つまずいたら異世界へ

藤森馨髏 (ふじもりけいろ)

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第九章 二日目の午後

(4)婚約破棄に関するサザンダーレ王国王妃の秘密

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『俺TUEEEサザンダーレ王』が王位略奪してから今までの七十年。私の夫、現国王が継承してから三十年…此のサザンダーレ王国の黄金時代は過ぎ去った。サザンダーレ二世は跡継ぎを望めぬ。

私の子供たちは何処にいるのであろう……私の子供たちは何方かに育てられているのであろうか……あれから十四年、私の紅葉と銀杏はどうしているのであろう。ただただ元気でいてほしいと望むばかり……

此の国の隅々を探しても見つからなかったのは、他国に売られた可能性もあると、スメタナ教国にも使いを出し、当時紛争中だったリンジャンゲルハルト帝国にも間者を使わしたけれど、ええ、ケミヒス文明国が大爆発を起こして滅んだ。あの事件で世界はあの事件で大騒ぎになって、私の赤ちゃんたちの行方は……ケミヒスで爆破に巻き込まれたのではないかと噂され……

いいえ、生きています。必ず見つけ出しますとも。王妃である立場におりながら自分の子供たちの行方さえも探し出すことができぬなどど、あってはならぬ。

私は王妃……罪を犯して手に入れた輝く立場だが……

そう……

二十六年前にあの方の手に入れるべきだった立場に私がいる……

私も悔しかった。リンジャンゲルハルトには今でも腸が煮えくり返る。

あの日……タランの森の泉に水浴びに行った時……豪族の娘さんの一行と出会った。其の方は現国王である私の夫の婚約者だったマヒルナ様。タランの泉で水浴びをしていたの。ドラゴルーンの水呑場の泉で水浴びをすると美しさに磨きがかかるのです。私も其処で水浴びするのが好きだった。パン屋の娘の私が街の他の娘たちに負けない美しさを手に入れたのは、ドラゴルーンの水呑場で水浴びをしていたから……

そして……あの出来事が……マヒルナ様の一行四人と私はリンジャンゲルハルトの兵士たちが近くに潜んでいるとは知らず、裸になって水浴びしていた私たちは……

あの出来事でマヒルナ様は修道院にお隠りなさって……未だに……

私はパン屋の娘。隙をみてパン切りナイフを振り回して逃げ……そして王様に出会った。王様は狩りに来られて私の叫びを聞き……転んだ私に出会い……婚約者の危機を知った。

『私はパン屋の娘でございます。パン切りナイフで応戦して逃げて参りました。ですが、あの方は水浴びの最中でしたので既に……早く……早く助けてあげてください。早く……』

王様が泉に行かれた時にはマヒルナ様の姿はなく、ダンジョン近くの木の枝に王様が贈った高価な髪飾りが下げられていたとのこと。

其れでタランの森の泉は立ち入り禁止区域になった。

私はパン屋の娘に生まれたことを天から授かった宝だと認識できるようになった。パン切りナイフが有難い宝に思えたものだ。

国議会は直ぐにサザンダーレ王国内から美女を幾人か選出して、王様は私を選んだ。

『あの日出会った己自身で己が身を救った気丈な娘』

私はガラスの靴を履いて王妃となり、十一年経って双子を産み、其れは其れは美しい女の子を二人。拐われた双子の赤ちゃん……

『王様、私はドラゴルーンの泉で水浴びするのが好きだったのでございます。私だけでなく、生まれた子にも御利益があるとは……ドラゴルーンの泉のパワーでございます。王様……王様も是非、ドラゴルーンの泉で水浴びをなさったら如何でございましょう』

『ドラゴルーンに呪われたサザンダーレ一族の私がか』

私たち夫婦の間にはもう子供は出来ぬ。努力はしたが……王様はお年で、呪われた立場であるから、子孫を残すことに抵抗を感じておられる。

私の願いは二つ。私の子供を探し出すこととリンジャンゲルハルト帝国の滅亡。

滅亡……やがて開戦……リンジャンゲルハルトの男を皆殺しにして妊娠中の女を管理し、男の子が生まれたら殺す。

王様はそう長くはないであろう。此のサザンダーレ王国は私の独裁国になるのも時間の問題。大臣議会に力はないのですもの。ほっほっほ……此の国は、パン屋の娘の国になるのよ。いいえ、此の世界が、パン屋の娘のもの。私はリンジャンゲルハルト帝国を潰す。後数日で開戦……其の前に私の子供を探し出さねば……リンジャンゲルハルト帝国に忍び込ませた数十名の間者は何をしておる……

婢呼眼軍師長……其方はドラゴンダンジョンを潰しドラゴルーンを殺して、ドラゴルーンの褌で世界制覇を狙うリンジャンゲルハルト帝国を叩き潰すのだ。王妃の願いを叶えよ。其方も言ったではないか。『憎きリンジャンゲルハルト帝国の男どもを皆殺しにしてやる』と……其の一言が其方を気に入った理由。何でもくれてやるぞ。


***

ふふふ……面白い独り言を聞いた
何でもくれてやると言ったか。何でもくれてやると……其の魂もくれてやると言うのかな。王座も……命も……全てを……婢呼眼軍師長に………
婢呼眼にとっては垂涎ものだ。ヨダレを垂らかして欲しがっているわ。婢呼眼が強欲者だと知っておろうに……理由は思い当たる。此のツィフィーネ様を信じろ。信じて滅べ……美しく滅べ。
ふわははは……面白い。何でもくれてやるか……ふわははは……


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