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リンジャンゲルハルト帝国学園の堕天使の溜め息
嘆きの堕天使
しおりを挟むクソ忌々しい。お気に入りの講堂のこの高窓は俺様専用の特等席なのに、今日の雨は湿気るぜ。
おっと、ふはは。肉体もなければ皮膚感覚もないのに迂闊にも……
私は人間家族を失った堕天使だ。それより切ないことなどあるものか。
そう言えば、あの『裁きの日』以前……そうだノアの方舟の日以前は、雨も雪も降らなかったっけ。地表はいつも湿っていたんだった。
その当時は、我々堕天使もあのクソ清どもと同様、全うな天使だった。星々輝く天を駆けて自由を謳歌し、宝石箱のような神の芸術宇宙を賛美し、人間に特別な愛情を抱いて家族関係を結んでいた。
それなのにその家族をすべて神に殺されたのだ。
我々の子孫ネフィリムによって地上に暴虐が満ち溢れた、というのがその裁きの理由だった。 妻や子供達は泣き叫んで夫である私に救いを求めたが、私はあの大雨を止められなかった。我々にはどうすることもできなかった。我々には神の裁きを変えることはできない。四十日四十夜雨は降り続け、水没する地球の姿を天から眺めるしかなかった。
クソ忌々しい。我々は人間と違って完全な生き物として造られているから、ボケたり記憶喪失などあり得ない。いつまでもいつまでも覚えているのだ。
しかも、降り続ける大雨の中でもノアの方舟は木の葉のように揺れながらも悠々と浮いているように見えたのだ。
だから、だからだからだから、だ、か、ら、切なさの余りに……私は許されない反逆者になったのだ。
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