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ラジトバウム編
真理追求カード2
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ボルテンス選手が火力で押している。スオウザカ選手は、一瞬ヒヤッとなる場面はあったものの、粘ってうまく立ち回っている。
隣にいたおばさんが、ビールとおつまみをやりながら試合の文句をぶつぶつ言っている。
「あんなの、カードがいいだけよ! カードが強いんだから、あれくらいできて当然よ」
それだけじゃない。
たしかにあの審官というカード、かなり強い。だけどあの結闘士、常に的確(てきかく)に局面(きょくめん)を読んでいる。
なにより、流血のハプニングがあってもまるで動じていない。
対戦中の結闘士はオドの加護によって守られているはずだけど、スオウザカ選手は流血し片目がふさがれている。
こんなアクシデント、初めてみた。審判も観客もとまどっているなかで、スオウザカ選手だけはゲームに集中し落ち着き払っている。
――ただものじゃない。おそらく優秀な冒険士か、あるいは王都の軍にいたのか。
しかしもう一方のカードとはうまくいっていないのか、連携がとれていないようにも見える。当然ボルテンス選手もそこを狙うと思うけれど、どうなるだろう。
ただあえてムリには攻めていないから、あれが演技という可能性もある。隙(すき)があるふりをして、誘ってきているのかも。
それとも本当に連携(れんけい)がうまくいっていないから、急遽(きゅうきょ)そういう戦術にしたのかもしれない。
仕掛けたのはボルテンス選手だった。攻防一体となって、二枚のカードと共に相手との距離をつめていく。
ボルテンス選手、間合いの取り方がうまい。あれだけの距離なら、トリックカードとの併用(へいよう)で一気にたたみかけられる。
スオウザカ選手もなにか気配をさっしたのか、動いてきた。テネレモを単独で走らせ、敵陣の横を迂回(うかい)させている。
スオウザカ選手と審官は猛烈な勢いで地を蹴り、ボルテンス選手に突っ込んでいく。
二方向から挟み撃ちでもするつもりなのだろうか。
だけどテネレモの移動速度は、はっきり言って人間の子供よりもおそい。
無謀(むぼう)にも見えるが、意図はわからない。
しかしスオウザカ選手もそのことはわかっているはず。なにかトリックカードとのコンボがあって、それを狙っているのかも。
ボルテンス選手も一瞬面食らっていたが、セオリー通り、カードを自身の周りに集め防御を固めながら、背後をとられないようフィールドの端(はし)へと向かっていく。
そこで、スオウザカ選手が伏せていたトリックカードを発動した。剣を地面につきさし、ドローのモーションで宙を切る。
と同時に、ボルテンス選手の目の色が焦燥に変わった。ボルテンス選手の「なにッ!?」という動揺と驚愕の詰まった声が、会場に響く。
そして私も異変に気がつく。
ボルテンス選手のカードが、勝手に発動している。炎の柱が、ボルテンス選手の前方縦2列にあらわれては爆発していく。おそらく『ダブルラインボム<二列空爆>』のトリックカードだと思う。
けど気になるのは――
スオウザカ選手のつかったあれはおそらく『暴発』のカード!
本来あれは相手のデッキの中にある一枚のカードをランダムで出させる効果がある。しかもオドのコストはかからない。
相手が有利になるから使いどころはむずかしいけど、この3on3のエンシェント式なら、デッキの代わりに伏せカードが『暴発』する。
『ダブルラインボム』は縦二列に連続爆発を起こす魔法。エンシェントなら、敵にダメージを与えるほか、敵の移動を制限できたりもする。だけどタイミングを狂わされて、スオウザカ選手と審官には当たらず、彼らは爆発列の中央地帯を突破している。
テネレモがすでにボルテンス選手の後方に到着しつつある。これではボルテンス選手は背後をかためる必要がある。
ここは私だったら耐久力のあるガスバリオをスオウザカ選手たち前方にあてて、スピードでテネレモに勝る裏世界の掃除屋を後方に構えるところだと思う。
ボルテンス選手はテネレモは大した脅威とみなかったのか、あるいは無視してよいと判断したのか、ウォリアーを二枚ともスオウザカ選手のほうにあてた。
しかしボルテンス選手のとったこの陣形は、スオウザカ選手のもう一枚のトリックカード次第では、ほとんど絶体絶命にちかい。
いや、スオウザカ選手を褒めるべきか。あえて動きのおそいテネレモを移動させたのも、相手になにかあると考えさせるためだった。
この局面で決まる。
ボルテンス選手の懐に飛び込んだスオウザカ選手。彼が使ったのはトリックカード『クロス・カウンター』。
敵の攻撃にあわせ、カードの攻撃力を増加させた反撃ダメージを与えるトラップ魔法。
裏世界の掃除屋が審官をむかえ撃ち、なぐりかかったと同時にカウンターが炸裂。一瞬で消し飛びカードは破れた。
また、ガスバリオは防御と耐久力はあるが、この至近距離では砲塔が回りきらず大砲を当てることもできないし、スピードも出ない。スオウザカ選手は審官の横にぴったりとはりついて、隙がない。
勝負はあった。審官の銃撃がボルテンス選手のオド防壁に突き刺さり、一撃で決着した。
観客はまばらな反応だが、スオウザカ選手を素直に認めているような様子だった。
とはいえ気持ちはわかるけれど、やっぱりあの審官のカードに、誰もが注目している。
謎のレアカード、か。いいなぁ、羨ましい。
一見するとスオウザカ選手は審官の強力な攻撃力で勝ったようにも思える試合だった。でも、たしかにあの審官は強力だったけど、ボルテンス選手の『<蒸気革命>スチームパンク』によるウォリアーカードの強化でその威力は半減されていた。
『暴発』『クロス・カウンター』『テネレモ』、この3枚ははっきり言って人気のない低価値カード。スオウザカ選手はそれをうまく使って、ちゃんと戦術で勝てている。
私もスオウザカ選手にたいして、たまたまレアなカードを手に入れただけなのかと思ったけど、彼は形勢や状況の判断も優れていた。
最初はなんだか初心者みたいにおぼつかない動きだったのも、相手を油断させる作戦だったのかな。
やっぱり会場で見たあのカードを触る手つきは、並みのプレイヤーのそれじゃなかった。
あの人、ちょっと気になるなぁ。お話とか、してみたいけど……
隣にいたおばさんが、ビールとおつまみをやりながら試合の文句をぶつぶつ言っている。
「あんなの、カードがいいだけよ! カードが強いんだから、あれくらいできて当然よ」
それだけじゃない。
たしかにあの審官というカード、かなり強い。だけどあの結闘士、常に的確(てきかく)に局面(きょくめん)を読んでいる。
なにより、流血のハプニングがあってもまるで動じていない。
対戦中の結闘士はオドの加護によって守られているはずだけど、スオウザカ選手は流血し片目がふさがれている。
こんなアクシデント、初めてみた。審判も観客もとまどっているなかで、スオウザカ選手だけはゲームに集中し落ち着き払っている。
――ただものじゃない。おそらく優秀な冒険士か、あるいは王都の軍にいたのか。
しかしもう一方のカードとはうまくいっていないのか、連携がとれていないようにも見える。当然ボルテンス選手もそこを狙うと思うけれど、どうなるだろう。
ただあえてムリには攻めていないから、あれが演技という可能性もある。隙(すき)があるふりをして、誘ってきているのかも。
それとも本当に連携(れんけい)がうまくいっていないから、急遽(きゅうきょ)そういう戦術にしたのかもしれない。
仕掛けたのはボルテンス選手だった。攻防一体となって、二枚のカードと共に相手との距離をつめていく。
ボルテンス選手、間合いの取り方がうまい。あれだけの距離なら、トリックカードとの併用(へいよう)で一気にたたみかけられる。
スオウザカ選手もなにか気配をさっしたのか、動いてきた。テネレモを単独で走らせ、敵陣の横を迂回(うかい)させている。
スオウザカ選手と審官は猛烈な勢いで地を蹴り、ボルテンス選手に突っ込んでいく。
二方向から挟み撃ちでもするつもりなのだろうか。
だけどテネレモの移動速度は、はっきり言って人間の子供よりもおそい。
無謀(むぼう)にも見えるが、意図はわからない。
しかしスオウザカ選手もそのことはわかっているはず。なにかトリックカードとのコンボがあって、それを狙っているのかも。
ボルテンス選手も一瞬面食らっていたが、セオリー通り、カードを自身の周りに集め防御を固めながら、背後をとられないようフィールドの端(はし)へと向かっていく。
そこで、スオウザカ選手が伏せていたトリックカードを発動した。剣を地面につきさし、ドローのモーションで宙を切る。
と同時に、ボルテンス選手の目の色が焦燥に変わった。ボルテンス選手の「なにッ!?」という動揺と驚愕の詰まった声が、会場に響く。
そして私も異変に気がつく。
ボルテンス選手のカードが、勝手に発動している。炎の柱が、ボルテンス選手の前方縦2列にあらわれては爆発していく。おそらく『ダブルラインボム<二列空爆>』のトリックカードだと思う。
けど気になるのは――
スオウザカ選手のつかったあれはおそらく『暴発』のカード!
本来あれは相手のデッキの中にある一枚のカードをランダムで出させる効果がある。しかもオドのコストはかからない。
相手が有利になるから使いどころはむずかしいけど、この3on3のエンシェント式なら、デッキの代わりに伏せカードが『暴発』する。
『ダブルラインボム』は縦二列に連続爆発を起こす魔法。エンシェントなら、敵にダメージを与えるほか、敵の移動を制限できたりもする。だけどタイミングを狂わされて、スオウザカ選手と審官には当たらず、彼らは爆発列の中央地帯を突破している。
テネレモがすでにボルテンス選手の後方に到着しつつある。これではボルテンス選手は背後をかためる必要がある。
ここは私だったら耐久力のあるガスバリオをスオウザカ選手たち前方にあてて、スピードでテネレモに勝る裏世界の掃除屋を後方に構えるところだと思う。
ボルテンス選手はテネレモは大した脅威とみなかったのか、あるいは無視してよいと判断したのか、ウォリアーを二枚ともスオウザカ選手のほうにあてた。
しかしボルテンス選手のとったこの陣形は、スオウザカ選手のもう一枚のトリックカード次第では、ほとんど絶体絶命にちかい。
いや、スオウザカ選手を褒めるべきか。あえて動きのおそいテネレモを移動させたのも、相手になにかあると考えさせるためだった。
この局面で決まる。
ボルテンス選手の懐に飛び込んだスオウザカ選手。彼が使ったのはトリックカード『クロス・カウンター』。
敵の攻撃にあわせ、カードの攻撃力を増加させた反撃ダメージを与えるトラップ魔法。
裏世界の掃除屋が審官をむかえ撃ち、なぐりかかったと同時にカウンターが炸裂。一瞬で消し飛びカードは破れた。
また、ガスバリオは防御と耐久力はあるが、この至近距離では砲塔が回りきらず大砲を当てることもできないし、スピードも出ない。スオウザカ選手は審官の横にぴったりとはりついて、隙がない。
勝負はあった。審官の銃撃がボルテンス選手のオド防壁に突き刺さり、一撃で決着した。
観客はまばらな反応だが、スオウザカ選手を素直に認めているような様子だった。
とはいえ気持ちはわかるけれど、やっぱりあの審官のカードに、誰もが注目している。
謎のレアカード、か。いいなぁ、羨ましい。
一見するとスオウザカ選手は審官の強力な攻撃力で勝ったようにも思える試合だった。でも、たしかにあの審官は強力だったけど、ボルテンス選手の『<蒸気革命>スチームパンク』によるウォリアーカードの強化でその威力は半減されていた。
『暴発』『クロス・カウンター』『テネレモ』、この3枚ははっきり言って人気のない低価値カード。スオウザカ選手はそれをうまく使って、ちゃんと戦術で勝てている。
私もスオウザカ選手にたいして、たまたまレアなカードを手に入れただけなのかと思ったけど、彼は形勢や状況の判断も優れていた。
最初はなんだか初心者みたいにおぼつかない動きだったのも、相手を油断させる作戦だったのかな。
やっぱり会場で見たあのカードを触る手つきは、並みのプレイヤーのそれじゃなかった。
あの人、ちょっと気になるなぁ。お話とか、してみたいけど……
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