早野くんと問題だらけのラブコメ

天川希望

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18話 大晦日で問題発生

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 今日は12月31日、大晦日である。この日は恒例の大掃除という行事をどの家庭でも行うのだろう。もちろん、俺もそのうちの一人だ。少しだけ違うところがあるとすれば、この状況である。



「匠君、洗濯終わったから自分で後はやってくれる?」

「早野くん、掃除機かけたんだけど、どこに直せばいいの?」

「早野君、食器洗いは終わりました。どこに片付ければよろしいですか?」

「匠、昼ご飯用のカレーできたよ」 



 頼もしい声が、どこからともなく聞こえてくるこの状況。



「みんなよく働くよね~」

「だよな」



 今度はだらだらとした頼り無い声が聞こえてきた。



「はい、後でしっかりやっときます。あ、りせはそのままよそってくれないか?もう12時だしそろそろ昼飯食うつもりだったから」

「ほいほーい」



 な?おかしいだろ、たまり場にされてやんの。俺の家っていうか俺の部屋っていうか分かんないけど、なんかここマンションにしては広すぎないか?

 というか、何故こんなことになったのかと言うと……





■ ■  ■





時は1日遡り、12月30日。



『プルルルルルルルルル、プルルルルルルルルル、プルルルル』



「はい」

「よぉ、匠」

「人違いです」

「おい、何でだよ」



 俺の軽快なボケに、全力で突っ込んできた康晴。



「何の用だよ、康晴」

「お前年末予定あるか?」

「悪いな、大晦日は毎年決まって大掃除なんだ。ではこれで」

「おい、最近俺の扱いひどくなってんぞ」

「そりゃそうだろ、今何時だと思ってんだよ」

「朝の4時だけどなんかおかしいか?」

「おかしいは!俺というか、一般人は普通に夢の中だ」

「悪かったって、」

「もう切るぞ」



 常識がなっていない康晴に言いたいことを言った俺は、電話をそっと切ろうとした。



「待て待て待て。大晦日なんだが、お前んちで集まって年越ししようって話になってんだよ」

「なに勝手に話し進めてんだよ」

「俺とりせ、花蓮ちゃんに花ちゃん、それから陽菜ちゃんとルンちゃんだ」

「なぁ、俺の話聞いてたか?大晦日は大掃除するって言ってんだろ」

「安心しろ匠、俺とお前は付き合いが長いだろ?そんなこと昔から知っている」

「お前知っててそんなこと言ってんのか?嫌がらせか?俺に恨みでもあるのか?」

「あるにはあるが、そうじゃねぇよ」

「いや今さらっとあるって言ったよね?俺何したの?」



 怖いな。俺は恨まれてるのか?



「今回は、みんなお前ん家の片付けを午前中に終わらせるプランにも同意済みだ」

「なんだと?手伝ってくれんのか?」

「あぁ、俺と陽菜ちゃん以外の4人がな」

「一瞬でもお前が片付けをするようになったのかと思った自分がはずかしい」

「付き合い長いんだから、それぐらい分かるだろ」

「あぁ、そうだな」

「んで、どうなんだよ。心境は変わったか?」

「まぁな、今回は了承するけど、次からは二度とごめんだぞ」

「分かったって」

「切るぞ、おやすみ」

「うっす、おやすみなさいませ~」





 ってな感じで渋々受け入れたんだが、受け入れて正解だった。やっぱりみんな女子ってだけのことはあって、家事の手際がすごくいい。俺1人ならまる1日かかるかとが、半日で終わっちまった。これなら確かに午後からのんびりできるし、とても助かったな。



「「「「「「「いただきます」」」」」」」



「やっぱりうまいな、りせのカレーは。久々に食ったは」

「うまいよな、俺は月2で食ってるけどな」

「おいしいねこのカレー」

「うんうん、このカレーすごくおいしい」

「ほんとだ。おいしいね、りせのカレー」

「確かに美味しいですね。具材が溶けすぎず固すぎない絶妙な煮え具合ですね」

「みんなありがとう。こう面と向かって褒められると何だか照れるな」



 りせ、ほんとに嬉しいそうだな。昔から料理上手だったから、中学んときは何回か弁当作ってもらったっけな。ほんと、懐かしいな。





 昼食を済ませ、後片付けを終えようとしていた。さすがに、今回は俺が片付けている。そして、そんな中で康晴が話し出した。



「明日だけどさ、みんなで近所の神社に行くんだよな」

「うん、そういう話だったでしょ?」

「そうそう、だから着替えと着物持ってきたんだし」

「おい、ちょっと待て、それはどういうことだ康晴」

「お泊りするんだよ」

「は?」

「お前、深夜に女の子が外に出るなんて危ないだろ。そんなことにも気づかずに了承したのか?」

「はい、ごもっともです。ですから今日はお泊りしていっていただいてかまいません」

「よしよし、分かればいいんだよ」

「そういやさ、そんなプランなのによくルンがきてくれたな」

「年が明けるといよいよ勉強以外がすべて制限されるので、今のうちに思い出を作っておきたくて」

「そっか、なんか大変だな」

「いえ、それは大丈夫なのですが。早野君、本日はお招きいただきありがとうございます」

「いや、いいって。俺なんか助けてもらっただけだし」



 なんか、ルンとはすごく変な関係だったんだけど、どうやら今日で友達になれた気がするな。



「なぁ匠、これから何する?」

「みんなでできるものと言えば……定番の人生ゲームとかか?」

「おっ、いいじゃん!人生ゲーム」

「俺も賛成だな」

「私もしたい」

「私も」

「私はルールを知らないのですが……」

「分かった、今から簡単に説明するから分からないことがあったら聞いてくれ」

「分かりました。ありがとうございます」

「うん、じゃぁ言うぞ。まず勝敗の決め方は、最後に持っていたお金で決める。ルールは単純で、普通のすごろくは知ってるか?」

「はい。幼いころに、お兄様と何度かしたことがあります」

「ならいいな、普通のすごろくと同じで、サイコロの代わりに1~10までのルーレットを回して、出た目の数だけ駒を進める。そして止まったマスの指示通りのことをする。そして、そのマスに書いてることが、自分の人生の一部になってるってわけ」

「なるほど、だいたいのルールは把握しました」

「じゃぁ、始めようぜ」

「そうだな」



 そして俺たちは波乱万丈の人生ゲームを始めた。





1ターン目



「じゃぁまずは俺からだな」



 今回の順番は、俺、陽菜、ルン、康晴、りせ、花蓮、花というかんじだ。この順番が、後々の展開に、大きく関わってくるのだった。



「7だな。えーっと何々、庭の草むしりをしてお小遣いゲット。500円をお母さんから貰う」



 これって小学生から始まるんだ。長くなりそうだな。てか、よく見たら

250マスじゃねぇかよ。これ終わんのかな。



「次、私だね。おっ、10だ。テストで満点をとる。お母さんから1000円貰う」

「次は私ですね。9ですね、お父さんが浮気をしていたことが発覚し、離婚。貧乏になる」

「貧乏カードだな。効果は、これからもらうお金すべて半分になる」

「これはきついな」

「次は俺だな、1かよ。えー、親の仕事の都合で、転校。新しい学校で友達作りに成功する」

「友達カードだな。効果は、借金するときに返済額が半分になる」

「お、ラッキー」

「いやこのゲーム友達を何だと思ってるんだ?」

「次は私かな?4だ、運動会のかけっこで1位をとり、お父さんに褒められる」

「運動神経抜群カードだな。ゲーム中、1度だけルーレットで出た目の2倍進むことができる」

「強くない?」

「だな」

「次私だね。10ってことは陽菜ちゃんと一緒だね」

「そうだね」

「最後は私かな。7だから早野くんと一緒だね」

「お、ほんとだな」



 なんてかんじで1ターン目が終了した。





13ターン目



 現在の状況。



早野匠 残り159マス 所持金2億8000万1500円 カード無し 職業大手企業の社員



田神陽菜 残り155マス 所持金7億3200万1000円 カード天才 職業女社長



豊島ルン 残り173マス 所持金600万1050円 カード貧乏、悪運 職業ギャンブラー



上村康晴 残り162マス 所持金2億2000万円 カード友達 職業プロサッカー選手



東川りせ 残り162マス 所持金3億9000万3500円 カード運動神経抜群 職業陸上選手



岡田花蓮 残り209マス 所持金17億3000万円 カード億万長者、不眠症 職業無し



伊藤花 残り187マス 所持金2億8000万円 カード無し 職業キャビンアテンダント



 と、言うかんじだ。いろいろ突っ込みどころがあるが、1つだけ言うとしたら、花蓮は宝くじを3回当てたので、こうなった。



「次は俺だな。8だから、大きなプロジェクトを任され成功する、課長に昇格」

「給料増えるねー」

「そうだな」



 このゲームは、職業の種類によって止まったマスの効果が変わるのである。



「次私だね。6だから……お、結婚マスだ」

「結婚マスは、一番近い人と結婚するんだよね?」

「そうだな、だから……匠と、だな」

「「……」」

「あはは、私早野と結婚しちゃったね」

「そ、そうだな」

「お、おめでとう匠君」

「おめでとう早野くんと陽菜ちゃん」



 花蓮と花が、すごく暗い表情で、俺たちに1万円ずつ渡してきた。



「早野君、2人の様子がおかしいですが大丈夫ですか?」



 そんなの俺に聞かれてもな……



「不倫だな」

「おい康晴これはゲームだからリアルとは関係ないんだぞ」



 まったく、心外だな。俺が不倫なんかするわけないじゃないか。てか、そもそもできる気がしない。



「そうだよね、これゲームだもんね?」



 どうした花蓮?こんどは大きい声なんか出して。



「結婚した2人は、財布が共有になる」

「それ最強じゃね?」

「ま、強いのは強いな」

「だよな」

「次は私ですね。10ですので………ギャンブルに失敗する、1000万円の支出」

「初借金だな」

「そうだな」



 なんか可哀想だな、ルン。



「じゃ、次は俺だな。んっと8だから…あ、俺も結婚マスだ」

「一番近いのはりせだな」

「よろしく康晴」

「おう」

「なんかお似合いなカップルだね。ほんとに結婚したら?」

「そうだな、ほんとに結婚しちまおうかな?」

「バ、バカ!そんな冗談やめてよ」

「悪い悪い」



 俺はこの時、康晴の小さな変化を見逃さなかった。それは、少しだけ照れていたことだ。いつも女といても何ともない康晴が少し照れたんだ。間違いない、こいつはりせのことが…



「次、私だ。私も8だからまた結婚マスだ」 

「結婚している人が結婚マスに止まると、こどもが生まれるみたいだな」

「2人のこどもか、運動神経よさそうだな」

「たしかにね~」

「そうだな、特に俺の子だもんな」

「そうだね、私の子だもんね」

「すげー、見事にハモった」

「何言ってんだりせ、俺の子だからだろ?」

「康晴こそ何言ってるの、私の子だからでしょ?」

「夫婦喧嘩はよそでやれー」

「「「そうだそうだ」」」

「「夫婦喧嘩じゃない!」」

「お、またしても息ぴったり」

「だから違うってば……」

「なんだりせ、その反応。もしかして本当に康晴のことが……」

「ん?りせ、俺のこと好きなの?仕方ねぇな、付き合ってやってもいいぞ?」

「康晴、それ本気で言ってるの?」

「う・そ・だ・よ」

「康晴のバカ」

「怒んなって」

「お前ら本当に仲良すぎ」

「「「「それな!」」」」

「「ちがーう」」

「まただ」



 康晴は、顔は平然を装って笑っていたが、耳だけが真っ赤だった。おい、康晴。今のは俺じゃなくても気づけたやつ絶対いるぞ!



「面白いね、二人とも。次は私だね、6だけど不眠症の効果によって半分になるから3だね。えっと、仕事を始めようと決意する。ルーレットで6以上が出たらランダムで仕事につけるんだって」

「2分の1か、面白いな」

「いくよ」



 ルーレットが勢いよく回る。そして、4、5、6、7と過ぎ、徐々に減速して、止まった。



「1だね」

「ニートから抜け出せずか」

「残念」



 なんだろ、この空気。惜しかったせいで余計に残念さが増している。



「次だね、えいっ!9だから……飛行機が墜落し、命を落とす。ゴールまでスキップする。」

「このゲームは命を落とすとゲームオーバーなんだな」

「ほんとに人生ゲームだな」

「初めて見たね、こういうの」

「でも結構楽しいかもな」

「私、独身のまま死んじゃった」

「おい、落ち着け花。これはゲームだ、現実じゃない」



 そう言うと、花は我に返った。



「そうだね、何だかすごく情が入ってたよ」

「確かに俺もちょっと入ってるかも」



 そういうと、花蓮がすごく暗い顔になった。



「陽菜ちゃんみたいなほうがいいんだ」



 花蓮がそうボソッとつぶやいた。



「ち、違うぞ花蓮。そういう意味じゃなくてな、それだけ熱中してたってことだよ」



 そう言うと、花蓮は分かりやすく顔が明るくなった。



「そんな、やっぱり私じゃ力不足だったのね。しょぼん」

「ややこしいこと言うな!あと効果音自分で言うな」

「ごめんごめん」



 へへへと笑いながら陽菜がそう言った。





 そして、ゲームは以外にも30ターンほどで終わった。みんな70歳前後で病気になってしまったからだ。そして、最終結果はこうなった。



1位 岡田花蓮 所持金78億9800万円



2位 田神陽菜と早野匠の夫婦 所持金52億6700万2500円



3位 東川りせ 所持金18億3000万3500円



4位 上村康晴 所持金11億1100万2000円



5位 伊藤花 所持金2億8000万円



6位 豊島ルン 所持金-20億8999万8950円





 ぶっちぎりの花蓮の優勝だった。りせと康晴は喧嘩で離婚。花蓮はギャンブラー並みのギャンブルをしまくって、見事全て成功。ルンはと言うと、ギャンブルに見事失敗し続け、身投げしてしまった。何か生々しいな、このゲーム。俺苦手かも……。





「お~い匠、もうすぐ年越しだぞ」



 時計を見ると、23時55分だった。



「分かった、すぐ行く」



 俺は、片付けを1分ほどで済ませると、すぐにテレビの前に向かった。



「ねぇ、匠君。来年も一緒に居られるように、手、繋いどかない?」



 後ろのほうで、年越しを待っていた俺に、花蓮がそう言ってきた。



「お、おう。いいぞ」

「ありがとう」



 そして、俺たちは手を繋いだ。離さないように、離れないように、がっちりと。



「10、9、8、7……」



 みんながカウントを始めた。それに合わせて俺たちもカウントする。



「6、5、4、3、2、1」





「「「「「「「HAPPY NEW YEAR!」」」」」」」





「明けましておめでとう、花蓮」

「明けましておめでとう、匠君」

「「今年もよろしくお願いします」」



 こうして俺たちの1年が、新しくスタートした。
 
 今年はもっと楽しくなるといいな。
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