中学生溺愛王子はお化粧男子 777文字小説

藤森馨髏 (ふじもりけいろ)

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99 窓辺の席

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窓辺のテーブルにスックと立ったスタンド型のアイスクリームとソフトクリームのパフェは、夏を感じさせる。


「わお。有り難う、波流くん。美味しそう」


イチゴをチョコちゃんのパフェに乗せた。僕は金持ちになりたい。


「イチゴだけ貢ぐ」

「あははは、溺愛体質。でも、いいの、本当に」

「何が」

「イチゴ、貰っても」

「イチゴでそんなに喜ぶんだ」

「ふふふ、だって滅多に食べられないって言ったさ。コンビニで良く見るけどさ、高いよね、イチゴのやつは。イチゴ農家に嫁に行くかぁってくらい、イチゴ屋さんは儲かるはずよ」

「チョコちゃん、イチゴ農家に憧れている訳」


イチゴだけでも会話が弾む。

夢も膨らむ。

帰りがけに近くのスーパーでイチゴを買ってあげようかと思うくらい、チョコちゃんを喜ばせたい。

将来は旅行にも行こう。
海外が良いな。
国内から始めるかな。
頑張って働いて貯金して、それで二人で遊ぼう。

溺愛王子って、貢ぐ体質ってことか……


「ふふ、美味しい。あまぁい」


確かに甘い。僕もチョコちゃんに甘いけど、チョコちゃんはもっと甘い。意味が違うけど。


「チョコちゃんがイチゴ農家の嫁になりたいのなら、僕たち婚約はどうするの」

「えっ、忘れていた」

「ははは、忘れるくらい軽いことなんだ。やっぱり婚約破棄が前提だな」

「ち、違う、違う。チョコは目の前のことに直ぐに興奮してもうラリパッパだよ」


なに、ラリパッパって……


「何も考えられないよ。波流君と一緒にいるだけで良いよ。あ、違う。やっぱり婚約するぅ」

「婚約破棄に憧れているからだろ」

「違うよ。誰かに奪われないようにだよ。大切な人をさ」


うわあ、萌えっ……

チョコちゃん、そのフレーズは『オトコゴロシ』だ。

僕はメロメロだ。

鼻血は出ないまでも……

僕は席を立ってチョコちゃんの側に移った。驚くチョコちゃんを一瞬ハグする。

軽くのつもりだったけど、思わずぎゅっとした。

窓辺の席だ。

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