神殴り代行 異世界放浪記 〜俺の拳は神をも砕く〜

文字の大きさ
2 / 70
第1章 世界の終焉

第2話 日常

しおりを挟む
◆曇り空の朝

 空は薄い雲に覆われ、ぼんやりとした光が街を照らしていた。
 気温はやや肌寒く、秋の気配が漂っている。

 レンは、黒い傘を片手にマンションの扉を開けた。
 黒のカバン、紺のスーツ。規則正しい朝のルーチン。

 ――目的地は会社。
 徒歩15分。公園を抜けるルートが最短だ。

◆管理された自然

 公園に入ると、黄色く色づいたイチョウの葉が風に舞っていた。
 池の畔では紅葉が朱く染まり、まるで観光パンフレットのような美しい風景を作り出している。

 しかし、レンの目には、その景色がどこか作られたもののように映った。



 人工的に植えられた木々、計算された配置、適切に管理された落ち葉。
 本物の自然が持つ、予測不能なエネルギーとは何かが違う。

 (こんな感覚を持つようになったのは、いつからだろう?)

 最近、妙な違和感を覚えることが増えていた。
 当たり前の日常の中に、ほんのわずかだが、何かがズレているような感覚。

 それが何なのかは、まだわからない。

 ――気のせいかもしれない。

 そんな考えを振り払うように、レンは公園を抜け、街へと足を踏み出した。

◆未来都市の光と影

 無音の電気自動車が行き交う大通り。
 排気ガスの匂いはなく、整然としたビル群が並ぶ。

 30年前、世界は石油戦争で荒廃していた。
 しかし、日本は新エネルギー「フォース」を発見し、戦場にはならなかった。
 その結果、この都市はかつてないほどの繁栄を迎えた。

 だが、最近、この都市には“異変”が起きている。

 連日ニュースを賑わせる**「未確認生物」の目撃情報。
 高まる「フォース能力開発」**の賛否。
 そして、行方不明者の増加――。

 表面上は何も変わらないように見えるが、
 静かに、しかし確実に何かが動いている気がする。

 レンは小さく息を吐き、会社の前に立つ。

 ――40階建てのオフィスビル。

 何の感慨もなく、彼はその中へと消えていった。

◆職場の静寂

 チン――

 エレベーターのドアが開く。31階。

 壁に掲げられた社名。
 レンは社員証を取り出し、端末にかざす。

 ピッ――

 静かにドアが開く。
 仕事が始まる。

◆経理部の日常

 室内には、すでに一人の男がいた。

 「おはようございます」
 「ん、おはよう」

 矢部部長。いつもレンより早く出社している。
 一度、7時半に来たことがあったが、その時すでに新聞を読んでいた。
 一体何時からいるのか、誰も知らない。

 レンは席につき、パソコンを立ち上げる。
 スケジュールとメールを確認しながら、今日の仕事を整理する。

 経理部の仕事は多岐にわたる。
 会計決算、税務申告、予算管理、資金繰り……。
 事務的な作業の中にも、緻密な判断が求められる仕事だ。

 しかし、レンは思う。

 (……この仕事、向いているのか?)

◆同僚たち

 バタン!

 勢いよくドアが開き、明るい声が響いた。

 「おはようございます!」

 黒髪ショート、スラリとした体型。
 爽やかな笑顔で入ってきたのは、木下恭子(キョンちゃん)。

 この部署唯一の女性社員で、冷静な仕事ぶりと天真爛漫な性格を併せ持つ。
 今日の服装は、水色のワイシャツに紺色のジャケット、タイトスカート。



 (……やっぱり、似合ってるな)

 そう思った瞬間――

 「おはようございます!!!!」

 耳をつんざく大声が響いた。

 **――小川大樹(新人)**の登場である。

 典型的な体育会系。
 声がデカい。身振り手振りが大きい。そして頭を使わない。
 レンが最も苦手なタイプだった。

 (……一年かけて矯正するしかないな)

 周囲の社員たちも、朝からそのテンションについていけず、微妙な空気になっている。

 さらに数分後――

 ドン!

 「いたぁぁぁ!!」

 頭を扉にぶつけながら入ってきたのは、吉田早織。

 元バレーボール選手で、身長200cmの巨体を誇る。
 力強い腕、鍛えられた足、バストはもはや胸筋と化している。

 だが、意外にもファッションに気を使っており、今日はキョンちゃんとお揃いの服装だった。

 「やだ、キョンちゃん~かぶっちゃった~!恥ずかしぃ~」

 そう言いながら、レンをチラリと見る。

 (……なぜ俺を見る?)

 レンは深く考えないことにした。

◆静かなる違和感

 日常は、今日も変わらず過ぎていく――はずだった。

 だが、レンの中には、漠然とした違和感があった。

 ――最近、世界の歯車が少しずつズレ始めている気がする。

 未確認生物の目撃。
 フォース能力開発を巡る不穏な動き。
 そして、行方不明者の増加。

 気のせいなら、それでいい。

 だが、この違和感は、ただの思い過ごしなのだろうか?

 静かに時計の針が9時を指す。

 「……嫌な予感がする。」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

『異世界ガチャでユニークスキル全部乗せ!? ポンコツ神と俺の無自覚最強スローライフ』

チャチャ
ファンタジー
> 仕事帰りにファンタジー小説を買った帰り道、不運にも事故死した38歳の男。 気がつくと、目の前には“ポンコツ”と噂される神様がいた——。 「君、うっかり死んじゃったから、異世界に転生させてあげるよ♪」 「スキル? ステータス? もちろんガチャで決めるから!」 最初はブチギレ寸前だったが、引いたスキルはなんと全部ユニーク! 本人は気づいていないが、【超幸運】の持ち主だった! 「冒険? 魔王? いや、俺は村でのんびり暮らしたいんだけど……」 そんな願いとは裏腹に、次々とトラブルに巻き込まれ、無自覚に“最強伝説”を打ち立てていく! 神様のミスで始まった異世界生活。目指すはスローライフ、されど周囲は大騒ぎ! ◆ガチャ転生×最強×スローライフ! 無自覚チートな元おっさんが、今日も異世界でのんびり無双中!

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

俺得リターン!異世界から地球に戻っても魔法使えるし?アイテムボックスあるし?地球が大変な事になっても俺得なんですが!

くまの香
ファンタジー
鹿野香(かのかおる)男49歳未婚の派遣が、ある日突然仕事中に異世界へ飛ばされた。(←前作) 異世界でようやく平和な日常を掴んだが、今度は地球へ戻る事に。隕石落下で大混乱中の地球でも相変わらず呑気に頑張るおじさんの日常。「大丈夫、俺、ラッキーだから」

異世界亜人熟女ハーレム製作者

†真・筋坊主 しんなるきんちゃん†
ファンタジー
異世界転生して亜人の熟女ハーレムを作る話です 【注意】この作品は全てフィクションであり実在、歴史上の人物、場所、概念とは異なります。

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。 間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。 多分不具合だとおもう。 召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。 そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます ◇ 四巻が販売されました! 今日から四巻の範囲がレンタルとなります 書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます 追加場面もあります よろしくお願いします! 一応191話で終わりとなります 最後まで見ていただきありがとうございました コミカライズもスタートしています 毎月最初の金曜日に更新です お楽しみください!

処理中です...