1 / 169
クリスタルハンター編
オープニング 暁の冒険者
しおりを挟む
―――――――――――――――――――――
カードをはじめたきっかけは、その絵の魅力にとりつかれたからだ。
俺にはすこし年上の兄貴がいた。兄貴とはよくカードゲームをして過ごしていた。仲の良い兄弟だったと思う。俺がわがままを言ってばかりだったけど。
兄貴は優秀なカードゲーマーだった。大会をいくつも制覇して、世界大会でも準優勝。いつかはプロになると言われていた。
ある日のことだった。いつものようにカードをしていると突然兄が、
「お前は大会に出てみたいって思わないの?」ときいてきた。
「僕は楽しいカードが好きだから」と自然に俺は答えたとおもう。
「そうか……おれはお前は勝負師の才能があると思うんだけどな」
「勝負師?」
「ああ。誇りをかけて戦う者にしか得られないものがある。本当の勝負師にしか、見えない世界がある」
「見えない世界……」
「見てみたくないか?」
「うーん……ちょっとは気になるけど……」
「兄ちゃんには見えるの?」
「さあな……どうだろう。でもお前と戦ってると、見えてくる時があるよ。お前はもっと強くなる。もしかしたら、俺と世界大会の決勝で戦うのはお前かもな」
「兄ちゃんにはかなわないよ」
「そんなことはない。兄弟で世界をとってやろうぜ」
その明るい笑顔が印象にのこっている。
それから俺は本当に世界大会をめざして、カードゲームをつづけることになる。
こどものころ、兄貴のエースカード『暁の冒険者』には何度も苦しめられてきた。だけど、いざ味方として使うとこれ以上なくたのもしかった。
実力者とたたかうと必ずある、どちらにも勝敗が転びうるどちらが先に山札から切り札を引けるかという緊張する展開。
状況は、ややこちらが悪い。だがなにかきっかけさえあれば、逆転できる。そんな状況下のなかで。
たのむ。来てくれ。
そう祈って、自分の顔の汗を袖でぬぐい、手をズボンで拭いてから俺は山札に手を伸ばす。引いたカードを裏返して絵をみる。
暁の冒険者がくれば、たちまち戦局をくつがえし、俺は勝利した。
いつしか国内の大会をいくつも制覇して、全米選手権に特別招待されるまでになることができた。
『暁の冒険者』はずっとその戦いを支えてくれた。一緒にたたかってきたかわりのいない存在だった。
あのカードは俺たちの友情の証。ただ強いというだけじゃない、苦しい展開でも戦える不思議な力をくれた。
どんな逆境にも負けない最高のカードゲーマー。
どんなに追い詰められても、知恵と勇気で跳ね除ける。
いつしかそんな風になれたら、このカードに見合うくらい強いカードゲーマーになれたらと思うようになっていた。
―――――――――――――――――――――
カードをはじめたきっかけは、その絵の魅力にとりつかれたからだ。
俺にはすこし年上の兄貴がいた。兄貴とはよくカードゲームをして過ごしていた。仲の良い兄弟だったと思う。俺がわがままを言ってばかりだったけど。
兄貴は優秀なカードゲーマーだった。大会をいくつも制覇して、世界大会でも準優勝。いつかはプロになると言われていた。
ある日のことだった。いつものようにカードをしていると突然兄が、
「お前は大会に出てみたいって思わないの?」ときいてきた。
「僕は楽しいカードが好きだから」と自然に俺は答えたとおもう。
「そうか……おれはお前は勝負師の才能があると思うんだけどな」
「勝負師?」
「ああ。誇りをかけて戦う者にしか得られないものがある。本当の勝負師にしか、見えない世界がある」
「見えない世界……」
「見てみたくないか?」
「うーん……ちょっとは気になるけど……」
「兄ちゃんには見えるの?」
「さあな……どうだろう。でもお前と戦ってると、見えてくる時があるよ。お前はもっと強くなる。もしかしたら、俺と世界大会の決勝で戦うのはお前かもな」
「兄ちゃんにはかなわないよ」
「そんなことはない。兄弟で世界をとってやろうぜ」
その明るい笑顔が印象にのこっている。
それから俺は本当に世界大会をめざして、カードゲームをつづけることになる。
こどものころ、兄貴のエースカード『暁の冒険者』には何度も苦しめられてきた。だけど、いざ味方として使うとこれ以上なくたのもしかった。
実力者とたたかうと必ずある、どちらにも勝敗が転びうるどちらが先に山札から切り札を引けるかという緊張する展開。
状況は、ややこちらが悪い。だがなにかきっかけさえあれば、逆転できる。そんな状況下のなかで。
たのむ。来てくれ。
そう祈って、自分の顔の汗を袖でぬぐい、手をズボンで拭いてから俺は山札に手を伸ばす。引いたカードを裏返して絵をみる。
暁の冒険者がくれば、たちまち戦局をくつがえし、俺は勝利した。
いつしか国内の大会をいくつも制覇して、全米選手権に特別招待されるまでになることができた。
『暁の冒険者』はずっとその戦いを支えてくれた。一緒にたたかってきたかわりのいない存在だった。
あのカードは俺たちの友情の証。ただ強いというだけじゃない、苦しい展開でも戦える不思議な力をくれた。
どんな逆境にも負けない最高のカードゲーマー。
どんなに追い詰められても、知恵と勇気で跳ね除ける。
いつしかそんな風になれたら、このカードに見合うくらい強いカードゲーマーになれたらと思うようになっていた。
―――――――――――――――――――――
0
あなたにおすすめの小説
『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』
夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」
教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。
ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。
王命による“形式結婚”。
夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。
だから、はい、離婚。勝手に。
白い結婚だったので、勝手に離婚しました。
何か問題あります?
家ごと異世界転移〜異世界来ちゃったけど快適に暮らします〜
奥野細道
ファンタジー
都内の2LDKマンションで暮らす30代独身の会社員、田中健太はある夜突然家ごと広大な森と異世界の空が広がるファンタジー世界へと転移してしまう。
パニックに陥りながらも、彼は自身の平凡なマンションが異世界においてとんでもないチート能力を発揮することを発見する。冷蔵庫は地球上のあらゆる食材を無限に生成し、最高の鮮度を保つ「無限の食料庫」となり、リビングのテレビは異世界の情報をリアルタイムで受信・翻訳する「異世界情報端末」として機能。さらに、お風呂の湯はどんな傷も癒す「万能治癒の湯」となり、ベランダは瞬時に植物を成長させる「魔力活性化菜園」に。
健太はこれらの能力を駆使して、食料や情報を確保し、異世界の人たちを助けながら安全な拠点を築いていく。
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。
カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。
ラストアタック!〜御者のオッサン、棚ぼたで最強になる〜
KeyBow
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞
ディノッゾ、36歳。職業、馬車の御者。
諸国を旅するのを生き甲斐としながらも、その実態は、酒と女が好きで、いつかは楽して暮らしたいと願う、どこにでもいる平凡なオッサンだ。
そんな男が、ある日、傲慢なSランクパーティーが挑むドラゴンの討伐に、くじ引きによって理不尽な捨て駒として巻き込まれる。
捨て駒として先行させられたディノッゾの馬車。竜との遭遇地点として聞かされていた場所より、遥か手前でそれは起こった。天を覆う巨大な影―――ドラゴンの襲撃。馬車は木っ端微塵に砕け散り、ディノッゾは、同乗していたメイドの少女リリアと共に、死の淵へと叩き落された―――はずだった。
腕には、守るべきメイドの少女。
眼下には、Sランクパーティーさえも圧倒する、伝説のドラゴン。
―――それは、ただの不運な落下のはずだった。
崩れ落ちる崖から転落する際、杖代わりにしていただけの槍が、本当に、ただ偶然にも、ドラゴンのたった一つの弱点である『逆鱗』を貫いた。
その、あまりにも幸運な事故こそが、竜の命を絶つ『最後の一撃(ラストアタック)』となったことを、彼はまだ知らない。
死の淵から生還した彼が手に入れたのは、神の如き規格外の力と、彼を「師」と慕う、新たな仲間たちだった。
だが、その力の代償は、あまりにも大きい。
彼が何よりも愛していた“酒と女と気楽な旅”――
つまり平和で自堕落な生活そのものだった。
これは、英雄になるつもりのなかった「ただのオッサン」が、
守るべき者たちのため、そして亡き友との誓いのために、
いつしか、世界を救う伝説へと祭り上げられていく物語。
―――その勘違いと優しさが、やがて世界を揺るがす。
MMS ~メタル・モンキー・サーガ~
千両文士
SF
エネルギー問題、環境問題、経済格差、疫病、収まらぬ紛争に戦争、少子高齢化・・・人類が直面するありとあらゆる問題を科学の力で解決すべく世界政府が協力して始まった『プロジェクト・エデン』
洋上に建造された大型研究施設人工島『エデン』に招致された若き大天才学者ミクラ・フトウは自身のサポートメカとしてその人格と知能を完全電子化複製した人工知能『ミクラ・ブレイン』を建造。
その迅速で的確な技術開発力と問題解決能力で矢継ぎ早に改善されていく世界で人類はバラ色の未来が確約されていた・・・はずだった。
突如人類に牙を剥き、暴走したミクラ・ブレインによる『人類救済計画』。
その指揮下で人類を滅ぼさんとする軍事戦闘用アンドロイドと直属配下の上位管理者アンドロイド6体を倒すべく人工島エデンに乗り込むのは・・・宿命に導かれた天才学者ミクラ・フトウの愛娘にしてレジスタンス軍特殊エージェント科学者、サン・フトウ博士とその相棒の戦闘用人型アンドロイドのモンキーマンであった!!
機械と人間のSF西遊記、ここに開幕!!
底辺から始まった俺の異世界冒険物語!
ちかっぱ雪比呂
ファンタジー
40歳の真島光流(ましまみつる)は、ある日突然、他数人とともに異世界に召喚された。
しかし、彼自身は勇者召喚に巻き込まれた一般人にすぎず、ステータスも低かったため、利用価値がないと判断され、追放されてしまう。
おまけに、道を歩いているとチンピラに身ぐるみを剥がされる始末。いきなり異世界で路頭に迷う彼だったが、路上生活をしているらしき男、シオンと出会ったことで、少しだけ道が開けた。
漁れる残飯、眠れる舗道、そして裏ギルドで受けられる雑用仕事など――生きていく方法を、教えてくれたのだ。
この世界では『ミーツ』と名乗ることにし、安い賃金ながらも洗濯などの雑用をこなしていくうちに、金が貯まり余裕も生まれてきた。その頃、ミーツは気付く。自分の使っている魔法が、非常識なほどチートなことに――
出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜
シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。
起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。
その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。
絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。
役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。
春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話
登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる