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79 驚くことばかり
しおりを挟む「波流君のことじゃないんだけどね、お母さんの若い頃に同じぐらいの年齢の子が強姦されたんだって。だから心配してるんだ」
僕はぎょっとした。チョコちゃんと付き合ってからぎょっとすることばかり続いている。
「強姦って……」
恐ろしいフレーズだ。なるべく口にしたくない。
「だから、波流君じゃないってば。道を歩く時も知らない人は無視しなさいとか、可愛くして外出したらいけないとか。お母さんが仕事に行ったあとは出掛けるなとか」
「愛されているじゃないか」
「愛情かな。波流君と付き合ってから急にうざくなって」
急に、か……
「チョコちゃんが魅力的な女の子だって気づいたんじゃない」
「そかな、へへ。魅力的かな」
「魅力的だよ」
本心から言える。
「魅力的だから、僕もお母さんに賛成だ。あんまり可愛くして出歩くと心配だ」
「へへ、もうダメだ。溺愛だ。チョコはマスクが真っ赤に染まる」
「ははは、鼻血か。もったいないから出さないで」
繋いだ手を振る。
「溺愛されてる」
チョコちゃんの笑顔から憂いが剥がれ落ちた。片手で頬を触ってみる。
「すき焼き」
チョコちゃんも応える。
「スキップ」
それだけでも僕は幸せな気分になった。
後ろから声がした。
「なあに、すき焼きとスキップって」
チョコちゃんママだ。
「お、お母さん、立ち聞きしたらダメ」
「いいじゃない。あんたは私の子だもの。なに、すき焼きとスキップって、好きって言えば良いじゃない」
僕たちは顔を見合わせた。
「それよりね、コマルナも下火になっているらしいから、と言うより宮古島はまだ感染者がいないから、波流君が良いなら家でレズビアンごっこをしても良いわよ。但し、私の前で」
「本当ですか」
青天の霹靂。ぎょっとすることばかり続いたけれど、驚くことはまだあったんだ。レズビアンごっこのお墨付きをもらえるなんて。
「YouTube動画みたいに撮影しても良いなら」
「それは……」
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