カードワールド ―異世界カードゲーム―

イサデ isadeatu

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王総御前試合編

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 その後みんなで博物館をみてまわって、すぐに研究室へともどった。

 俺はローグと一緒になって、紙やビデオ等の情報をまとめて次の試合の作戦をかんがえる。ハイロのほうでは実際に対戦したりしながらみんなにカードを教えている。
 だがハイロは優しすぎるのか、試合前日の雰囲気にしてはのどかすぎだった。カードの勉強をしている時間より、お菓子を食べたり談笑したり、女子会みたいななごやかなやりとりをしている時間の方がながい。

 俺はそれをちらとみて「ほのぼの、って感じだな」とつぶやく。

「まあ、カードのルールおぼえさえしてくれれば、ね……あれはあれでいいのよ」

 ローグのいうとおり一日ではそれが限度だろうし、あのやり方が今は正解なんだろうな。実際のところミジルはすこし前までかなりカード嫌いだった。カードにさわろうともしてなかった。それでハイロはあれだけ慎重にやっているんだろう。
 
 ミジルが基本をおさえさえしてくれればの話だが、次戦はキゼーノ戦よりかなり楽だ。なんならミジルがなにもしなくてもローグとハイロに任せておけば間違いない。次戦どころか、おそらく決勝まではかなり楽に勝ち進めるんじゃないかと思う。このアマチュアの大会ではキゼーノのチームとその他ではあまりにも差がありすぎる。

 ひと息ついたところでお茶を飲んでいると、ミジルがグチのようなことを言い始めた。
 
「カードゲームってむずかしい単語おおすぎない? メタゲーム? フィニッシャーのサーチ……? わけわかんないよぉ~!」

 そうボヤいて机のうえに覆いかぶさるようにしてうつぶせになる。

「まあ無理におぼえなくてもだいじょうぶだよ。基本的なことだけおさえてくれれば」とハイロ。

 そこに、隣でラトリーと練習をしていたフォッシャが入ってきて、

「フォッシャが教えてあげるワヌ」

 いつのまにかフォッシャも教えられるくらい詳しくなってたのかと、俺はすこし離れたところから聞き耳を立てる。

「まず環境トップ? っていうのは……自然をまもってる団体のリーダーのことワヌ」

「ちがうちがうちがう」

 あまりの見当はずれの知識に、おもわずつっこんでしまった。
 フォッシャはつづけて、

「ドローソース? っていうのは、ドロっとしたソースの……」

「ちがうちがうちがうちがう。なにひとつ合ってない」

 逆にどこでそんなまちがった知識しいれてきたんだよ。

 ミジルが自分のカードを手に持って、

「だからさあ。もうめんどうだからいきなりこのカードで直接ぼーんって攻撃しちゃえばいいのよね。ウォリアーとか無視してさ。だいたいターン制っておかしくない? 相手がうごいてる間こっちはなにもできないっての?」

「そ、そういうものなんだよ」

 勝手を言うミジルに、困り顔のハイロ。

「わるいけどあたしは好きにうごくから」

 そう言ってほんとうにハイロのターンにも関わらず勝手にドローして展開していくミジル。斜め上の発想とはこのことか。

「いやいやそれはルール的にだめだよ……なりたたなくなっちゃう」

「いいじゃないちょっと動いても。だるまさんがころんだじゃないんだから」

 ハイロの教えに、ミジルは文句をたれる。

 めちゃくちゃ言ってるよ……あの人。

「エイトさん……またフォッシャちゃんに負けちゃいましたぁ……」

 ラトリーが目をうるませる。

「ファファファ。フォッシャもレベルアップしたワヌ」

 近寄って、盤面とふたりの残り手札をみると、そこまで実力差はなさそうにおもえた。

「うーん。でもいい勝負だったんじゃない? ラトリーもちょっとずつうまくなってるよ」

「本当ですか? うれしいです!」

「ちょ、ちょっと、勝ったのはフォッシャワヌ!?」

「むむむ……わ、私もカードわからないです……エイトさんおしえてください……」

「いやハイロはわかるだろ……」

「それより、夜ご飯はまだワヌ」

「まだ早いけど、どうしようかしらね。今日はみんなで料理でもつくる?」

「いいですね! そうしましょう」

 そんなこんなで、みんなで晩飯をつくって食べた。
 なんだかにぎやかな食卓で、心がやすらぐ。呪いのカードのことなんて、まるで遠い世界のできごとみたいに思えた。



 その夜、寝る前に自分の部屋でカードの勉強をしているところに、フォッシャが帰ってきた。獣耳としっぽのはえた、人間の女の子の姿になっている。
 ひとりで机の上に二人分のカードをならべ険しい顔をしている俺をみて、フォッシャはぷぷぷと笑う。

「ぷぷぷ……エイト、なにやってるの? ひとりでヴァーサスなんかできないワヌよ」

「ん? ……いやこれは」

「あーわかるわかる。フォッシャが大好きすぎてフォッシャの妄想と遊んでたワヌね。だいじょうぶ、フォッシャはここにいるワヌ~」

「ぜんぜん違う。これは一人回しってトレーニングだよ。自分で一人二役やって対戦することで、自分のデッキの弱点や強みを理解するトレーニングだよ」

「ほえー」

「俺が今持ってる本命のデッキに対して、もう片方のデッキはあえて本命デッキの弱点をつくような構成にしてある。こうやって相性の悪い戦いや、本命デッキにとって嫌な戦法を、あらかじめ想定しておいて対応できるようにする練習なんだ。こうすることで自分のデッキの弱点やバランスの偏りがわかって、さらに洗練されたデッキに作り上げていけるんだよ」

「なるほど……イメージトレーニングの実践版ってことワヌね」

「そういうことだな。でもそれだけじゃない。本命デッキをなんとか崩そう崩そうと色々考えてるうちに、意外とトレーニングデッキの中で面白いコンボのアイデアが浮かんだりするんだ。立派な特訓法さ」

「熱心ワヌねえ」

「ああ。……」

 御前試合、チーム戦だったから勝てたものの、もしキゼーノと一対一だったら……
 わからない。エンシェントではなく、ボードルールなら俺にもある程度技量はある。だけど【魂の測知】をつかってようやく勝てた今の自分であの相手に通用するんだろうか。
 なんにせよ呪いのカードとの対決に向けてもっと知識をふかめないと。
 ハイロもローグも日々成長していってる。

「俺ももっと強くならなきゃな」


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