【R18】キミが欲しい

蜜柑マル

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碧と会った次の日は日曜日で、俺はマンションのベッドの上でボーッとしていた。

探求心があるから?

碧に言われた意味がよくわからない。なんで、そんなふうに取られちゃったんだろう。

すごく怒ってた。碧。

確かに脅すような真似は卑怯だけど、でも、碧が俺の言うこときいてくれないから…。そこまで思って、ハッとする。俺もあの時、碧の言うこと聞かないで乱暴した。碧はやめてって言ったのに。

今まで、望んで手に入らないものなんてなかった。だから、なんでも手に入って当たり前だと思ってた。でも、碧に拒絶された。結婚してくれると思ったのに。

「碧…」

会いたい。

碧と、奏太に、会いたい。

奏太とは、口をきいたことすらない。診察にきたときは、つらそうで一言も声を発さなかった。

お父さん、て呼んでくれるかな、パパかな、なんて勝手に考えてたけど、会うこともなく終わってしまった。…ツラい。

どうやっても、信じないって。あんなことした俺のこと、信じるわけないって。二度と会いたくないって。…ツラい。

「碧…」

あの時に戻りたい。おまえは何様なんだと、あの時の自分をぶん殴りたい。碧に、付き合ってって言われたところに戻って、デートしたい。

どうすればいいんだ…。

なんにもいい案が浮かばなくて、碧に遭いたくて、俺は碧の職場に行ってみることにした。

ドラッグストアの前に着いたのは17時。まもなく12月も半ばになるこの時期、あたりはもう真っ暗だ。暗闇ならば碧にバレる心配もない。以前に入ったファミレスで待機する。バレると困るから店の中には入れないので、帰りをつけることにしたのだ。

碧は、奏太がいるからと職場が配慮してくれて、18時には退勤する。時間が過ぎるのをひたすら待つ俺の目に、気になる男が映った。ドラッグストアの入り口を伺うように、ひっそりと立っている。

18時過ぎ、碧が出てきた。会計を済ませて歩き出した俺の前を先ほどの男が歩いている。邪魔だ。碧がよく見えない。しかし、あの男の前に出てしまうと、碧に近づきすぎてしまう。イライラしながら歩いているうちに、あの男は、碧をつけているのだと気づいた。

電車に乗る碧を同じ車両に乗ってじっと見ている。やめろ。おまえが見ていい碧ではない。なんなんだ、やめろ。

隣の車両からイライラしながら睨み付ける。

碧が降りる駅でやはり降りた男は、そのまままた碧の後ろをついて行った。玄関に入るところを見ながら通りすぎ、ぐるりと住宅街を回ってまた駅に向かう。俺はその男をつけることにした。俺の碧に目をつけるなんて、図々しいにもほどがある。こいつのせいで、碧のキレイな後ろ姿を堪能できなかった。くそったれが。

同じ車両に乗り込み相手を観察する。年齢は40歳くらいか。黒い髪の短髪で、目付きが気持ち悪い。爬虫類のような、神経質そうな目付きだ。あんな目で俺の碧を見やがって。

碧の職場近くの駅をさらにふたつ過ぎた駅で男は降りた。俺も降りて後をつける。10分ほど歩いて、俺が住んでいるようなマンションに入っていった。

エントランスに入ったところに俺も遅れて入り、オートロックが解除されたところをなに食わぬ顔で入る。こんなマンションでは誰が住んでるかなんてわからない。そのまま一緒にエレベーターに乗り込み、相手が「11」と押したのを確認して俺は「12」を押した。

相手が降りて、12階まで行き、階段で11階に降りる。パタン、としまったドアの場所を確認して、またエレベーターに乗り込む。

電車に乗りながら、スマホを操作する。どうせ暇だろう。2週間前に碧を調べてくれた相手にメッセージを送る。

『了解。海斗君のマンションに、21時ね』

相手からの返信を確認してスマホをしまう。あの男の顔を思い出してイライラする。俺の碧に何をするつもりだ?

どこのどいつか徹底的に調べて、社会的に抹消してやりたい。

イライラしながら自宅に着き、今から来る相手のために酒の準備をする。今まではどうでも良かったが、碧と再会し奏太を見たことで、自分の健康に気を付けるようになった俺は、今まで毎日浴びるように飲んでいた酒を週二回に減らし、つまみも野菜を中心に作るようにした。

碧に拒絶された今、そんな必要もないのかもしれないけど諦められない。

21時ちょうどにチャイムがなる。相手を確認してオートロックを解錠する。

「海斗くーん、お義兄様が来ましたよー」

「座れ」

「うわ、こわ。何、うまくいかなかったの?僕がせっかく調べてあげたのに」

俺は黙って相手の前に置いたグラスにワインをついだ。

「なに、ワインなんか飲むようにしたの?今まではビール一辺倒だったくせに」

「飲みたくないなら飲むな」

「こわ。飲むし。八つ当たりやめてよ」

ニヤニヤしながら俺を見ているこの男は、幼稚園から大学まで同級生の大橋孝一郎。俺の2つ上の姉と結婚し、不本意ながら「義兄」になってしまった。医学部を出たくせに「みんなの秘密を知るのが好き」だという訳のわからない理由で探偵をやっている。姉に、「いいのか」と聞いたが、「だって、すごく稼いでるのよ。貴方よりよっぽど甲斐性あるわよ」と蔑むように言われた。俺だって稼いでるのに納得がいかない。

「で?誰を調べるって?」

「誰か、はわからない。この男だ」

俺はスマホで隠し撮りした男の写真を見せた。孝一郎のスマホに転送し、ついでに住所も送る。

「こいつ、何したの?」

「碧をつけてた」

「ねぇ、海斗君。碧ちゃん、手に入らなかったんでしょ?なんで気にするの、別にいいじゃんつけられてたって」

「よくない!なんで俺の碧を、」

「いや、だから。海斗君の碧ちゃんじゃないでしょ」

「俺のだ!」

孝一郎はニヤニヤしながら俺を見ると、「だいたいさぁ」と言った。

「昔乱暴した相手に子ども出来てたからって、なんでいきなり執着してんの?ついさっきまで忘れてた相手でしょ?別に認知しろとか、言われてるわけじゃないんでしょ?」

「…うるさい」

なんで、なんて言われたって説明のしようがない。再会して、碧も、奏太も、俺のものにしたくなった。ただそれだけだ。毎日、朝起きてから夜寝るまで、ずっと一緒に過ごしたい。絶対に楽しいと思う。

「なんでこいつに気づいたの、海斗君」

「碧を見に行ったら、いたんだよ」

「ねぇ、ストーカーやめなよ」

「ストーカーじゃない、俺は奏太の父親なんだぞ!」

「今の理屈で奏太君を見てるならわかるけど、碧ちゃんを見る理由にならなくない?」

「受けんのか、受けないのか、はっきりしろ」

「受けるよー、もちろん。可愛い義弟の海斗君の頼みなんだから」

ふふふ、と含み笑いをする孝一郎。ワインをぶっかけてやりたい。

「で?こいつ、毎日碧ちゃんを張ってるの?」

「だから!今日初めて見たんだよ!」

「あ、そうか、ごめんね」

孝一郎はワインを一口含むと、「じゃあ、明日から碧ちゃんにつくね、僕」とまたニヤニヤする。

「海斗君の愛しの碧ちゃんとずっと一緒に過ごせるなんて、最高の嫌がらせだよね、海斗君に。あー、楽しい。僕に頼らなくちゃいけないなんて。可愛いなぁ、海斗君。あ、もちろん、タダでいいよ。可愛い義弟からお金はとれないからねぇ」

「死ね」

「僕が死んだら碧ちゃん見はれないけど。いい?海斗君が死ねって言うなら死ぬよー」

「仕事しろ」

「はいはい。あ、海斗君」

「なんだ」

「碧ちゃんの写真、どこまで欲しい?」

「…どこまで?」

「普段着、下着、全裸、」

「碧の下着を見た時点でおまえの頭に爆弾を埋め込む」

「冗談だよー。海斗君が欲しいかなって」

「直接見るからいい」

「見れないじゃん。バカだね」

「うるさい!帰れ!」

「はは、ほんと可愛いな、海斗君。じゃ、明日からね。よろしく」

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