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第一章 出会い編
29、私は髪を触ります
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ウィッグが外された頭には薄い布で出来たような帽子を被っていましたが、あの膨らみのなさから見て、おそらく髪を剃っていますわね。平然とした顔でなぜかこちらにウィッグを渡そうとしてきますが、出来れば早く被り直してください。日頃ふっくらとしたツインテールを見慣れているだけに拒絶反応が出そうです。
「……その年齢で機関に加入できるのかと以前から疑問には思っていましたが、貴女、この国の生まれじゃないんですのね。それを隠すためのウィッグですか。どこ出身ですの?」
「どこって言うなら機関かな。故国とかはない。髪の色は緑だったから、強いて言うならハージセッテなんだろうけど、両親も別にハージセッテ出身じゃないし」
「もし何らかのアクシデントが発生してウィッグが落ちたらどう言い訳するつもりですの? 流石に怪しまれますし、それこそすぐに広まりますわよ」
「別に構わないよ。情報操作は私の専売特許。広まる前に握りつぶすくらい余裕だし、病気で髪の毛が生えてこないって言えば、積極的に言いふらすのは性格が悪いやつくらいだし、晒し上げて村八分にくらいしてやるし」
「他言無用ですわね……」
なかなかおかしな話なのですが、出身国がどこなのかは基本的にその人を見れば明らかです。何せ、国によって髪の色が決まっていますから。常識ではありますが奇怪な話でもあります。そういうものだと納得するしかないわけですが。
話に出てきたハージセッテは髪の色が緑です。だから主な産業が植物になったのか、植物を扱っていたから髪がそうなったのかは分かりません。似合っているとは思いますが。つまり、緑色の髪の持ち主は出身国がハージセッテだと一目で分かってしまうわけですわね。それは七か国全てがそうです。
シーツァリアは濃淡こそあれど青色の髪を持って生まれます。私の場合は青と言うより藍に近いですが、光に透かせばかなり綺麗な青に見えるので少しだけ自慢できる部位ですわね。背中の中程まで伸ばしているのは私の好みではなく、王妃らしい髪型として設定されたものなのでたまには髪を結って出かけてみたいものですが、許されませんわね。
ちなみにハーフの場合ですが、基本的に父親の髪色に依存するそうです。極稀にそうではない場合もあるとのことですが、私的にはそれは単に浮気しただけなのではと思わなくもないですわね。遺伝子検査をした上での研究だったら信憑性のある話なのですが、ケースが少なすぎてまともな論文もないので、研究する価値が今のところ無いのでしょう。
「つまり、貴女の言う見分ける方法というのはそれですのね。髪を剃っているかどうか、出身国を知られないような工夫をしているかどうかという点に注視するという」
「やたらと精巧なかつら被ってたらまあ機関だね。勿論、生半可なことじゃボロは出さないけど、一番楽に見分けるならこれ。知られたらそれなりの処理するだろうから、当然そんなことやらない方がいいけど」
「染めるんじゃ駄目ですの? 好みの問題もあるでしょうが、そちらの方が隠すという点においては向いている気がするのですが」
「駄目だよ。髪を染めるのは違法。知ってるでしょ?」
「国の中枢に食い込んでおいて、そこは律儀に守るんですのね……」
「『ルールを守れない奴にルールを守らせる権利はない』っていうのが機関の根本的な教えの一つにあってね。ルールを守らない奴をルールで守る必要はないっていうのは、まあ共感できるでしょ?」
言い終わるとミラーは手に持っていたウィッグを慣れた手付きで被り直しました。ようやく見慣れた彼女に戻ったわけですが、一度見た衝撃的な映像というのは網膜に結構焼き付くわけで、二人のミラーが重なって見えますわね。これは受け入れるまでに少し時間がかかりますわね。
試しにツインテールの左側を触ってみますが、まさかこれが偽物だとは思わないですわね。見た感じの艶も、触った感じの湿り気も、まさに本物。クオリティが高いという言葉より、いっそのことオーバーテクノロジーと言った方がしっくりくるような仕上がりですわ。普通に買ったらいくらになるかも見当がつきません。
「ちなみにこの髪は機関のメンバーの髪ね。私の髪もそうだけど、ただ剃るだけじゃ勿体ないから、こうやって再利用してるってわけ。物を可能な限り無駄にしない、いい組織だよねえ」
「……改めて聞くと、機関がどれ程の規模なのか再び分からなくなりますわね。誰が機関から送られてきたのかと考えると、なかなかにぞっとしますわ」
「ぞっとしないんじゃなくて?」
「普通に怖いのでぞっとするであっていますわ」
しかし、これはなかなか有益な情報なのでは。やたらと他言するわけにはいかない話ではありますが、シユウ様に教えれば何かしらに役立ててくださるかもしれません。上手い具合に話題も逸らせましたし、今日はこの辺りで帰らせていただきましょうか。
「で、昨日プレゼントしてもらった携帯は今持ってるんですか?」
「…………は?」
「……その年齢で機関に加入できるのかと以前から疑問には思っていましたが、貴女、この国の生まれじゃないんですのね。それを隠すためのウィッグですか。どこ出身ですの?」
「どこって言うなら機関かな。故国とかはない。髪の色は緑だったから、強いて言うならハージセッテなんだろうけど、両親も別にハージセッテ出身じゃないし」
「もし何らかのアクシデントが発生してウィッグが落ちたらどう言い訳するつもりですの? 流石に怪しまれますし、それこそすぐに広まりますわよ」
「別に構わないよ。情報操作は私の専売特許。広まる前に握りつぶすくらい余裕だし、病気で髪の毛が生えてこないって言えば、積極的に言いふらすのは性格が悪いやつくらいだし、晒し上げて村八分にくらいしてやるし」
「他言無用ですわね……」
なかなかおかしな話なのですが、出身国がどこなのかは基本的にその人を見れば明らかです。何せ、国によって髪の色が決まっていますから。常識ではありますが奇怪な話でもあります。そういうものだと納得するしかないわけですが。
話に出てきたハージセッテは髪の色が緑です。だから主な産業が植物になったのか、植物を扱っていたから髪がそうなったのかは分かりません。似合っているとは思いますが。つまり、緑色の髪の持ち主は出身国がハージセッテだと一目で分かってしまうわけですわね。それは七か国全てがそうです。
シーツァリアは濃淡こそあれど青色の髪を持って生まれます。私の場合は青と言うより藍に近いですが、光に透かせばかなり綺麗な青に見えるので少しだけ自慢できる部位ですわね。背中の中程まで伸ばしているのは私の好みではなく、王妃らしい髪型として設定されたものなのでたまには髪を結って出かけてみたいものですが、許されませんわね。
ちなみにハーフの場合ですが、基本的に父親の髪色に依存するそうです。極稀にそうではない場合もあるとのことですが、私的にはそれは単に浮気しただけなのではと思わなくもないですわね。遺伝子検査をした上での研究だったら信憑性のある話なのですが、ケースが少なすぎてまともな論文もないので、研究する価値が今のところ無いのでしょう。
「つまり、貴女の言う見分ける方法というのはそれですのね。髪を剃っているかどうか、出身国を知られないような工夫をしているかどうかという点に注視するという」
「やたらと精巧なかつら被ってたらまあ機関だね。勿論、生半可なことじゃボロは出さないけど、一番楽に見分けるならこれ。知られたらそれなりの処理するだろうから、当然そんなことやらない方がいいけど」
「染めるんじゃ駄目ですの? 好みの問題もあるでしょうが、そちらの方が隠すという点においては向いている気がするのですが」
「駄目だよ。髪を染めるのは違法。知ってるでしょ?」
「国の中枢に食い込んでおいて、そこは律儀に守るんですのね……」
「『ルールを守れない奴にルールを守らせる権利はない』っていうのが機関の根本的な教えの一つにあってね。ルールを守らない奴をルールで守る必要はないっていうのは、まあ共感できるでしょ?」
言い終わるとミラーは手に持っていたウィッグを慣れた手付きで被り直しました。ようやく見慣れた彼女に戻ったわけですが、一度見た衝撃的な映像というのは網膜に結構焼き付くわけで、二人のミラーが重なって見えますわね。これは受け入れるまでに少し時間がかかりますわね。
試しにツインテールの左側を触ってみますが、まさかこれが偽物だとは思わないですわね。見た感じの艶も、触った感じの湿り気も、まさに本物。クオリティが高いという言葉より、いっそのことオーバーテクノロジーと言った方がしっくりくるような仕上がりですわ。普通に買ったらいくらになるかも見当がつきません。
「ちなみにこの髪は機関のメンバーの髪ね。私の髪もそうだけど、ただ剃るだけじゃ勿体ないから、こうやって再利用してるってわけ。物を可能な限り無駄にしない、いい組織だよねえ」
「……改めて聞くと、機関がどれ程の規模なのか再び分からなくなりますわね。誰が機関から送られてきたのかと考えると、なかなかにぞっとしますわ」
「ぞっとしないんじゃなくて?」
「普通に怖いのでぞっとするであっていますわ」
しかし、これはなかなか有益な情報なのでは。やたらと他言するわけにはいかない話ではありますが、シユウ様に教えれば何かしらに役立ててくださるかもしれません。上手い具合に話題も逸らせましたし、今日はこの辺りで帰らせていただきましょうか。
「で、昨日プレゼントしてもらった携帯は今持ってるんですか?」
「…………は?」
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