エンドロールから始まる異世界転生

明石

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プロローグ

~人生のエンドロール~

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 俺は映画が好きだ。
アクション、コメディ、ホラー、ミステリー、サスペンス。国内外問わず様々な映画がある。
 インターネットや動画配信アプリでもいつでも観たい時に観たい映画が観れるようになったが、俺は週に一度は映画館で映画を観るようにしている。
 映画が始まる前の大画面での広告、お決まりの映画泥棒、いよいよ始まるとわかる暗転、うるさすぎる程の音楽。すべてが仕事に疲れた体に浸透し現実から引き離してくれる。映画が好きな理由の一つだ。

 今日も今日とて俺は疲れた体を引きずるようにして仕事帰りに映画館へと向かう。
 最近は忙しく終わるころには日を跨いでいることすらざらだ。
 そんな忙しい週も今日で終わりだ。明日は土曜日、やっとの休みだ。若いころは一週間なんてあっという間だったのに今では永遠のように長く感じる。

 改札を通り、ホームにちょうど入ってきたガラガラの電車に乗り込む。
 少ない乗客はみな自分と似たような疲れ切った顔をしている。ドアのそばの窓際に立つ。

 今日はなんの映画をみようか。先週はホラーだったから今日は明るい作品が観たいな。そう思っていると不意に近くで携帯の鳴る音が聞こえてきた。自分と同じ着信音だったためドキッとしたがどうやら近くのサラリーマン風の男の携帯だったようだ。

 男は携帯を取り出して周りを気にしながら相手と話している。

 「ああ、もうすぐ帰るから、夕飯?楽しみにしてるよ。」

 どうやら相手は家族のようだ。楽しそうに話している。それをみて私はほんのちょっぴり羨ましく思う。

 俺には家族と明確に呼べる人がいない。両親は私が物心つく前に私を祖父母に預けて蒸発したらしい。
 しばらくは祖父母の家で生活していたが、小学校に上がるくらいに二人は亡くなってしまった。

 祖父母の死後、俺は血のつながりがあるかわからないような親戚の家をたらい回しにされていた。
 親が蒸発し祖父母が死んだのもあってか私は親戚ではほとんど腫れ物扱いだった。酷いところでは、食事が無かったり殴られたりした。そんなことがあったからかいつのまにか自分はあまり表情が顔に出ない冷めきった子どもになっていた。おおよそ子どもらしくない自分を好きで引き取ろうとする親戚もいない。
 中には私のことを不憫に思ってかよくしてくれる人もいたが、すぐ別れることがわかっていた俺は必要以上に親しくしなかった。
 別れる時の寂しさと自分を憐れむような目で見送られるのがたまらなく嫌だったのだ。

 それは学校でも同じで普段話す子は何人かいたが友人にはなれなかった。最初から性格が合わなかったりクラスになじめなかったわけじゃない。
 ただ話している時、周りについていけないことがあった。その大半が家族の話だ。例えば『家族で旅行にでかけた』や『父さんに玩具を買ってもらった』など。
 家族の話が突如、自分に話を向けられた時、小学生の自分はなんて答えればいいかわからずに固まってしまった。しばらくして聞いてきた相手が、自分に親がいないことを思い出して慌てて謝ってきて微妙な空気になる。それがたまらなく嫌だった。もちろん相手に悪気がないことはわかっていたし、今思えば、親のことに触れなくても当たり障りのない会話を返していれば、そんなことにはならなかっただろう。でも小学生の自分にはできなかった。
 それから同級生と話していても自分とその子らの間に分厚いアクリルの壁があるように感じるようになった。自分とこの子らは違うのだ。そう思うようになり、自然と仲良くしていた人と話す回数が減った。
 親戚の都合で転校が多く、親しくなってもすぐ別れるため意味がないということも思い知った。新しいクラスになるたびに同じやり取りをして気まずくなる。もう散々だった。だからいつのまにかあまり話さなくなったし、誰とも親しくしなかった。

 家でも学校でも一人で疎外感を感じていた俺だが、映画を好きになったのはそのころだったか。
 学生らしく遊んできなさいと親戚のおじさんに小遣いを渡された私は友人もいないため行く当ても使い道もなかった。
 そんな時にふと入った映画館で一本の映画を観た。たしかあまり有名でもないひねりもない映画だった。最初はなんとも思わなかったが、話が進むにつれて私は画面に釘付けになった。

 それはある男の一生を映画にしたものだった。
 貧しい家庭に生まれ、歌うことが好きな少年はたった一人の家族である病弱な母と暮らしていたが病気で母は死んでしまう。家族も失い、一人になった少年は、それでも諦めず色々な仕事をして生きていく。一人だった少年は生きていく中で色々な人と出会い、友人や恋人ができる。一人になった男のそばにはいつのまにかたくさんの人が集まっていた。そして結婚し子供も生まれ、最後はたくさんの人に囲まれながら満足そうに人生を終わる。

 ありきたりな話だったが、どうしても自分とその男を重ねずにはいられなかった。映画を観る中で自分もこの男のような人生を送れるだろうか、いや送るために変わろうと心に決めたのを今でも覚えている。

 映画が終わり、まばらにいた周りの観客が席を立ち始めたが、席から立ちあがれなかった。

 画面には映画の終わりに流れるエンドクレジットが流れ始めた。
 背景には幼く一人の男の子が成長するにつれて周りに人が集まってくるというありがちな映像が流れていた。俺はその映像が頭から離れなかった。

 そんなことを考えていると最寄りの駅のアナウンスが流れる。
 駅の階段近くで開くドアの前に移動する。
 駅は人もまばらで閑散としていた。二台しかない狭い改札を抜ける。会社からもう少し近い場所に引っ越すことも考えたが、映画館が近いのと荷造りが面倒という理由でここに住み続けている。

 初めて映画を観てから数年がたったが、俺は昔と変わらない、変われなかった。
 中学高校とも友人は作れなかった。どこからともかくあいつの親は子供を捨てた屑だと噂が立ち、普通に接してくれていた子たちの目が憐れむ同情へと変わった。やがて同情は忌避へと変わり避けられいじめられるようになった。
 
 親戚との仲も良好ではなく高校卒業と同時に就職し親戚の家から出た。右も左もわからないまま就職したため仕事を覚えるのに精一杯で同僚と飲みに行ったりなどはせず親しくなれなかった。
 今までの体験が、トラウマが、私を雁字搦めにして人との関わりをさせまいとしていた。
 今考えてみると、映画が好きなのは自分の空虚な人生から一時でも逃れたいからなのかもしれない。自虐的に笑う。
 いまからでもやり直したいくらいだ。そんなこといったでどうにかなるものじゃないし、これから先死ぬまで生きていくしかない。かなり気分が下がる。

 少し歩いて交差点を曲がるともう映画館だ。意識していないが足が早まる。交差点をまがった時だった。強烈な光が私を照らした。思わず目をつぶる。少しして衝撃がきて俺は宙に舞った。


ーーーーーーーー


 気が付くと俺は席に座っていた。
 大きな部屋だ。眼前にはスクリーンが広がる。スクリーンは見たことがあるようなないような景色を映しだしていた。
 どうやらここは映画館のようだ。周りを見渡したが誰もいない。観客は自分一人のようだ。

 「なんの映画を選んだんだっけ。」

 なぜか駅から映画館までの記憶が曖昧だ。
 スクリーンでは映像が流れ続けている。町、どこかの家の一室、コンビニ、教室。目まぐるしく景色は変わる。
 しかし不思議なことにどの景色にも人が映っていなかった。映像は変化するにつれてより鮮明に色が濃くなっていく。しかしどの映像も暗いように感じた。

 少したってある部屋を映した時俺はこの部屋がどこなのかわかった。
 高校の時に住んでいた親戚の家の一室だ。次に映ったのは通っていた高校の教室だった。自分の知っている景色が連続して映っているのは偶然だろうか。

 そういえばさっき映った町、あれは祖父母と住んでいた町だったような気がする。
 考えているのも気にもとめないで映像が変わっていく。高校の体育館、引っ越ししたばかりの家、職場、電車の中、そして駅の改札。
 どうなっているのかわからないが、どうやら自分の関係のある場所が時系列順に映し出されているようだ。しかもここ最近のことも。いやこれは自分の視点の景色のようにも見える。
 
 そして映画館の前の交差点が映し出された。

「そうそう、ここまでは記憶がはっきりしてるんだよ。」

 思わず口に出る。次に映し出されたのは、強烈な光。車のヘッドライトだった。その後、スクリーンには車のブレーキ痕と地面に横たわる私の姿を映し出した。

「俺は、轢かれたのか?」

 おもわず立ち上がって腕や足を見る。しかしそこには痛みもなく服にも破れたり汚れはついていなかった。
 頭の中を疑問が駆け巡る。館内はそんな私をよそに少し明るくなる。スクリーンには映画後のお決まりのエンドロールが出てきた。
 しかし、映画のようなたくさんの人の名前が流れなかった。俺の事故のシーンをバックに大きな黒文字で「〇〇 〇〇役 〇〇 〇〇」と自分の名前が書かれていた。たしかに今までの映像には自分しか人物は出てきていないが、、。私の人生はこんなあっけなく終わってしまうのか。

 「正直言ってつまらない映画だよね。」

 突然後方から声がした。自分以外にも人がいたのかと思わず振り返る。

 そこには灰色のパーカーを着てフードを被った人物が席にもたれかかって座っていた。手にはよくあるポップコーンのバケツを持っていてしきりにつまんでいる。中性的な顔立ちで男か女か判断がつかない。

 「ワクワクする展開もないし、ドキドキする場面も、心躍る登場人物も、最後のどんでん返しも。」

 確かに自分の人生はそんなものなかったがそこまで言わなくてもいいだろと思わず口に出してしまう。そんな俺の反応をよそに彼?彼女?はポップコーンをつまみながら話し続ける。

 「大体、主人公が暗いよね。なんかすべてを諦めてるっていうか。もうちょっと足掻くとかしないと、これじゃあ死体と一緒だよ。あ、君は死んだから実質死体か。」

 「失礼すぎるだろ、てか一体君は誰なんだ、そしてここは何処なんだ!」

 相手の度重なる失礼な言動に思わず声を荒げながらも今まで持っていた疑問をぶつける。

 「うーん、難しい質問だね。」

 食べようと手に持っていたポップコーンをまじまじと見つめながら彼?彼女?は少し考えた。

 「まず、最初の質問、自分は立場的に君たちが言うところの天使に近いかな。御覧の通り、羽も輪っかもないけどね。」

 そう言ってフードをとって背中を向けながら言う。確かに頭の上にも背中にも輪っかや羽も付いていなかった。

 「そうは見えないんだが、、なんか胡散臭いしな。」

 実際そうは見えないんだからしょうがない。言葉も安っぽいし。
 自称天使は私を一度見た後大きなため息をついた。

 「またか、いい加減その言葉は聞き飽きたよ。『天使に見えない』って大体、君たちは天使の実物を見たことがあるのかい?ないでしょ。なのに誰か書いたか分からないあの頭の上に輪っかがあって背中に白いふわふわな羽が生えてるのが天使だと思ってるし。やめてほしいよねほんと。」

 「いや、そういわれてもなんか神秘的なオーラとか感じないし。」

 「はぁ。わかったよ。じゃあいうけど、君、小学三年生の時隣の女の子が好きだったでしょ。ちょっと優しくされたから好きになって家で緑の便箋にラブレターを書いていざ渡そうと持っていったけど寸前でやめてたよね。確かラブレターの書き出しは、」


 「わかった、わかった、信じるから。天使だって信じるからそれ以上は辞めてください、、」

 唐突なる黒歴史暴露に慌てて大きい声を出して止める。結局手紙は渡さなかったからこのことを知っているのは自分だけだ。どうやら本物らしい。

 「だから嫌なんだよねこの役職は、上からはあれこれ無茶ぶりされるし人間からは怒鳴られるし挙句の果てに胡散臭いとは、、、、まったく損な役回りだよ。」

 天使は先ほど以上に大きなため息をついてうなだれる。
 現代でいう中間管理職のようなものか。経験はないが苦労は知っている。先ほど怒鳴ってしまったことを少し後悔した。
 
 「君にこんなこと愚痴っても仕方ないか。話が逸れたね、次の質問だけどここは君の記憶の中かな。ほら、死ぬ前に一瞬で今までの人生がみえる走馬灯ってやつ、それがあのスクリーンだよ。」

 話によるとここは俺自身の記憶の中らしい。この場所は記憶を元に作られているため俺の知っている映画館のような作りになったらしい。そしてスクリーンに映っているのは今までの俺の人生の走馬灯らしい。

 「本来なら、人生で関わった友人や家族とかと過ごした場面が映るはずなんだけど、、君には記憶に残らなかったんだね。」

 実際そうなのだが、他の人に言われるとなんだか心にくるものがある。

 「、、、、俺はこれからどうなるんだ、、」

 自分が死んだことは思ったよりも素直に受け止められていた。

 「お、意外と冷静なんだね。普通の人は自分が死んだこととかで動揺したりするんだけど、」

  天使は大げさに驚いたふりをしながら言う。

  「どうせ心残りのない人生だったからな、むしろ早く終わってすっきりしたよ。」

 少し強がって返す。まあ、特にやり残したこともないし嘘ではないか。

 「君は人生に後悔はないのかい、こんななにもない、味気ない十数年で。」

 後悔はない、、、、、、、自分に言い聞かせるように頭の中で反芻する。
 
 、、、いや、ないのではない。叶わないと思って諦めていたのだ。もっとこうすればよかった、こうしていればよかった、挙げればキリがない。なりたい自分がいたはずなのに、いつのまにか環境のせいにして投げ捨てていた。

 初めて観たあの映画が脳裏に浮かぶ。普通に生きることができていれば、周りのせいにして諦めていなければ、あの映画の主人公のようになれたのだろうか。いまさらそんなことを考えたってもう俺の人生はあの道で轢かれて終わった。どうしようもない。

 でも、できることならもう一度、

 「、、、できるなら、もう一度やり直したい。」

 思わず口に出る。前向きな自分に驚く。
 いままでも色々なことを諦めて生きてきたのにそんな言葉が出るなんて。死んだから何かが吹っ切れたのだろうか。

 「、、、、そんなことができるなら生きる意味がないじゃない。」

 天使は手に持っていたケースを置き、俺を見ながら言う。初めて面と向かって目が合った気がする。その視線は自分をすべて見透かされているような気がした。

 そうだよな、そんなにうまくいくわけがない。もう一度なんて、それができればみんな後悔なく生きていけるだろう。どうして自分は生きているうちに考えなかったのだろうか。後悔が泉のように湧き出てくる。

 「といつもは言うんだけど、今回は上の意向だからね。君にチャンスをあげよう。」

 そう言って天使は立ち上がり、俺に向かって指をさした。若干嫌そうな顔をしたのは気のせいだと思いたい。
 チャンス?ということはもう一度、生きれるのか。後悔に呑まれていた俺を天使の声が現実に引き戻す。

 「ただし、やり直す世界は今まで生きていた世界ではないよ。同じ世界に戻るとその世界、ひいてはそこに生きる人にも影響がでるからね。」

 どうやら人生を一からやり直せるが、元の世界ではない世界でとのことらしい。よくわからないが、今は別の世界などはほんの些細なことだった。

 「それと今までの君の知識や経験、記憶は一旦預からせてもらうよ、向こうの世界にも悪影響を及ぼすかもしれないからね。」

 「そんな、、それはあんまりじゃないですか。」

 今まで生きてきたことが無駄になったような感じがして嫌な気持ちになる。記憶が引き継がれないならば、今まで自分がしてきた失敗を繰り返すことになるかもしれない。

 「だって一度目の人生の記憶を持ったまま二度目の人生を送るならば、一回目はなんのために生きたかわからないじゃないか。大体、二度目の人生を歩めるだけでも感謝してほしいよね、、」

 天使の正論に俺は黙り込む。確かにその通りだ。今は生き返ることだけでも喜ぶべきことなのかもしれない。

 「で、どんな世界なんですか。その世界は」

 「うーん、それは行ったらわかるよ。」

 どうやら必要以上に教えてはくれないらしい。

 「行く気になったら、この場所の出口に進むんだ。」

 そういうと天使は席に深々と座り込み、またポップコーンを食べ始める。

 「もうひとつ聞いていいですか、、、、なんで俺なんだ。やり直せるのは、」

 先ほどの天使の話を聞いていて疑問に思ったことだった。普段ならこんなことはない。しかし天使は上の役職の意向でと言っていた。ではなぜ俺なんだ?世の中にはたくさん未練をもって死ぬ人がいるはずだ。なにかが優れているわけではない俺が、なぜ選ばれたのか。

 「それは…」

 さっきから話す時は快活だった天使が急に口ごもる。

 「…それは自分もわからない。上の意向なんだ。やれといわれたら理由に関わらず従うしかない。」

 天使の世界は、どうやら人の世界以上に縦社会らしい。まあそうだよな。人以上に能力主義っぽいし。

 「自分も君みたいな何もない人間が選ばれたのが不思議なんだ。」

 そういって天使はにやりと笑う。

 「そこまで言わなくてもいいでしょ、」

 と思わず突っ込む。

 「はいはい、悪かったよ。君とはもう話すことはないから新たな人生に向かうといいよ。この場所からの出方もわかるでしょ。」

 天使は面倒くさそうに俺に向かってシッシッと手を払う。
 俺は意を決して向かうことにした。

 「まあ、せいぜい頑張りなよ。君の身の丈にあった人生を送ることをおすすめするよ。」

 背中から天使の声が聞こえる。意図せずに手に入れた二度目の人生、今度こそ悔いなく生きよう。心に決める。あ、でも記憶は無くなるんだからこの決意も無駄になるかも。

 出口はいつもの映画館と場所も作りも変わらなかった。
 ただ普通ならば、ドアの上には非常口を表すEXITの文字と逃げるピクトグラムが書かれた緑の蛍光看板があるはずだが、そこにはEXITではなくNEXTの文字とドアを開ける人型のマークがあった。なかなか洒落た演出だなと思う。
 今からの俺は逃げるのではなく進むのだ。今までは諦めることがほとんどだったが今度は違う。俺は映画館特有の重たい扉を開き、眩しく先が見えないドアの向こうへ進んだ。


ーーーーーーーーー


 彼がドアを開けて先に進んだ後、一人になったシアターの中で天使は空になったポップコーンの紙バケツを見ながら聞こえるか聞こえないかくらいの声で呟く。

 「…なにもないといいけど、」

 そんな心配は何も映していなかったスクリーンの音でかき消される。スクリーンには彼の第二の人生を過ごす世界が映し出されていた。
 不意に入口のドアの方に近づく足音が聞こえてきた。その規則的な音は耳の奥まで届くような重さがあり天使を不安にさせた。

 「もういらっしゃったのか。」

 手に持っていた紙バケツを小さく折りたたみしまう。手についていたポップコーンの塩をハンカチでふき取り、ドアの手前まで行き姿勢を整える。空気が重たい。まるで天使の緊張感が周りに伝染したように。

 やがて足音の主はドアの前で立ち止まった。
 天使は図ったようなタイミングでドアを開ける。

 シアター全体が強烈な光に包まれてなにも見えなくなった。

 

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