【R18】キミが欲しい

蜜柑マル

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俺は次の日からカルテの住所を元に、毎日碧を見に行った。毎日の生活に張りが出る。とにかく楽しい。碧に関することをなんでも知りたい。碧が住んでるのは一軒家だった。何日か見ていてだいたいの家族構成がわかってくる。碧の父母と思われる初老の男女に、碧に奏太、そして俺や碧くらいの年齢の男がふたり。

そのふたりは、家から出てくるときに奏太と手を繋いでいたりしてイラッとする。奏太は俺の息子だ。なぜおまえたちが手を繋ぐ?

「ねぇ、巧おじちゃん、」

「おじちゃんじゃない。巧君と呼べ」

「だっておじちゃんでしょ」

「ったく、碧が早く子ども産んだりするから」

碧、と呼び捨てにするのも気にくわない。碧は俺のだ。馴れ馴れしく呼ばないでもらいたい。

「ねぇ、今日は何時に帰ってくるの」

「うーん、20時くらいかな?」

「じゃあ、お風呂一緒に入れないね」

「あ、でも、悟は今日休みだぞ」

「ほんと!?」

「ああ、おまえのこと迎えに行くって言ってたからな」

「やったー!」

「俺も、お土産買ってきてやる。何がいい?」

「うーん、うーん、…アイス」

「じゃあ、食うのは明日だな」

「わかった!」

ニコニコして男を見上げる奏太。可愛い。あの顔で俺のことも見て欲しい。早く、正式に俺の子どもにしたい。

奏太は毎日、巧、悟、と呼ばれるどちらかの男が保育園に送って行った。帰りは見れないのでわからない。

碧は奏太が家を出て30分後、7時30分頃に職場に向かう。俺も9時からは診察が始まってしまうため、休診日の木曜日に後をつけた。碧は、ドラッグストアに勤めていた。制服を着て、ニコニコしながら接客をする。可愛い。あんなに可愛い顔を他の人間に見せないで欲しい。

学生の時の、あの、碧に乱暴した自分を絞め殺したい。何が面倒な女だ。あんなに可愛いのに。あんなにキレイなのに。メガネで地味?それでちょうどいいくらいだ。他の男どもに目をつけられなくて済む。あの合コンの時だって、メンバーは誰も碧に興味を持っていなかった。今となっては、感謝してもしきれない。

店の中にいつまでもいると不審がられるので、ドラッグストアの向かいにあるファミレスに入る。碧、可愛い。クルクルとよく動く。真面目なんだな、やっぱり。可愛い上に働き者だなんて。

ニヤニヤしながら碧を見ていたら、ファミレスの店員に不審な目を向けられた。危ない、この場所を使えなくなってしまう。

昼食をとり、店を出る。碧に気づかれると困るので、ドラッグストアは名残惜しいが見ないで帰る。

約束した2週間後。碧は、来てくれた。奏太と歩いていたり、働いているときのような表情はない。少し青ざめた顔で、「お待たせしました」と小さな声で言った。

「碧ちゃん、来てくれてありがとう」

「いえ、今日だけですから」

今日だけ、という言葉にムッとする。

「今日だけ?なんで?検査の結果見たけど、やっぱり奏太は、」

「すみません、名前を呼ばないでください。あの子の名前、呼ばないでください」

「…なんで?」

「高橋先生には関係のない子どもです」

「関係あるよね。俺の子どもだって証明されたんだよ」

「血縁があるというだけで、父親ではないです」

「何言ってんの?父親でしょ?」

「でも、関係ない、」

「関係あるって言ってんじゃん!」

思わず大きな声を出してしまい、周りが一瞬シンッ…となる。碧は、まだ青ざめたままだった。

「…ごめん、大きな声出したりして。碧ちゃん、なんか飲んで」

「…いえ、話が終わったらすぐに帰りますから」

「ダメだよ。飲んで。一緒に食事しようよ。そう約束したでしょ」

「約束、してないです。話をするって」

「じゃあ、乗り込むよ。碧ちゃんの家に。俺が奏太の父親だって。あのさ、碧ちゃん。奏太は俺の子どもだよ。証明されたの。…碧ちゃんさ、」

俯く碧の顎に手をかけ顔をあげさせる。碧の目は恐怖に色塗られていた。なんで?俺、いま、何もしてない。痛いこと、なんにもしてない。あの時みたいに、ひどいこともしてないのに。

「奏太を産むとき、なんて言ったの。家族に」

「…お付き合いしてた人が医大生で、赤ちゃんが出来たけど迷惑かけられないから別れたって。でも、産みたいから産むって」

「じゃあ、その通りに言う。俺は知らなかったけど、もう知っちゃったから。だから、迎えにきた、結婚させてくださいって挨拶に行く」

「結婚!?イヤ、イヤです、やめてください!」

「なんで。俺、奏太の父親だよ」

「イヤです、イヤです、怖い、イヤ…」

「怖い?なんで?俺、いま、何もしてないでしょ?碧ちゃんに、何もしてないでしょ」

「イヤ…」

碧は、真っ青な顔で泣き出した。周囲からジロジロ見られて困る。なんで泣くんだ?

「碧ちゃん、行くよ」

「どこにですか、」

「俺の部屋だよ」

すると碧は、急に立ち上がって店から出て行った。俺も支払いをして追いかける。碧は足がうまく動かないのか、すぐに追い付くことができた。碧の腕を掴む。

「イヤ、離して、怖い、やだ、」

ボロボロ涙をこぼす碧。可愛いけど、離すことはできない。

「何が怖いの?なにもしないよ」

「ヤダ、イヤ…」

「じゃあ、俺の部屋じゃなくていい。ホテルに行こう」

俺は碧の手を掴み歩き出す。抵抗しようとしてるのか、なかなか前に進まない。イライラした俺は、「じゃあ、この場で犯すよ、碧」と言った。碧は途端に力が抜け、その場に崩れ泣き出した。

「ごめんなさい、赦してください、ごめんなさい」

部屋まで戻るにもタクシーを使わなくてはならないため、近場のホテルに連れ込む。

碧は、「ごめんなさい、イヤ、怖い」と繰り返すばかり。

「碧ちゃん、」

俺は碧をギュッと抱き締めた。どうにか落ち着いてくれないだろうか。

「碧ちゃん、俺、なんにもしない。ね、大丈夫だから。あの時、ごめん、あんなことして。でも、奏太を、」

「高橋先生」

顔を上げ、俺を見る碧の目に力がこもる。あの時の目。

「なぁに、碧ちゃん」

「高橋先生は、何が目的なんですか?私は奏太を渡すつもりはありません。今まで大事に大事に育ててきたあの子を、私から取り上げるつもりですか?」

涙で濡れた瞳で、俺を見据える碧。いい。ゾクゾクする。

「取り上げないよ。俺と一緒に育てよう。俺にも権利あるでしょ。結婚しよう、碧ちゃん」

「…なぜ?なぜですか?奏太は、確かに高橋先生の子どもです、でも、まだ27歳なんだからいくらでも子ども作れますよね、奏太にこだわらなくたって、」

「奏太にもこだわってるけど、俺がこだわってるのは碧ちゃんだから」

「お別れしました、先生がそう言ったんですよ」

「あれは、間違い。だって、奏太ができたんだから」

「高橋先生、お願いします。もう、やめてください、奏太をとりあげないで」

「とりあげないってば!何回言えばわかるの!俺と結婚して、碧。大事にするから」

「イヤです」

「ねぇ、碧ちゃん。奏太はまだ保育園に通ってるけど、これから小学生になるんだよ。俺の子どもなのに、父親がいない子どもにする気なの?碧ちゃんのわがままで?」

「私の、わがまま…?」

「そうだよ。わがままじゃん。俺が、奏太の父親だってわかってて、しかもこうやって奇跡的に会えたのに、碧ちゃんは、嘘ついて奏太を育てていくつもりなんでしょ。俺、奏太に言うよ。俺が父親だって。周りにも言いふらす。嘘じゃないんだから。俺がいるのに、碧ちゃんがヤダなんてわがまま言って、俺を引き離したんだって言うよ」

「そんな…」

「俺が、あんなひどいことしたから碧ちゃんは怒ってるんでしょ。でも、そのおかげで奏太が、」

「そのおかげでって、なんですか。高橋先生は、私が今までどうやって生きてきたかわかるんですか」

「わからないよ。それを聞きたかったのに、話を拒否したのは碧ちゃんだよね」

「違います。話をするって言ったのに、お酒飲めって言うから、」

「お酒飲もうよ、って言ったよね、俺。2週間前に。忘れちゃったの?」

「高橋先生と、」

「海斗だよ、碧ちゃん。海斗君って呼んでよ」

「イヤです。高橋先生と、」

「碧!」

俺は碧をベッドに押し倒した。

「なんで、俺が言ってることわかんないの?海斗君って呼んで。高橋先生なんてダメだよ。碧も高橋になるんだから」

「なりません、やめてください、」

「じゃ、いいんだね。バラすよ、みんなに」

そう言うと碧はまた泣き出した。可愛い。なんでこんなに可愛いのに、あの時の俺はあんなひどいことしたんだ。バカだ。

「碧ちゃん。どうするの。もし今から帰って逃げようなんて考えたら、あそこの家に碧ちゃんの家族住めなくするからね。どんな手を使ってもやるよ。碧ちゃんのせいで、家族が困ってもいいの?」

碧は、涙に濡れた瞳で俺を見上げた。可愛い。

「わかりました。どうすればいいんですか」

「まず、碧ちゃんは俺と結婚して。奏太も連れて、俺のマンションに住んで。今働いてるところだと心配だから、ドラッグストアはやめて」

あの笑顔を他の人間に見せたくない。俺が見てないところで。

「…働かせないってことですか」

「違うよ。働いていいよ。うちの病院、事務募集してるから、そこに入って」

「私、」

「医療事務の資格持ってるよね。奏太を育てるためにいろんな資格取ったでしょ。碧ちゃん、さっき、どうやって生きてきたかわかるんですかって聞いたでしょ。碧ちゃんから聞きたくて言わなかったけど、なんでも知ってるよ、俺。この2週間、全部調べたから」

「え…」

「碧ちゃんのこと、全部知りたくて全部調べた。…毎日、一緒に出勤ね。帰りも。奏太の保育園はどうしようかな…。送り迎え、今まで通りお家の人に頼める?家を出ちゃったら難しい?だったらなんとかするけど」

「…大丈夫だと思います。高橋先生、」

「碧ちゃん」

俺は碧のくちびるを指でなぞった。

「海斗、だってば。海斗って呼んでよ」

「…海斗さん、」

俺は我慢できず、碧に口づけた。すごい。なんだ、これ。

「や、やめ…っ」

「碧…っ、キスだけ、ね、キスしかしないから、碧っ」

舌を入れて舐めまわしたいのに、碧はギュッと口を閉じて開かない。俺は碧の鼻を摘まんだ。我慢できずに開いたところを強引に捩じ込む。あの時は、キスもしなかった。…そうだ、キスしてない。

キスしてないってことは、やっぱり付き合ってなかったってことだ。だって、俺は付き合う女としかキスしない。そんな女も数えるほどしかいなかった。

キスした。これで、碧は俺のものだ。碧の柔らかいくちびるを貪る。

「…碧」

碧は、ギュッと目をつぶったまま泣いていた。

「碧、泣かないで、ね、もうしない。これ以上は今日はしないから。ね、」








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