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第4話
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「だから、何度言えばわかるんだ。私の案のほうが良いに決まっている」
「いーや、違うね。俺の案のほうがぜってぇ良い!」
今日も相変わらずケイと口論を繰り返す。周りの同期たちはすっかり慣れてしまったようで、やれやれと肩を竦めていた。
たしかに、ケイは凄い奴だとは思う。自分にない視点で物事を捉えているし、足で稼ぐ自分とは違ってじっくり情報を集めて考えるタイプだ。ペアで取り組む課題では、そんなケイらしい意見に助けられることも多い。
でも顔を見合わせると、素直にケイの凄さを口にすることができない。売り言葉に買い言葉で、気付いたら口喧嘩が始まっている。それをどこかもどかしく思いながら、書類を取りに1人暁宵城へと向かった。
書類が入ったファイルを抱えながら中庭を歩いていると、見覚えのある天使の後ろ姿が視界に入る。
「エリオット様!」
パタパタと駆け寄ると、こちらに気付いた天使長がにっこりと微笑んだ。
「やぁレオ、また会ったね」
「この間はインタビューさせていただきありがとうございました! 俺、同期の中でぶっちぎりのA評価だったんですよ!」
「それはすごい。少しでも力になれたのなら良かったよ」
ケイのこと、エリオット様に相談してみようかな――レヴァン様と公私共にパートナーのエリオット様に聞いてみたら、ペアの極意がわかるかもしれない。思い切って口を開く。
「あの! エリオット様、相談があるんです。その、ペアを組んでる奴のことで……」
「ケイだったね、どうしたの? 何でも話してごらん」
エリオット様に促されて近くのベンチに座る。
「どうしたらケイと良いパートナーになれるかわからないんです。あいつは頭が良いし、俺にない考え方ができる。それに救われる時もあるし、素直にすごいって思うのに、あいつの顔を見ると気付いたらいつも口喧嘩になってて……」
「レオは、ケイと口喧嘩したくないんだね」
「そりゃあいつと真正面からぶつかり合えるのは心地良いと思う時もあるんですけど、無駄な言い争いはしたくないなって……」
たしかに、ケイと意見をぶつけ合ってより良いものが出来た時は、他では変えられない喜びがある。でもだからと言って必要以上の棘を向けたくないと思うくらいには、ケイの実力を認めている自分がいた。
「エリオット様とレヴァン様も、俺たちのように正反対のタイプに見えます。どうやってお二人は良い関係性を築いているんですか? 良いペアでいられるコツを教えてください!」
視線を落としてエリオット様が考え込む。
「……やっぱり言葉にすること、かな」
「言葉にする……」
ぽつりとオウム返しで呟く。
「たしかに、私とレヴァンは正反対のタイプだ。考え方が合わないこともあるし、時には意見がぶつかることもあるよ。でも頭ごなしに相手を否定するんじゃなくて、レヴァンの意見をしっかり聞いて、自分の意見もなぜそう思ったのかをちゃんと伝える。そうすることで、口喧嘩にはならないかな」
ふいにエリオット様が笑って、空気が柔らかくなった。
「……それに、私にないものを持ってるからこそ、私はレヴァンが好きなんだ。それをちゃんと言葉にして日々伝えているよ。大好き、愛してるって」
その言葉を聞いて頬がカッと熱くなる。
「別に、俺は、あいつを愛してなんか……」
「でもペアとして信頼してるんでしょ? その想いはちゃんと伝えないと」
「そんなこと……言えません……」
ケイへの信頼を伝える――想像するだけで恥ずかしすぎて消え去りたくなるような気分だ。それにたとえ伝えられたとしても、怪訝そうな表情を浮かべるケイの姿が脳裏に浮かぶ。ぶんぶんと勢いよく首を横に振った。
「口では言いにくいんだったら、手紙を書いてみるのはどう?」
「手紙?」
思ってもいなかった案をエリオット様が提示する。
「私とレヴァンも、昔はよく手紙を送り合ったものだよ」
「エリオット様たちが!?」
「口では言えないことも、手紙にすれば素直に伝えられるかもしれない。ケイに手紙を書いてみたら?」
たしかに、ケイに直接言うよりも、文字で書いて渡したほうがまだ良いかもしれない――そう思い考え込む。
「……でも俺、文章書くのとか、苦手で」
口で喋る分には勢いで何とかなる。しかし真っ白な紙を前にすると、どうやって言葉で表現すればいいかわからなくなることばかりだった。すると、エリオット様が身に着けていた鳥のピンズを外して俺の襟元に着ける。
「これを着けて、魔界の図書館に行ってごらん? そこで図書館長を務めているセフィリという悪魔がいる。私とレヴァンの良き友だ。彼女なら、きっとレオの良い先生になってくれるよ」
「セフィリ様……」
忘れないように名前をぽつりと呟くと、エリオット様が励ますように俺の肩に手を乗せる。
「大丈夫。レオのまっすぐさがあれば、きっと良い手紙が書ける」
「……ありがとうございます。俺、この後図書館に行ってみます!」
エリオット様にぺこりと頭を下げると、魔界に向かって走り出す。俺が手紙を渡したら、ケイはどんな顔するかな。そんなことを考えながら、夕暮れの城下町を駆け抜けていった。
「いーや、違うね。俺の案のほうがぜってぇ良い!」
今日も相変わらずケイと口論を繰り返す。周りの同期たちはすっかり慣れてしまったようで、やれやれと肩を竦めていた。
たしかに、ケイは凄い奴だとは思う。自分にない視点で物事を捉えているし、足で稼ぐ自分とは違ってじっくり情報を集めて考えるタイプだ。ペアで取り組む課題では、そんなケイらしい意見に助けられることも多い。
でも顔を見合わせると、素直にケイの凄さを口にすることができない。売り言葉に買い言葉で、気付いたら口喧嘩が始まっている。それをどこかもどかしく思いながら、書類を取りに1人暁宵城へと向かった。
書類が入ったファイルを抱えながら中庭を歩いていると、見覚えのある天使の後ろ姿が視界に入る。
「エリオット様!」
パタパタと駆け寄ると、こちらに気付いた天使長がにっこりと微笑んだ。
「やぁレオ、また会ったね」
「この間はインタビューさせていただきありがとうございました! 俺、同期の中でぶっちぎりのA評価だったんですよ!」
「それはすごい。少しでも力になれたのなら良かったよ」
ケイのこと、エリオット様に相談してみようかな――レヴァン様と公私共にパートナーのエリオット様に聞いてみたら、ペアの極意がわかるかもしれない。思い切って口を開く。
「あの! エリオット様、相談があるんです。その、ペアを組んでる奴のことで……」
「ケイだったね、どうしたの? 何でも話してごらん」
エリオット様に促されて近くのベンチに座る。
「どうしたらケイと良いパートナーになれるかわからないんです。あいつは頭が良いし、俺にない考え方ができる。それに救われる時もあるし、素直にすごいって思うのに、あいつの顔を見ると気付いたらいつも口喧嘩になってて……」
「レオは、ケイと口喧嘩したくないんだね」
「そりゃあいつと真正面からぶつかり合えるのは心地良いと思う時もあるんですけど、無駄な言い争いはしたくないなって……」
たしかに、ケイと意見をぶつけ合ってより良いものが出来た時は、他では変えられない喜びがある。でもだからと言って必要以上の棘を向けたくないと思うくらいには、ケイの実力を認めている自分がいた。
「エリオット様とレヴァン様も、俺たちのように正反対のタイプに見えます。どうやってお二人は良い関係性を築いているんですか? 良いペアでいられるコツを教えてください!」
視線を落としてエリオット様が考え込む。
「……やっぱり言葉にすること、かな」
「言葉にする……」
ぽつりとオウム返しで呟く。
「たしかに、私とレヴァンは正反対のタイプだ。考え方が合わないこともあるし、時には意見がぶつかることもあるよ。でも頭ごなしに相手を否定するんじゃなくて、レヴァンの意見をしっかり聞いて、自分の意見もなぜそう思ったのかをちゃんと伝える。そうすることで、口喧嘩にはならないかな」
ふいにエリオット様が笑って、空気が柔らかくなった。
「……それに、私にないものを持ってるからこそ、私はレヴァンが好きなんだ。それをちゃんと言葉にして日々伝えているよ。大好き、愛してるって」
その言葉を聞いて頬がカッと熱くなる。
「別に、俺は、あいつを愛してなんか……」
「でもペアとして信頼してるんでしょ? その想いはちゃんと伝えないと」
「そんなこと……言えません……」
ケイへの信頼を伝える――想像するだけで恥ずかしすぎて消え去りたくなるような気分だ。それにたとえ伝えられたとしても、怪訝そうな表情を浮かべるケイの姿が脳裏に浮かぶ。ぶんぶんと勢いよく首を横に振った。
「口では言いにくいんだったら、手紙を書いてみるのはどう?」
「手紙?」
思ってもいなかった案をエリオット様が提示する。
「私とレヴァンも、昔はよく手紙を送り合ったものだよ」
「エリオット様たちが!?」
「口では言えないことも、手紙にすれば素直に伝えられるかもしれない。ケイに手紙を書いてみたら?」
たしかに、ケイに直接言うよりも、文字で書いて渡したほうがまだ良いかもしれない――そう思い考え込む。
「……でも俺、文章書くのとか、苦手で」
口で喋る分には勢いで何とかなる。しかし真っ白な紙を前にすると、どうやって言葉で表現すればいいかわからなくなることばかりだった。すると、エリオット様が身に着けていた鳥のピンズを外して俺の襟元に着ける。
「これを着けて、魔界の図書館に行ってごらん? そこで図書館長を務めているセフィリという悪魔がいる。私とレヴァンの良き友だ。彼女なら、きっとレオの良い先生になってくれるよ」
「セフィリ様……」
忘れないように名前をぽつりと呟くと、エリオット様が励ますように俺の肩に手を乗せる。
「大丈夫。レオのまっすぐさがあれば、きっと良い手紙が書ける」
「……ありがとうございます。俺、この後図書館に行ってみます!」
エリオット様にぺこりと頭を下げると、魔界に向かって走り出す。俺が手紙を渡したら、ケイはどんな顔するかな。そんなことを考えながら、夕暮れの城下町を駆け抜けていった。
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