神殴り代行 異世界放浪記 〜俺の拳は神をも砕く〜

文字の大きさ
13 / 70
第1章 世界の終焉

第13話 夜明け前の影

しおりを挟む
◆静寂の東京

時刻は午前2時。
東京の夜は、深い闇に包まれていた。

停電の影響で街灯はまばらにしか点灯しておらず、星の光もこの混沌を照らすにはあまりに儚い。
人々は避難所や崩れかけた自宅で身を寄せ合い、疲れ果てたように眠っていた。
戦火を逃れた者たちのかすかな寝息が、この荒廃した街の唯一の生命の証だった。

……だが、その静寂を切り裂く“異質な存在”が、東京の闇を歩いていた。

男はゆっくりと歩を進める。
東京郊外から都心へと向かいながら、まるで“散歩”を楽しんでいるかのような、余裕ある足取りだった。

しかし――もし誰かが彼の後を追っていたならば、その道に広がる“異様な光景”に震え上がったことだろう。

彼の通った道には、“死の臭い”が漂っていた。
道路には、無数の死体が転がっている。
蛆が湧き、野良犬が人間の肉を貪り、不気味な影が腐敗した臓物の上を這いずっている。

それでも、男は一切気にする様子もなく、ただ静かに前を見つめるだけだった。
むしろ、その金色の瞳は、まるでこの世の地獄を“愛でる”かのように輝いていた。

◆銀の美青年

夜風が吹くたびに、男の銀髪が揺れる。
光沢のあるグレーのスーツに、端正な顔立ち。
まるで“絵画の中の貴族”のようなその姿は、この荒廃した東京の景色とはあまりにも不釣り合いだった。



彼は立ち止まり、ゆっくりと宙を仰ぐ。
そして、不敵に笑う。

「三年ぶりか……。やっぱり君は、とんでもない奴だな、レン。」

夜の闇に溶け込むような静かな声。
それは、どこか“懐かしさ”を帯びていた。

男の脳裏には、一人の人物の姿が浮かんでいた。

神谷レン。

高校時代、初めて出会った日――その時の衝撃は、今も鮮明に残っている。

“神の如き力”を持ちながらも、あくまで“普通の人間”として振る舞う男。
それがどれほど不自然で、どれほど“異質”なものか、彼は一瞬で見抜いた。

世界に“特異点”が存在するとすれば――神谷レンこそ、その象徴なのではないか。

「クフフ……。」

彼は口元を歪め、楽しそうに笑った。

「そろそろ、君の“限界”を見せてくれよ、レン。」

夜の闇の中で、銀髪の美青年は静かに歩を進める。
彼の目的は、ただひとつ――

**レンとの“再会”**だった。

◆目覚め

痛みが走る。

「……ッ!」

レンは背中の痛みで目を覚ました。
ソファで寝ていたせいか、全身がギシギシと軋むように痛む。

(……ちくしょう、昨日は飲みすぎたか……?)

頭を動かすと、鈍い頭痛がした。
だが、それ以上に――全身の筋肉が、まるで悲鳴を上げるように疼いている。

◆昨日の激闘。
“死神”との戦い、そして“漆黒のドラゴン”と“白銀の狼”の殲滅。

ふと左腕を見ると、ワイシャツが真っ赤に染まっていた。
傷口は既に塞がりかけているが、激しい戦闘の影響で体のダメージが残っている。

「……これは、消毒しないとな……。」

レンはゆっくりと立ち上がり、薬箱を探そうとした――その時。

布団が、わずかに動いた。

(……ん?)

レンは、ベッドの上を見た。
毛布が微かに膨らみ、その中で何かが動いている。

……まさか、キョンちゃん!?

鼓動が跳ね上がる。
心の中で、天使と悪魔が囁き始めた。

「今なら、寝顔が見れるぞ!! 男なら行け!!!」
「やめろ!!! そんなことをしたら嫌われるぞ!!!」
「いや、これは“安全確認”だ!! 事故だ!! 問題ない!!」

悪魔の囁きが勝った。

レンは、ゆっくりと毛布をめくる。
そして――

「レン君のエッチ!!!!」

突然、毛布の中から飛び出したのは……

……筋肉だった。

黒髪、ジャケット、飛び出そうなほど大きな目。
早織が、なぜかベッドの中から飛び出し、レンをにらみつけていた。

「っっっ!!!!!!????」

レンは、心臓が止まりかけた。

「私の寝顔、見ようとしたでしょ!? 次やったら責任取ってもらうからね!!」

「ごめんなさい!!! もう二度としません!!!!」

レンは即座に土下座した。
誓う。
もう二度と、布団の中を覗かないと。

◆訪問者

朝食を食べ終えた頃――

「ピンポーン」

玄関のチャイムが鳴った。
レンは、一瞬だけ警戒する。

(こんな時に、誰だ……?)

慎重にドアを開ける。
そこに立っていたのは――

銀髪の美青年だった。

黄金の瞳がレンを見つめ、満面の笑みを浮かべる。

「よ! 久しぶりだな、レン!」

レンは目を見開いた。
この男を知っている。

大学時代の“親友”。

クロード・デ・アーロン。

「……クロード!? お前、日本に戻ってたのか?」
「ああ、昨日帰ってきたばっかりだ。」
「……こんな時に災難だったな。でも、お前が無事で良かったよ。」
「ああ、俺もレンの顔が見れて嬉しいよ。」

懐かしい再会――だが。

レンはまだ気づいていなかった。

“親友”の背後に、“異様な気配”が渦巻いていることを――。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

大和型戦艦、異世界に転移する。

焼飯学生
ファンタジー
第二次世界大戦が起きなかった世界。大日本帝国は仮想敵国を定め、軍事力を中心に強化を行っていた。ある日、大日本帝国海軍は、大和型戦艦四隻による大規模な演習と言う名目で、太平洋沖合にて、演習を行うことに決定。大和、武蔵、信濃、紀伊の四隻は、横須賀海軍基地で補給したのち出港。しかし、移動の途中で濃霧が発生し、レーダーやソナーが使えなくなり、更に信濃と紀伊とは通信が途絶してしまう。孤立した大和と武蔵は濃霧を突き進み、太平洋にはないはずの、未知の島に辿り着いた。 ※ この作品は私が書きたいと思い、書き進めている作品です。文章がおかしかったり、不明瞭な点、あるいは不快な思いをさせてしまう可能性がございます。できる限りそのような事態が起こらないよう気をつけていますが、何卒ご了承賜りますよう、お願い申し上げます。

英雄召喚〜帝国貴族の異世界統一戦記〜

駄作ハル
ファンタジー
異世界の大貴族レオ=ウィルフリードとして転生した平凡サラリーマン。 しかし、待っていたのは平和な日常などではなかった。急速な領土拡大を目論む帝国の貴族としての日々は、戦いの連続であった─── そんなレオに与えられたスキル『英雄召喚』。それは現世で英雄と呼ばれる人々を呼び出す能力。『鬼の副長』土方歳三、『臥龍』所轄孔明、『空の魔王』ハンス=ウルリッヒ・ルーデル、『革命の申し子』ナポレオン・ボナパルト、『万能人』レオナルド・ダ・ヴィンチ。 前世からの知識と英雄たちの逸話にまつわる能力を使い、大切な人を守るべく争いにまみれた異世界に平和をもたらす為の戦いが幕を開ける! 完結まで毎日投稿!

セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~

空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。 もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。 【お知らせ】6/22 完結しました!

スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~

深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】 異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!

【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

最弱無双は【スキルを創るスキル】だった⁈~レベルを犠牲に【スキルクリエイター】起動!!レベルが低くて使えないってどういうこと⁈~

華音 楓
ファンタジー
『ハロ~~~~~~~~!!地球の諸君!!僕は~~~~~~~~~~!!神…………デス!!』 たったこの一言から、すべてが始まった。 ある日突然、自称神の手によって世界に配られたスキルという名の才能。 そして自称神は、さらにダンジョンという名の迷宮を世界各地に出現させた。 それを期に、世界各国で作物は不作が発生し、地下資源などが枯渇。 ついにはダンジョンから齎される資源に依存せざるを得ない状況となってしまったのだった。 スキルとは祝福か、呪いか…… ダンジョン探索に命を懸ける人々の物語が今始まる!! 主人公【中村 剣斗】はそんな大災害に巻き込まれた一人であった。 ダンジョンはケントが勤めていた会社を飲み込み、その日のうちに無職となってしまう。 ケントは就職を諦め、【探索者】と呼ばれるダンジョンの資源回収を生業とする職業に就くことを決心する。 しかしケントに授けられたスキルは、【スキルクリエイター】という謎のスキル。 一応戦えはするものの、戦闘では役に立たづ、ついには訓練の際に組んだパーティーからも追い出されてしまう。 途方に暮れるケントは一人でも【探索者】としてやっていくことにした。 その後明かされる【スキルクリエイター】の秘密。 そして、世界存亡の危機。 全てがケントへと帰結するとき、物語が動き出した…… ※登場する人物・団体・名称はすべて現実世界とは全く関係がありません。この物語はフィクションでありファンタジーです。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

処理中です...