【R18】キミが欲しい

蜜柑マル

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碧を抱き起こして、ベッドに座る。碧は、俺の前に座らせ後ろから抱き締める。

「ねぇ、碧ちゃん、」

乱れてしまった碧の髪の毛を撫でながら俺は声をかけた。

「…はい」

小さな声で碧が返事をする。可愛い。

「今日、話し合いたかったこと、さっき言ったけど文書に残していいかな。碧ちゃん、お酒飲もうよって言ったのに、知らないフリしようとしたでしょ。後から、聞いてないって言われると傷つくから文書にするね」

碧は、コクリと頷いた。

俺は碧をそのままにベッドから降り、自分のカバンから手帳とペンを取り出した。

備え付けのテーブルで書き始める。

○ 碧は俺と結婚する。

○ 碧はドラッグストアを辞めて、高橋小児科クリニックの事務として働く。

○ 出勤、退勤は一緒にする。

○ 碧は、俺を海斗さんと呼ぶこと。
 俺は碧と呼ぶ。

○ 奏太以外にも子どもを作る。

○ 毎日お風呂に一緒に入る。

○ 毎月旅行する。

「どう?読んで」

碧は読み進めるうちに、顔が青くなってきた。

「あの、」

「なに?」

「一緒にお風呂に、って、」

「生理の時はイヤ?」

「そうじゃなくて!なんで、」

「奏太は、俺が風呂に入れたい。赤ちゃんじゃないからたぶん大丈夫だと思うけど、髪の毛洗ったりとか気を付けなくちゃいけないことは教えて。覚えるから」

「なんで一緒に入らなくちゃいけないんですか」

「だって、碧の裸見たいから」

「はだか…?」

ポカンとした後に、碧は真っ赤になった。

「イヤです、見られたくありません」

「でも見るよ」

「高橋先生の、」

「海斗だよ、碧」

「…海斗さんの、気に入るようなカラダはしてません」

「なにそれ?俺が気に入るカラダってなに?碧は俺のこと知ってるの?嬉しいんだけど。ねぇ、俺が気に入るカラダってどんなカラダ?」

「ごめんなさい、わかりません、わからないけど、私は、」

「じゃあ、今見せて」

「…え?」

「碧のカラダ、俺が気に入るかどうか、今見せて。あの時、ちゃんと見もしなかったし。俺がバカで。全部見たい、あ、でもな。見たら、キスだけじゃ終わらないけど、たぶん。いい?碧」

「いいわけないです、やめてください!」

「あのさ、碧、俺は、碧がいいの。だから、気に入るとかないの。碧のカラダだから見たいの。悪いけど、俺、医者だから全部見るよ。なんなら、器具使って碧の中も全部見る。どこか病気とかになったりしたらイヤだから、碧が。あ、そうだ、毎日検温もしてね。生理もちゃんと記録して。子ども、あと二人は産んで欲しいんだけど。碧は?何人欲しい?」

「あの、」

「なぁに?」

「なんで、なんですか」

「なにが?」

「なんで私?奏太がいるから?」

「…わかんない。わかんないけど、碧が好きなの」

「6年前、私を蔑んでたのに?私は同じ人間ですよ。なんにも変わってない」

「蔑んでたのは、確かにそうなんだけど、」

「じゃあ、もうやめて、」

「違うんだよ、聞いて、俺は、あの時、碧だけじゃなくて、周りをみんな見下して生きてたの。バカにして生きてたの。自分のことを特別な存在に思ってたわけじゃないけど、目の前の課題をこなしていくのが楽しくて、あとはどうでも良かった、課題をこなした高揚感で女も抱きたかった。あの時、碧がすごい地味な感じで、」

「…今も地味です」

「違う。地味って、確かに、あの時は蔑みだったけど、今は褒め言葉だから!碧は地味でいいの。もちろん、化粧とかオシャレとか、していいから。俺ができる限りのことはするから。でも、地味な碧がいいの。

あの時は、地味な碧が俺に付き合ってとか言ってくるのが無性に腹がたって、だから、嫌がらせしたくなって。無理矢理、奪うような、乱暴な真似してごめん」

「…それで、また、6年後に変わるんですか。私を蔑む高橋先生に」

「…え?」

「今の話を聞くと、お医者様になったことで地位は安定したけど楽しみがなくなったということですよね。努力して、取り組める対象がなくなってしまった。そこに、私と、奏太が…高橋先生の子どもである奏太が現れた。自分の生活になかったものが出てきて、ましてや奏太はまだ5歳です。子どもを育てるのは初めてだからたくさんのことを知ることができますよね。先ほど、高橋先生は、髪の毛を洗ったりするのに注意点があれば教えて、と言いましたね。知らないことを知りたいんですよね、高橋先生は。探求心が高く勤勉な方なのでしょう。でも、それが終わったら?私や奏太に興味がなくなったら?私はまた、実家に戻り、奏太は父親のいない生活に戻らされるんですか?…私はかまいません。もう、あの時イヤというほど傷つきましたし、でもそのおかげで強くなれました。今なら高橋先生にも感謝できます。でも、奏太はダメ。奏太を傷つけないでください。あったものを取り上げられるのは、子どもにはツラいことですし、堪えられない場合もあります」

俺は碧が言ってることがわからなかった。碧や、奏太に興味がなくなる?そんなこと、

「そんなこと、あるわけないじゃん!」

「今だけですよ、高橋先生。たまたまつまらなくなってしまった時期に私と奏太が現れたから、手に入れたくなっているだけです」

「なんで、なんでそんなこと言うの」

「高橋先生。先ほど、言いましたね。私のせいで家族が家に住めなくなってもいいのかと」

「…言った」

「あそこは、借家です」

「知ってるけど、」

「だから別に、あの家じゃなくてもいいんです。職場も変えたって構わない。たまたまみんなで一緒に住んでるけど、これを機に別に住んでも構わないんです」

碧はまっすぐに俺を睨み付けた。

「やりたいならやってください。その代わり、私もただでは負けません。奏太は絶対に守ります」

「やだ、碧、やだ、やらないから。ね、やらない。そんなことしないから」

「…もういいですか」

「やだ!碧、お願い、やだ、ねぇ、俺のこと信じて、絶対に碧と奏太を傷つけたりしないから!」

「何を根拠に、高橋先生を信じればいいんですか?6年前、自分もバカだったとは言え、あれはレイプと同じですよね?私が、高橋先生を訴えなかったのはなぜかわかりますか?慰謝料とか、認知とか言ってましたが、なぜしなかったかわかりますか?」

「わかんないよ、なんで?」

「高橋先生に関わりたくなかったからです。もう、絶対に関わりたくなかった。今回、たまたま会ってしまったけど、小児科も変えます。二度と会いたくない。奏太は確かに高橋先生の子どもです。それを言いふらすというなら、私も高橋先生にレイプされたといいふらします。本当のことですから」

「碧、」

「もう帰りますね。二度とお会いしたくありません。お金は置いていきます。さようなら、高橋先生」

碧は一度も振り返らずに出て行った。俺は追いかけることができなかった。



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