお互いを求める熱のこもったキスを続けていた。
「……ったく何やってんだあいつらは」
「まぁ、客席も盛り上がってるしいいんじゃないか? それより、いいライブだったな」
「そうだな。あいつらの音のピースがぴたりと合わさった良い演奏だった」
抱き合ってキスを続ける2人を他メンバーが強引に袖へと捌けさせる。そんな2人の熱を祝福するかのような歓声に包まれて、Amber Youthのライブは大盛況で幕を下ろした。
撤収作業が終わった暗いライブハウスの客席でエリオットと佇む。お互いの端末を確認すると、任務完了の通知が飛んでいた。
「レヴァンはいつ魔界に戻るんだ?」
「日が昇るギリギリまでこうして一緒にいたい。だめか?」
「大歓迎に決まってる」
するりと手が重なると、エリオットと指を絡ませる。
「……あいつら、ステージ上でキスまでするとは思わなかったな」
「あぁ、でも眩しかった。あの2人は周りがどう思うかなんて気にせずに、堂々とステージの上で愛を伝えられるんだと思うと、私は彼らが羨ましい」
エリオットの視線がこちらと重なる。
「私たちも、必ず世界を変えよう。天使と悪魔が共存できるように。胸を張って、レヴァンの恋人として隣に立てるように」
「そうだな。俺もあいつらから勇気をもらった。俺たちなら絶対に大丈夫だ」
そっと唇を重ね合わせる。胸に広がるのはエリオットへの愛おしさと、未来への希望だった。
「……なぁ、人間は綺麗な歌声のことを『天使の歌声』って言うだろ? やっぱり天使って歌が上手いのか?」
「いや、それは一部だけだな。私は得意ではない」
「そうなのか? でも俺、エリオットの歌が聴きたい」
繋いだ手に込められた力がぎゅっと強くなる。
「……ならレヴァンも一緒に歌ってくれ」
どんな闇も超えていく 君の声があるから――この三日間、何度も聴いたAmber Youthの楽曲だ。すっかりメロディーと歌詞も覚えたその曲を、エリオットの声に重ねるように歌っていく。先程までの華やかなライブが嘘のように、ライブハウスに響くのは俺たち2人の歌声だけだ。
この声を重ねて――サビの最後まで歌い終わると、エリオットと見つめ合う。
「良い曲だ」
「そうだな、あいつらからもらった贈り物だ」
2人の声が重なるだけで何だってできる気がする。俺たちは確かに同じ方向を向いていると思うことができた。
「……今回の任務で、エリオットの魂にも触れることができて、嬉しかった」
「何なら、今も触ってみる?」
昼間とは違い、今度はお互いの胸に手のひらを置く。エリオットが好きだ、エリオットなら俺の全てをさらけ出せる――そう強く念じていると、自分の胸からも赤い宝石のようなものがふわりと浮かんだ。
「これがレヴァンの魂……」
お互いの魂にそっと触れると、身体中をあたたかな喜びが駆け巡る。すると魂は持ち主の胸へとすっと溶けていった。余韻に浸るように、目の前の身体をぎゅっと抱き締める。
「……愛する人の魂に触れると、こんなにも幸せな気持ちになるのか」
「次は半分に割って交換だな」
「あぁ……早くレヴァンの魂を私の胸に迎えたくてたまらない」
「俺もだ」
愛おしい気持ちを分かち合うように、顔を見合わせて笑う。
「俺の魂、赤色だったな。エリオットの魂が水色だったから、瞳の色と同じなのかと思ってた」
「たしかにレヴァンの目は綺麗な琥珀色だからね。でも、私はレヴァンの魂が赤なのはすごくしっくりくる。今回の任務でレヴァンは誰かの心に寄り添って、火を灯すのが本当に得意なんだなと改めて思ったよ。君と一緒に任務ができて良かった。惚れ直したよ」
惚れ直す――その言葉に心臓がどきんと跳ねる。
「俺も、今回の任務でエリオットの良いところを改めてたくさん知った。俺がパニクってる時にエリオットは落ち着いて状況を分析してくれるし、何より頭の回転が早い。俺1人だったらこんなにスムーズに任務を達成できなかったと思う。俺のほうこそ……惚れ直したってやつだな」
照れたようにエリオットが笑う。きっと自分も同じ顔をしているのだろう。
「なぁ、これからもこうやって一緒に任務をこなさないか。エリオットは恋人としても最高だけど、仕事相手としても最高だって今回わかった」
「もちろん。私もレヴァンと一緒だったら、どんな難解な任務も達成できる」
「じゃあ……恋人としても相棒としても、改めてよろしく」
「こちらこそ。私の愛しい相棒」
ぎゅっと抱き締め合いお互いの体温を噛み締めながら、空が白むまで静かに口付けを繰り返していた。
「じゃあ、先に明星門に戻る」
「私も日が昇ったらすぐに向かうよ。魔界に戻ったらゆっくり休んでくれ」
「エリオットもな。天界に戻ったら今日は仕事せずに休めよ」
「わかっている」
最後にキスを交わすと、名残惜しさを振り切るようにして空へと羽ばたく。夜明けを告げるその空は、俺たちの希望を表しているかのように思えた。
ボーカルの煽りでライブが幕を開け、ライブハウスの1番後ろでエリオットと彼らのステージを見守る。スモークの匂いと熱気で空気が震えている。
動画で見ていた時の演奏とは大違いだ。PCのスピーカー越しで聴いていた時とは桁違いのライブハウスでの音の渦に圧倒されるのはもちろんだが、何よりも黒川と篠崎の演奏が生き生きとしている。お互いの音がお互いを爆発させ、その勢いに乗って他メンバーの音も重なっていく。彼らのエネルギッシュな音は客席を揺らし、拳を突き上げる者、声を上げる者、各々が音楽の楽しみを享受していた。あっという間にアンコールまで駆け抜けていく。
「それではAmber Youthでした! ありがとうございました!」
客席に手を振るメンバー、満足そうに拳を掲げるメンバーたちの中、黒川と篠崎がお互いの顔をじっと見つめている。すると引き寄せられるかのように、2人が唇を重ねた。客席からは囃し立てるような歓声が沸き上がり、何が起こったのかと横を見た他メンバーたちがあんぐりと口を開けている。そんな周りの視線を無視するかのように、2人は貪欲にお互いを求める熱のこもったキスを続けていた。
「……ったく何やってんだあいつらは」
「まぁ、客席も盛り上がってるしいいんじゃないか? それより、いいライブだったな」
「そうだな。あいつらの音のピースがぴたりと合わさった良い演奏だった」
抱き合ってキスを続ける2人を他メンバーが強引に袖へと捌けさせる。そんな2人の熱を祝福するかのような歓声に包まれて、Amber Youthのライブは大盛況で幕を下ろした。
撤収作業が終わった暗いライブハウスの客席でエリオットと佇む。お互いの端末を確認すると、任務完了の通知が飛んでいた。
「レヴァンはいつ魔界に戻るんだ?」
「日が昇るギリギリまでこうして一緒にいたい。だめか?」
「大歓迎に決まってる」
するりと手が重なると、エリオットと指を絡ませる。
「……あいつら、ステージ上でキスまでするとは思わなかったな」
「あぁ、でも眩しかった。あの2人は周りがどう思うかなんて気にせずに、堂々とステージの上で愛を伝えられるんだと思うと、私は彼らが羨ましい」
エリオットの視線がこちらと重なる。
「私たちも、必ず世界を変えよう。天使と悪魔が共存できるように。胸を張って、レヴァンの恋人として隣に立てるように」
「そうだな。俺もあいつらから勇気をもらった。俺たちなら絶対に大丈夫だ」
そっと唇を重ね合わせる。胸に広がるのはエリオットへの愛おしさと、未来への希望だった。
「……なぁ、人間は綺麗な歌声のことを『天使の歌声』って言うだろ? やっぱり天使って歌が上手いのか?」
「いや、それは一部だけだな。私は得意ではない」
「そうなのか? でも俺、エリオットの歌が聴きたい」
繋いだ手に込められた力がぎゅっと強くなる。
「……ならレヴァンも一緒に歌ってくれ」
どんな闇も超えていく 君の声があるから――この三日間、何度も聴いたAmber Youthの楽曲だ。すっかりメロディーと歌詞も覚えたその曲を、エリオットの声に重ねるように歌っていく。先程までの華やかなライブが嘘のように、ライブハウスに響くのは俺たち2人の歌声だけだ。
この声を重ねて――サビの最後まで歌い終わると、エリオットと見つめ合う。
「良い曲だ」
「そうだな、あいつらからもらった贈り物だ」
2人の声が重なるだけで何だってできる気がする。俺たちは確かに同じ方向を向いていると思うことができた。
「……今回の任務で、エリオットの魂にも触れることができて、嬉しかった」
「何なら、今も触ってみる?」
昼間とは違い、今度はお互いの胸に手のひらを置く。エリオットが好きだ、エリオットなら俺の全てをさらけ出せる――そう強く念じていると、自分の胸からも赤い宝石のようなものがふわりと浮かんだ。
「これがレヴァンの魂……」
お互いの魂にそっと触れると、身体中をあたたかな喜びが駆け巡る。すると魂は持ち主の胸へとすっと溶けていった。余韻に浸るように、目の前の身体をぎゅっと抱き締める。
「……愛する人の魂に触れると、こんなにも幸せな気持ちになるのか」
「次は半分に割って交換だな」
「あぁ……早くレヴァンの魂を私の胸に迎えたくてたまらない」
「俺もだ」
愛おしい気持ちを分かち合うように、顔を見合わせて笑う。
「俺の魂、赤色だったな。エリオットの魂が水色だったから、瞳の色と同じなのかと思ってた」
「たしかにレヴァンの目は綺麗な琥珀色だからね。でも、私はレヴァンの魂が赤なのはすごくしっくりくる。今回の任務でレヴァンは誰かの心に寄り添って、火を灯すのが本当に得意なんだなと改めて思ったよ。君と一緒に任務ができて良かった。惚れ直したよ」
惚れ直す――その言葉に心臓がどきんと跳ねる。
「俺も、今回の任務でエリオットの良いところを改めてたくさん知った。俺がパニクってる時にエリオットは落ち着いて状況を分析してくれるし、何より頭の回転が早い。俺1人だったらこんなにスムーズに任務を達成できなかったと思う。俺のほうこそ……惚れ直したってやつだな」
照れたようにエリオットが笑う。きっと自分も同じ顔をしているのだろう。
「なぁ、これからもこうやって一緒に任務をこなさないか。エリオットは恋人としても最高だけど、仕事相手としても最高だって今回わかった」
「もちろん。私もレヴァンと一緒だったら、どんな難解な任務も達成できる」
「じゃあ……恋人としても相棒としても、改めてよろしく」
「こちらこそ。私の愛しい相棒」
ぎゅっと抱き締め合いお互いの体温を噛み締めながら、空が白むまで静かに口付けを繰り返していた。
「じゃあ、先に明星門に戻る」
「私も日が昇ったらすぐに向かうよ。魔界に戻ったらゆっくり休んでくれ」
「エリオットもな。天界に戻ったら今日は仕事せずに休めよ」
「わかっている」
最後にキスを交わすと、名残惜しさを振り切るようにして空へと羽ばたく。夜明けを告げるその空は、俺たちの希望を表しているかのように思えた。
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