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第十一章 二日目の深夜
(1)あなたを守る (ちょっとgirlslove)
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ラーポはソゴドモ村の廃屋にいた。シーツは日向の匂い。暖炉の炭は埃にまみれておらず黒々と新しい感じがした。
一年に何度かBBQするからわかるんだ。やっぱり此処にいたのよね、私たち。あの夜……
そうだよ。ケイツアーは此処にいたんだよ、ラーポ……
ケイツアーはダンジョンを出られるんだよ……ガリラヤとシノビはリンジャンゲルハルトの人間なのだ……
ああ……ケイツアー……やっぱりリンジャンゲルハルトのスパイなのね。そして私を騙したのね。あの夜は何故あのような死に目に遇っていたのかわからないけれど、スパイは危険な仕事だからよね……
危険な仕事……理解してあげられなくてごめんなさい。育った環境が違えば考えも違うのは当たり前よね。ケイツアー……やっぱり会いたい……
そうだろうそうだろう……そうでなければ面白くない。眠れ、ラーポ。真っ当過ぎて苛つかせる者よ。お前にはドラゴンチートの軍靴がある。お前は空を飛べるのだ。何処に行けば目的の人間に会えるのかを知らないだけ。さぁ眠れ。此のツィフィーネ様が運んでやろう。お前は空を飛ぶ。歪め……
ラーポはツィフィーネに唆されてうとうとと眠りに入った。
ううん……ケイツアー……会いに行くからね。
ラーポの身体がふわりと宙に浮く。ドアが開いた。
今、会いに行く……
濃紺の夜空に星星が煌めく。冷えた空気の中で霊者の眼にはラーポの身体が炭の火のように明々と燃えて見える。其の炭火は夜空を過った。
ラーポ、宮殿だ。リンジャンゲルハルト帝国の宮殿だよ……
唆されて、ラーポはうっすらと眼を開ける。
きらびやかな宮殿は磨かれた大理石の床に赤い絨毯が敷かれ、硝子の凝ったデザインのランプが煌めく。其の灯りの中に異質な色があった。ラーポは驚いて異質な灯りに近づく。
「電気が通っているの……」
誰にともなく出た独り言だが、返答があった。
「電気を知っているの……」
振り向くと、灯りに囲まれてきらきらと細かく光る薄絹を纏った白い花のような少女が立っている。プラチナの長い髪が肩から水のように艶かに流れ落ちる。リンジャンゲルハルト帝国の王女リンジョネルラ。
「ケイツアー……」
名前を呼ばれた王女は感電したようにびくっと肩を震わせた。
「ケイツアー……会いに来たよ」
ラーポの額が金色に光っている。
「ラーポ……」
ラーポは王女リンジョネルラに走り寄ってハグした。プラチナの髪を撫でる。頬を頬にすりすりする。近くで見ると、虹色の光彩はランプの光を受けて温かな色味に輝いている。口づけした。小鳥のように唇を合わせただけの幼いキス。ラーポの腕にリンジョネルラの激震が走る。ラーポは反射的にハグの腕に力を込めた。
「ケイツアー……大好き。とってもとっても愛しているの。こんな気持ちは初めてよ。どうしてなのか不思議なんだけど、あなたのことを思うだけで心が動揺するの」
「わ、私も同じです。あなたのことを思うと動揺するの。私のことをケイツアーと呼ぶのはあなただけよ、ラーポ……」
「ごめんなさい、ケイツアー……私、あなたにもっと優しくするね。約束よ。ケイツアーがリンジャンゲルハルトだと知っても気持ちは変わらない」
ラーポは右手の小指を出した。リンジョネルラも小首を傾げながら恐る恐る真似をする。ラーポは其の白い小指に小指を重ねて指切りげんまん嘘ついたら針千本飲ますと心に呟く。うふふ……とリンジョネルラが綻ぶ。小指を絡めて小さく振ることが楽しい。目の前で花がふわりと咲いたのを見たラーポの頬も綻んだ。
二人の背後で爆音がした。驚いてベランダに駆け寄る。遠くの海で火の手が上がっている。
「エスメラルダ軍の襲撃ぃ……」
「ぇ……サザンダーレ王国の……」
「知り合いなの……」
「全然。全く。知らない。けど、大丈夫。ケイツアーは私が守る」
「嬉しい……私は記憶がないの。あの夜、ラーポに助けられたことだけを覚えていて……」
記憶がない……だからケイツアーは檻の中で私を拒んだのね。私をわざと動揺させたのではなかったのね。疑ってごめん。そうよね、奴隷人形に監視されもいるし……でも今は誰もいないから素直なケイツアー。私の大好きなケイツアー……
「宮殿まで来るかなぁ……」
「エスメラルダ将軍は海軍だから、海だけ……海賊みたいな将軍なの。リンジャンゲルハルト帝国の強敵なの」
ああ、聞いたことある。サザンダーレ王国のエスメラルダ将軍とスメタナの魔女がリンジャンゲルハルト帝国の女を奪いあったという話。エスメラルダ将軍がケイツアーを見たら奪おうとするかもしれない。私が守る。エスメラルダ将軍からもスメタナの魔女からも、全てのものから守ってみせる。
一年に何度かBBQするからわかるんだ。やっぱり此処にいたのよね、私たち。あの夜……
そうだよ。ケイツアーは此処にいたんだよ、ラーポ……
ケイツアーはダンジョンを出られるんだよ……ガリラヤとシノビはリンジャンゲルハルトの人間なのだ……
ああ……ケイツアー……やっぱりリンジャンゲルハルトのスパイなのね。そして私を騙したのね。あの夜は何故あのような死に目に遇っていたのかわからないけれど、スパイは危険な仕事だからよね……
危険な仕事……理解してあげられなくてごめんなさい。育った環境が違えば考えも違うのは当たり前よね。ケイツアー……やっぱり会いたい……
そうだろうそうだろう……そうでなければ面白くない。眠れ、ラーポ。真っ当過ぎて苛つかせる者よ。お前にはドラゴンチートの軍靴がある。お前は空を飛べるのだ。何処に行けば目的の人間に会えるのかを知らないだけ。さぁ眠れ。此のツィフィーネ様が運んでやろう。お前は空を飛ぶ。歪め……
ラーポはツィフィーネに唆されてうとうとと眠りに入った。
ううん……ケイツアー……会いに行くからね。
ラーポの身体がふわりと宙に浮く。ドアが開いた。
今、会いに行く……
濃紺の夜空に星星が煌めく。冷えた空気の中で霊者の眼にはラーポの身体が炭の火のように明々と燃えて見える。其の炭火は夜空を過った。
ラーポ、宮殿だ。リンジャンゲルハルト帝国の宮殿だよ……
唆されて、ラーポはうっすらと眼を開ける。
きらびやかな宮殿は磨かれた大理石の床に赤い絨毯が敷かれ、硝子の凝ったデザインのランプが煌めく。其の灯りの中に異質な色があった。ラーポは驚いて異質な灯りに近づく。
「電気が通っているの……」
誰にともなく出た独り言だが、返答があった。
「電気を知っているの……」
振り向くと、灯りに囲まれてきらきらと細かく光る薄絹を纏った白い花のような少女が立っている。プラチナの長い髪が肩から水のように艶かに流れ落ちる。リンジャンゲルハルト帝国の王女リンジョネルラ。
「ケイツアー……」
名前を呼ばれた王女は感電したようにびくっと肩を震わせた。
「ケイツアー……会いに来たよ」
ラーポの額が金色に光っている。
「ラーポ……」
ラーポは王女リンジョネルラに走り寄ってハグした。プラチナの髪を撫でる。頬を頬にすりすりする。近くで見ると、虹色の光彩はランプの光を受けて温かな色味に輝いている。口づけした。小鳥のように唇を合わせただけの幼いキス。ラーポの腕にリンジョネルラの激震が走る。ラーポは反射的にハグの腕に力を込めた。
「ケイツアー……大好き。とってもとっても愛しているの。こんな気持ちは初めてよ。どうしてなのか不思議なんだけど、あなたのことを思うだけで心が動揺するの」
「わ、私も同じです。あなたのことを思うと動揺するの。私のことをケイツアーと呼ぶのはあなただけよ、ラーポ……」
「ごめんなさい、ケイツアー……私、あなたにもっと優しくするね。約束よ。ケイツアーがリンジャンゲルハルトだと知っても気持ちは変わらない」
ラーポは右手の小指を出した。リンジョネルラも小首を傾げながら恐る恐る真似をする。ラーポは其の白い小指に小指を重ねて指切りげんまん嘘ついたら針千本飲ますと心に呟く。うふふ……とリンジョネルラが綻ぶ。小指を絡めて小さく振ることが楽しい。目の前で花がふわりと咲いたのを見たラーポの頬も綻んだ。
二人の背後で爆音がした。驚いてベランダに駆け寄る。遠くの海で火の手が上がっている。
「エスメラルダ軍の襲撃ぃ……」
「ぇ……サザンダーレ王国の……」
「知り合いなの……」
「全然。全く。知らない。けど、大丈夫。ケイツアーは私が守る」
「嬉しい……私は記憶がないの。あの夜、ラーポに助けられたことだけを覚えていて……」
記憶がない……だからケイツアーは檻の中で私を拒んだのね。私をわざと動揺させたのではなかったのね。疑ってごめん。そうよね、奴隷人形に監視されもいるし……でも今は誰もいないから素直なケイツアー。私の大好きなケイツアー……
「宮殿まで来るかなぁ……」
「エスメラルダ将軍は海軍だから、海だけ……海賊みたいな将軍なの。リンジャンゲルハルト帝国の強敵なの」
ああ、聞いたことある。サザンダーレ王国のエスメラルダ将軍とスメタナの魔女がリンジャンゲルハルト帝国の女を奪いあったという話。エスメラルダ将軍がケイツアーを見たら奪おうとするかもしれない。私が守る。エスメラルダ将軍からもスメタナの魔女からも、全てのものから守ってみせる。
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