ガツンと、恋!

萌葱 千佳

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第7話

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「はい、ケイ。これ」
「ん」

 講義が終わり、同期たちも寮へ帰り始めた教室にて、ケイに手紙を手渡す。俺たちの手紙は一度きりでは終わらず、いつの間にか文通となっていた。毎日顔を突き合わせている相手となぜわざわざ文通をしているのだろうと我に返ることもあるが、手紙でないと書けないことがあるから仕方がない。

 あの時意見をもらえて嬉しかった、お前がいるから良い評価がもらえた、いつも頼りにしてる――顔を見合わせたら絶対に言えないようなことが、なぜか手紙では書ける。ケイとは今日も口喧嘩ばかりだったが、手紙を通してお互いの思っていることが次第に見え始めていた。


「レオ」
 講義が終わり、帰ろうと荷物をまとめていると隣にいるケイから声を掛けられる。
「今日、急いで帰る予定はあるか?」
「いや別に、急いでねぇけど」
「じゃあ来い」

 研修センターを出るとケイはどこかに向かって歩き出す。
「おい、ケイ。どこ行くんだよ!」
 声を掛けるが反応はない。無言のケイの隣をしばらく歩いていくと、城下町の中で開けた場所に出る。どうやら公園のようだ。公園のベンチに座ったケイの隣に腰掛ける。こいつ、何を考えてるんだ――そう思った時に、ケイからいつもの封筒が渡される。

「ん」
「おう、ありがと」

 そうして手紙を受け取るが、一向にケイは立ち上がろうとしない。少し俯いたその横顔はどこか恥ずかしそうに見えた。
「なぁ……これ、今読んでもいいか?」
 思わず、そんな言葉が口から飛び出す。普段はお互いの前では手紙を開封しないのに、なぜだか今日はそれが許されている気がした。こくりと隣の銀髪が縦に揺れるのを見ると、封筒から便箋を取り出す。


『レオへ
 いつも側にいてくれて感謝している。レオがいて良かったと思うことが、積み重なっている日々だ。研修を通して、私にはないレオの良いところが見えると、いつも嬉しくなる。
 意見が合わないことももちろんあるが、それでも私はレオとペアで居たい。私たち2人が一緒なら、この先の課題にも立ち向かっていけるはずだ。これからも、私の隣にいてくれ。
 ケイより』


 読み終わると思わず顔が熱くなる。すぐ隣にいるケイが、この手紙を書いたのか? ――そう思うと、心臓の鼓動が高鳴っていく。一向にこちらを見ようとしない横顔にぽつりと投げ掛けた。

「なぁ、ケイ。なんでこれ、口で言えないんだよ」

 自分も手紙でしか素直な気持ちを伝えられないのを棚に上げて、ケイに問い掛ける。やっとこちらを向いたケイの頬は赤く染まっていた。夕日に照らされているからじゃない――いつもどおりの無愛想な表情の中に、どこか恥ずかしさが見え隠れしている。


 無言でケイの顔がゆっくりと近付いてくる。なんだ。何をしようとしているんだ。そう聞きたいのに、心臓の音がうるさくて、身体が固まってしまったかのように動かない。

 ケイの顔が目の前に迫る。押し付けるかのように、でも優しく、唇同士が重ねられた。

 俺、ケイとキスした? ――そう思った時に、目の前に挑発するかのような笑みが広がる。

「……口で言ったが?」

「は?」

 燃えるように身体が熱くなる。なんだこいつ。何がしたいんだ。そう思うのに唇はパクパクと動くだけで、驚いて何も声が出ない。ますます心臓の鼓動はうるさくなっていく。その手を繋ぎ止めたいような、今すぐここから立ち去りたいような、そんな相反した気持ちに挟まれた。

「……何、お前」
「別に」
「なんだそれ」

 不思議と嫌ではない、逃げたくはない、この気持ちは何なんだ。なんでケイは俺にキスしたんだ。ただお互いの赤くなった顔を黙って見つめ合いながら、ケイと2人で夕暮れの時間を過ごしていた。
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