神殴り代行 異世界放浪記 〜俺の拳は神をも砕く〜

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第1章 世界の終焉

第7話 漆黒の狼

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◆雨と闇に包まれた逃走劇

 激しい雨が、東京のビル群に降り注いでいた。

 その雨の中、一人の女性が必死に走る。
 幅4メートルほどの細い路地裏。

 白いシャツと黒いジャケット。
 長く伸びた黒いパンツが雨水に濡れる。

「ハァッ! ハァッ! ハァッ!」

 息が乱れ、心臓は今にも張り裂けそうだった。
 金髪のショートカットが汗と雨で張り付き、瞳には恐怖の色が滲んでいる。



「なんで……私が、こんな目に……!?」

 ――黒木メイ。
 軍の諜報部に所属する女性兵士。

 任務は単純だった。
 "未確認生物の観測"

 遠隔から「双眼鏡型フォース測定器」を使い、異形の能力値を記録する。
 それだけの、安全な任務――だったはず。

 しかし、彼女は今、命を賭けて逃げていた。

◆死の影

「ドガン!!!」

 後方で、何かが壁に激突する音。
 ビルの壁が崩れ、巨大な影が路地裏を塞いだ。

 メイは恐る恐る振り返る――

 そこにいたのは、"漆黒の狼"

 ――否。
 その姿は、狼の「化け物」だった。

 身長10メートルを超える漆黒の毛皮の塊。
 目は血のように赤く輝き、口からは黒い瘴気とヨダレが滴る。

 そして、異様なことに――

 狼の頭は、3つあった。

 三つの口がそれぞれ牙を剥き、
 どの頭が"獲物"を食べるかで争っているかのように唸る。

「ひっ……!!」

 恐怖でメイの身体が硬直する。
 その様子を見て、狼の顔が不気味に笑ったように歪んだ。

 真ん中の頭が、大きく顎を開く――

喉の奥で、紅蓮の炎が燃え滾る。

◆決死の反撃

「……っ!」

 メイは即座に右太ももに装備していたマグナム銃を抜く。

ドドン!!

 二発の銃弾が放たれ、獣の両目を撃ち抜く。
 銃の反動でメイの右腕が跳ね上がった。

「ギャウン!!」

 漆黒の狼は、驚愕の悲鳴を上げた。
 しかし――それだけだった。

 次の瞬間、両側の顔がメイを睨みつける。
 牙を剥き、毛を逆立て、さらに巨大に膨れ上がる。



 まるで、彼女の"反撃"に対して怒りを爆発させるかのように。

「な……なんで……もう治ってる……?」

 15分前。
 ビルの屋上から、この獣を双眼鏡で測定した。

 800,000FTP/50,000FDP

 測定値を見た瞬間、彼女は戦場の異常性を悟った。
 その直後、彼女の目の前で軍の精鋭部隊が一瞬で"食い散らかされた"。

「グス……こんなことなら、命令違反してでも逃げておけばよかった……」

 後悔しても、もう遅い。

 メイは、すでに"逃げ切れない"ことを悟っていた。
 全身が恐怖と疲労で震え、足も限界だった。

 そして、狼は最後の動きを見せる。

 三つの口が一斉に開き、灼熱の業火を放つ準備を始める。

◆救世主

「――ドォォォン!!!」

 轟音とともに、獣の口から紅蓮の火炎が吐き出された。

 メイは、恐怖で目を強く閉じる。
 炎に焼かれ、"死ぬ"ことを覚悟した――

 しかし――何も起こらなかった。

「……ん?」

 恐る恐る瞳を開く。

 そこにいたのは――

 一人のスーツ姿の男。

 黒髪、長身。
 鍛え抜かれた体躯がスーツ越しにもわかる。

 その男は、右手を前に突き出し、
 目の前に"黒い壁"を生み出していた。

 紅蓮の炎は、その"黒い壁"に遮られ、メイに届かなかった。

 まるで、"闇"そのもののような黒い壁――

【断空】

 スーツの男は、右手を下ろすと、
 黒い壁はまるで何もなかったかのように消滅した。

◆"獣" vs "人"

「大丈夫ですか?」

 男が、優しく微笑みながら声をかける。

 メイは、その言葉に思考が停止した。

「え……あ、ありがとうございます……って! 何してるんですか!? ここは軍の警戒区域ですよ! 早く逃げてください!」

 しかし、男は笑みを崩さずに言う。

「逃げる? その必要はありません。直ぐに片付けますから。」

「……片付ける?」

 メイの思考が追いつかない。

 だが、その男は迷いなく歩み出る。

 三つの赤い瞳が光り、
 獣が、"本能"で危険を察知した。

「グオオオオオオ!!!!!」

 咆哮とともに、右前足による薙ぎ払いが炸裂する。

◆"神谷レン"の一撃

ズドン!!

 しかし、スーツの男は"片手"でそれを受け止めた。

 地面が割れ、ビルが揺れる。
 だが、彼は一歩も動かない。

「……測定器……」

 メイは、手が震えながらも測定器を起動させる。

【160,580,000FTP/22,000,000FDP】

 メイの顔が青ざめる。

 ――軍が相手にしている未確認生物を、"はるかに上回る数値"。

「まさか……本当に"人間"なの……?」

 だが、彼女の疑問は、次の瞬間に砕かれる。

◆獣の最期

「――【断空】。」

 世界が一瞬で"静寂"に包まれた。

 次の瞬間。

ズシャアッ!!!

 三つの狼の頭が、一瞬にして"消滅"した。

 異形は、理解する暇もなく崩れ落ちる。

 "死"すら、一瞬だった。

◆"未知なる存在"

 メイは、震える手でレンを見上げた。

「……あなた、本当に"人間"なの……?」

 レンは、爽やかに笑った。

「もちろん。"ただのサラリーマン"ですよ。」

 そう言い残し、レンは再び**"夜空"へと消えていった。**

――次の"標的"を殲滅するために。

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