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ラジトバウム編
5話 魔法のカード
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夕飯に買えたのは手のひらサイズのパン一個か。
お店のおばちゃんがもう一つオマケしてくれたけど、ちょっともの足りないな。
いや、食べるものがあるだけありがたいか。ここはもう俺の元いた場所じゃないんだ。
モンスターもいれば天変地異もある。気を引き締めないと。
カネもないので、タダ同然で眠れる場所を探していた俺は馬小屋で寝ることになった。
夕暮れ時。俺は道端にすわって何をするでもなくたそがれていた。
夕日に照らされた冒険士カードを手に持ちながら。
つよい突風が吹いて、冒険士カードが道の通りに飛ばされてしまった。
その先を目で追うと、ちょうど通りの向こうから毛むくじゃらのなにかが近づいてくるのが見えた。
動物らしい。弱っているのかフラフラとよろついている。
まさかモンスターか? だとしたらなんでこんな街中に。
襲ってくる気配はない。襲ってくる元気もないのか。
ノラ猫みたいなもんなのかもしれないな、とも思ったが、よくみると服のような衣類を身に纏っている。
その犬のような猫のようななんだかわからない生き物は、カードのちかくでぱたりと道に倒れてしまった。
と思いきや、モシャモシャと冒険士カードを口に入れて食べ始めた。
「あああ!! 俺のカード!!」
俺はすぐに駆け寄って、謎の生き物の口からカードを引っぺがす。
よだれでドロドロになってるよ……。とりあえず、服の端で拭く。
カードは無事のようだが、この生き物は倒れたまま起き上がらない。
空腹なのだろうか。意識も朦朧(もうろう)としている感じだ。
どうやら、俺と同じってことらしい。
「お前も逆境みたいだな……」
腹は減ってるが、なけなしのベーコンパンをケモノにやる。おばさんがくれたおまけのもう一つのパンだ。
口元にベーコンパンを持っていくと、弱々しく食べはじめた。
ついでに毛並みをさわらせてもらうと、フカフカしていてなかなか心地がよかった。
俺もパンをかじながら、自分のことを考える。
これからどうするか。
だれを頼ったらいいかわからない。
異国の地っていうのが、こんなに心細いものだったなんて。
「かたじけない。きみ冒険士ワヌ?」
声を発したのは、さっきのあのケモノだった。
「うおォッ!? お前喋れたのか!?」
「フォッシャはフォッシャというワヌ。とあるカードを探して旅してるんだワヌ」
フォッシャはそう自己紹介してくれた。いつの間にかかなり元気になっている。
「なんか大変な事情がありそうだな……。あんたも天変地異とかいうのに巻き込まれたのか?」
「うーん……まそんなとこワヌ。ところで、あんた困ってるみたいだからフォッシャが助けてやるワヌ」
「いやお前のほうが困ってそうだったんだけど」
「あんたいいやつワヌ。フォッシャが協力するワヌ」
「……代わりに、カード探しを手伝えって言ってるのか?」
「そうワヌ」
「……でもな……俺なんか一日生きるので精一杯だし……役に立てるかどうか……どうすればいいのか、ぜんぜんわからないんだ」
「……きみ、名前は?」
フォッシャに名をたずねられて、俺は答える。
「……スオウザカエイト」
「エイトはなにかやりたいことがあるワヌか? 故郷に戻りたいワヌか?」
「元の場所には……戻る方法がわからない。戻れるのかどうかも……」
「そうワヌか……。でも結局はエイトがどうしたいか、それで決めるワヌよ」
「どうしたいか……」
そりゃ趣味を楽しめればいいけど、そうも言ってられない状況なんだよな。
でも目標があるのは大切かもしれない。
とりあえずすぐに思いつく身近なことを、感じたまま口に出してみる。
「俺は……色々あるけどまず、もっと楽な生活がしたいな……。このままじゃ明日生きられるかどうかもわからない」
「じゃ、明日からがんばるワヌ!」
さっきまでフラフラだったのに、すごい前向きなんだな、とフォッシャを見て思う。
こいつを見ていると、なんだか俺も根拠のない自信が沸いてきて、フッと笑いがこぼれてしまう。
フォッシャはカードを探している、とか言ってたっけ。
「でも、やっぱりごめん。力になってあげたいけど、人助けしてる余裕がなくてな」
「そうワヌか……しかたないワヌね。ま、でもこの恩はきっといつか返すワヌ。エイトにオドの加護がありますように」
そう言ってフォッシャは、二足立ちして両手をあわせた。
「カードがありそうなところ……なんか目星とかあるのか?」
と俺はきいてみる。
「なーんもないワヌ」
「そうか……」
「でも、この魔法の首輪がきっと幸運を呼んで、みちびいてくれるワヌ。きっとなんとかなるワヌ」
「そのわりにはさっき死に掛けてたよな」
茶々をいれつつも、フォッシャのポジティブ思考に俺は感心する。
「そういう時もあるんだワヌ。これ、レアカードなんだワヌよ。ほら」
フォッシャが自分の首飾りを短い前足でさわる。
すると首飾りは一枚の光り輝くカードになり、姿を変化させた。
このカード、ギルドでもらった冒険士カードとは違う。なにか加工されたレアカードのように煌いている。
「……カード……。これが、魔法の……」
俺がつぶやきおわると同時にあたりが一瞬暗くなり、視界が途絶えた。
かと思いきや、俺はいつの間にかなにもない、真っ白な空間にいた。
奥行きがどこまで続いているのか、360度どこまでも真っ白で、奇妙な場所だった。
フォッシャは? それに今まで俺は街にいたはずだ。なんだ、ここは?
まばたきする間にこの白い空間の奥、俺から離れた前方に1枚のカードが浮かんでいるのが見えた。
目を凝らし、すぐに見覚えがあることに気づく。あのカード、名前と絵が黒く塗りつぶされた謎のカード。
俺は無意識にカードへと歩み寄り、手を伸ばしたが――
気がつくと、フォッシャの顔が目の前にあり、あたりには街の風景がもどっていた。
「おーい。魔法見るのはじめてって顔してるワヌよ」
今の光景はなんだったのだろう。幻覚か。フラッシュバックか。あるいはカードの魔法?
なにがおきたのかわからず、俺は戸惑っていたがフォッシャの声に冷静さを取り戻す。
「今のは?」
俺は今の現象について、フォッシャにたずねる。
「今のって、なにが?」
フォッシャはなにも知らないようで、とぼけた顔をした。それでも俺はひるまずに追求する。
「このカードにさわったら、ヘンなイメージが見えた。白い場所に、カードがあって……。なんなんだ、今のは」
「なにか見えたワヌか? うーん……。ちょっとわからないワヌね。これは『魔法の首飾り』って言って、いろんなことがうまくいくよう導いてくれるシロモノなんだワヌ」
「いろんなことがうまくいくよう……?」
ずいぶん抽象的(ちゅうしょうてき)な説明だな。
「これをさわってカードの幻覚を見たってことは、エイトはなにかカードと因縁があるのかもしれんワヌね」
魔法の首飾り、それにカードか。
俺の頭のなかでひとつの考えがよぎり、身体が自然とフォッシャを呼び止めた。
「……待って。手伝うよ、カード探し」
結局俺の身になにがあったのかは、わからない。今の俺には、助けが必要だ。
「俺、この世界のことなんも知らないから、いろいろ教えてくれると助かる。そうしてくれれば、俺もすこしはお前の仲間探しの役に立てるだろうしさ」
「任せるワヌ!」
「よろしくな」
「起きてたらお腹減るし、さっさと寝るワヌ!」
強いな、フォッシャは。
「だな」
お店のおばちゃんがもう一つオマケしてくれたけど、ちょっともの足りないな。
いや、食べるものがあるだけありがたいか。ここはもう俺の元いた場所じゃないんだ。
モンスターもいれば天変地異もある。気を引き締めないと。
カネもないので、タダ同然で眠れる場所を探していた俺は馬小屋で寝ることになった。
夕暮れ時。俺は道端にすわって何をするでもなくたそがれていた。
夕日に照らされた冒険士カードを手に持ちながら。
つよい突風が吹いて、冒険士カードが道の通りに飛ばされてしまった。
その先を目で追うと、ちょうど通りの向こうから毛むくじゃらのなにかが近づいてくるのが見えた。
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その犬のような猫のようななんだかわからない生き物は、カードのちかくでぱたりと道に倒れてしまった。
と思いきや、モシャモシャと冒険士カードを口に入れて食べ始めた。
「あああ!! 俺のカード!!」
俺はすぐに駆け寄って、謎の生き物の口からカードを引っぺがす。
よだれでドロドロになってるよ……。とりあえず、服の端で拭く。
カードは無事のようだが、この生き物は倒れたまま起き上がらない。
空腹なのだろうか。意識も朦朧(もうろう)としている感じだ。
どうやら、俺と同じってことらしい。
「お前も逆境みたいだな……」
腹は減ってるが、なけなしのベーコンパンをケモノにやる。おばさんがくれたおまけのもう一つのパンだ。
口元にベーコンパンを持っていくと、弱々しく食べはじめた。
ついでに毛並みをさわらせてもらうと、フカフカしていてなかなか心地がよかった。
俺もパンをかじながら、自分のことを考える。
これからどうするか。
だれを頼ったらいいかわからない。
異国の地っていうのが、こんなに心細いものだったなんて。
「かたじけない。きみ冒険士ワヌ?」
声を発したのは、さっきのあのケモノだった。
「うおォッ!? お前喋れたのか!?」
「フォッシャはフォッシャというワヌ。とあるカードを探して旅してるんだワヌ」
フォッシャはそう自己紹介してくれた。いつの間にかかなり元気になっている。
「なんか大変な事情がありそうだな……。あんたも天変地異とかいうのに巻き込まれたのか?」
「うーん……まそんなとこワヌ。ところで、あんた困ってるみたいだからフォッシャが助けてやるワヌ」
「いやお前のほうが困ってそうだったんだけど」
「あんたいいやつワヌ。フォッシャが協力するワヌ」
「……代わりに、カード探しを手伝えって言ってるのか?」
「そうワヌ」
「……でもな……俺なんか一日生きるので精一杯だし……役に立てるかどうか……どうすればいいのか、ぜんぜんわからないんだ」
「……きみ、名前は?」
フォッシャに名をたずねられて、俺は答える。
「……スオウザカエイト」
「エイトはなにかやりたいことがあるワヌか? 故郷に戻りたいワヌか?」
「元の場所には……戻る方法がわからない。戻れるのかどうかも……」
「そうワヌか……。でも結局はエイトがどうしたいか、それで決めるワヌよ」
「どうしたいか……」
そりゃ趣味を楽しめればいいけど、そうも言ってられない状況なんだよな。
でも目標があるのは大切かもしれない。
とりあえずすぐに思いつく身近なことを、感じたまま口に出してみる。
「俺は……色々あるけどまず、もっと楽な生活がしたいな……。このままじゃ明日生きられるかどうかもわからない」
「じゃ、明日からがんばるワヌ!」
さっきまでフラフラだったのに、すごい前向きなんだな、とフォッシャを見て思う。
こいつを見ていると、なんだか俺も根拠のない自信が沸いてきて、フッと笑いがこぼれてしまう。
フォッシャはカードを探している、とか言ってたっけ。
「でも、やっぱりごめん。力になってあげたいけど、人助けしてる余裕がなくてな」
「そうワヌか……しかたないワヌね。ま、でもこの恩はきっといつか返すワヌ。エイトにオドの加護がありますように」
そう言ってフォッシャは、二足立ちして両手をあわせた。
「カードがありそうなところ……なんか目星とかあるのか?」
と俺はきいてみる。
「なーんもないワヌ」
「そうか……」
「でも、この魔法の首輪がきっと幸運を呼んで、みちびいてくれるワヌ。きっとなんとかなるワヌ」
「そのわりにはさっき死に掛けてたよな」
茶々をいれつつも、フォッシャのポジティブ思考に俺は感心する。
「そういう時もあるんだワヌ。これ、レアカードなんだワヌよ。ほら」
フォッシャが自分の首飾りを短い前足でさわる。
すると首飾りは一枚の光り輝くカードになり、姿を変化させた。
このカード、ギルドでもらった冒険士カードとは違う。なにか加工されたレアカードのように煌いている。
「……カード……。これが、魔法の……」
俺がつぶやきおわると同時にあたりが一瞬暗くなり、視界が途絶えた。
かと思いきや、俺はいつの間にかなにもない、真っ白な空間にいた。
奥行きがどこまで続いているのか、360度どこまでも真っ白で、奇妙な場所だった。
フォッシャは? それに今まで俺は街にいたはずだ。なんだ、ここは?
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なにがおきたのかわからず、俺は戸惑っていたがフォッシャの声に冷静さを取り戻す。
「今のは?」
俺は今の現象について、フォッシャにたずねる。
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フォッシャはなにも知らないようで、とぼけた顔をした。それでも俺はひるまずに追求する。
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「なにか見えたワヌか? うーん……。ちょっとわからないワヌね。これは『魔法の首飾り』って言って、いろんなことがうまくいくよう導いてくれるシロモノなんだワヌ」
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