【完結】あなたのことが好きでした

蜜柑マル

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それからもチェイサーに会うことは結局なく、卒業式から3日後にはソフィアは領地に向けた馬車に乗っていた。父からは、

「時間はたっぷりあるから、ゆっくり学ぶといい」

と言われて送り出されたのだが、領地付きの執事に着いた初日からどんどんと課題を出され、それを無我夢中でこなすうちに気づけば半年が過ぎていたのだ。鬼のような冷たい執事は、今日も今日とて課題を手にやってくる。

午前の政務を終えて昼食を摂っていると、執事のマーカスが音もなく現れた。毎回心臓に悪い。

「ソフィア様、先日旦那様から連絡がありましたお客様がお見えです」

「あら、…お約束は13時30分ではなかったかしら」

今はまだ12時30分を少し回ったところである。自分の勘違いだったかと慌てるソフィアに、マーカスは顔色も変えず、

「13時30分で間違いございませんが、少し早く着いてしまったそうです。それから、こちらが。旦那様よりお手紙です」

と手渡される。

父からは毎週手紙が送られてくるので特に気にも留めなかったのだが、その内容を目にしてソフィアの顔が困惑に満ちる。

「結婚式を?」

「ええ。半月後に」

「ええ!?」

驚き声を上げるソフィアをいつもの平淡な瞳で見据えたマーカスは、

「準備万端ですから。ソフィア様が心配することなどどこにもございませんよ」

と素っ気なく言う。

「でも、」

「結婚の準備を整えるのは親の役目です。旦那様と奥様がきちんと適切な指示とともにすべて揃えてくださってますから」

いきなりの話についていけないソフィアは、「…そう」と呟くことしかできなかった。














「ご無沙汰しております、ソフィア様」

約束の時間になり客間に向かったソフィアに挨拶をしたのは、学園の同級生だったレイノルド・パーカー伯爵令息だった。

「こちらこそ…」

と挨拶をしながら、ソフィアは内心首を傾げた。父の手紙には相手が書かれておらず、ただ「客人がいくのでよろしく頼む」という内容だけだったため、なぜレイノルドがやってきたのかまったくわからなかった。学園でもほとんど交流がなかった相手だ。

レイノルドはアッシュ系の落ち着いた髪色に薄い水色ともとれるようなグレーの瞳の持ち主だ。とても整った、…男性に対する言葉ではないかもしれないが美しい、キレイな顔立ちをしている。飄々として人あたりのいいレイノルドの周りには常に人がいたが、ソフィアは何を考えているのかわからないレイノルドの瞳が苦手だった。その瞳でじっと見つめられ、落ち着かなくなる。

「…申し訳ありません、私、父から客人としか聞いていなくて、まさかパーカー様がいらっしゃるとは」

ソフィアの言葉にニッコリとしたレイノルドは、その薄い唇を開くととんでもない発言をした。
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