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リンジャンゲルハルト帝国学園の堕天使の溜め息
侮り
しおりを挟む「考えは纏まったかね、スメラギ」
ふふ、白猫のようなアルビノ皇。神は外見を見ないというが、我々堕天使は違うもんな。我々が古代の人間と家族関係を持ったのは、人間の可愛いらしさに気づいたからだ。その外見も内面もだ。外見で判断することはないなんて、そりゃあ能力や精神を見るからだ。クソ清い奴らも、いつなんどき気づくことになるかもしれないが、人間の愛らしさって罪だよな。しかもアルビノとなれば確率的に貴重だ。
「はい。カインはどんな仕事についても、その精神は多分変わらなかったと思います。アベルも同様です」
「ではその精神とは何だね、ゲラン」
今日は進んで挙手するんだな、ゲラン。ゲランとデュアルメンのどちらがタイプか。手玉に取りやすいのはゲランか。だとしてもできればデュアルメンを誘惑したい。彼は司教の位階を持つ神学者。何とか仲間に引き入れたい、スカウトしたい。むふぅ。ファウストの魂を欲したメフィストフェレスの気持ちが私にはよぅぅく分かる。対してゲランは伸び盛りだ。付け入る隙も満載だ。
「先ほど言い忘れましたが、崇拝に関することですから、二人の違いは、神を軽んじる精神と神への感謝とか敬虔な信仰心とか、そういったものだと思います」
「神を侮り軽んじる精神。これは科学の発展した現代に見受けられる最も顕著な精神だ。普段の君たちにも見受けられるのではないか」
うんうん、子供たちは侮る生き物だ。はっうえぇ、神を侮る私の精神が不快そのものですってぇ。お天使様ったら。ふ、ふーん。クソ清いあなた様が不快がろうが痒がろうが闇から人間に絡みコースアウトへ導く、それが堕天使の存在意義というもの。集団ストーカーを使ってでも狙った相手を落とすのが、我々堕天使の一種の矜持というやつですわ。ふわははは。
はぁぁ、悪に意義などないぃ、盛大な欺瞞ではないかってぇ。シェェ……仰い。仰い。人間には一切聞こえないから何を仰られても平気。
「僕は軽んじません」「怖いよ。どんな祟りがあるか分からないじゃないか」「ちょっと待て、妬む神とは書かれているけれども祟るかなぁ」「神が妬むと祟りになるとか。もしかするとチンコ腐るかも」「ひぇえっ。怖いこと言うなよぉ。神様っ、今までのことはアガペーで大目に見てほしいです」「ねえ、アガペーっていくら出せばいいの」
軽んじてはいないが侮ってはいるのだな。ふははは。いや、侮りにも気づかないのか。神に祟られるぞ、生け贄ども。
んん、天の父は祟らないと、はいはい、そうですね。歪んだことを言うものではない、祟りもしなければ生徒たちも生け贄ではないと。はいはい、はいはい、五月蝿いですよ、クソ清いお天使様。
大体、生徒達を生贄扱いしているのはデュアルメンであって私ではございませんよ。常識的で面白くないご意見有り難いですが、却下です。
確かに天の父は憐れみ深く、祟りはしない。寧ろ大いに許す神だ。が、地上の神々の代表格サタン、つまりルシファーは祟ることにしているのですよ。地上の神々とは我々堕天使のことですがね、祟るのは何故だかお分かりでしょう。宗教も教育も医療も国防も他の全てのカテゴリーにおいても、人間社会はカネで成り立っているからですよ。カネこそ人間の神であって、その背後には我々堕天使がいる。本物の神である天の父は侮られる一方だ。
え、「お金は身の守り」だと聖書に書かれているのですって。そりゃそうですけどね。そうは言っても、ふ、ふーんだ。
「僕、お小遣い寄付する」「ホーニッヒ、いくらかのお小遣いを寄付したくらいで敬虔な信仰心を示せるかな」「いくらならいいの」
なんて可愛い子供たち。父神の歓心をお金で買えると思っている。は、そう思わせたのはお前たち堕天使の罪だって……ぬぉほほほ。我々は真理の代わりに多くのもので人間を縛る戦略を採っているので御座いますよ。多くのパラダイムで社会を塗り固めて人間を煩わせ、神から離れさせるのが目的ですがね。
はいぃ、その戦略こそ堕天使の滅びの理由ですと。お天使様ぁ、敬虔な崇拝が父神を喜ばせるのは重々承知しておりますよ。侮る者は退けられることも。ですけれどね、そうであっても代理神の乱立こそ、父神の名をボカせる有効な手段には違いないですからねぇ。キリストだって十字架の姿にしてしまえば偶像ですからね。私の愛するロザリオですよ。
応援ありがとうございます!
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