神殴り代行 異世界放浪記 〜俺の拳は神をも砕く〜

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第3章 魔法大学ザザン

第70話 孤独と不安の夜

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孤独と不安の夜

あれから、俺たちはすぐに解散となり、学生寮へ戻された。
ハルカとエミは、念のため治療室で診てもらうことになり、シルベスターが二人を連れて行った。

俺は部屋に戻るなり、ベッドに横になった。
天井を見上げると、魔法の光源がふわふわと浮かび、白い光を放っている。
静かだ。あまりにも、静かすぎる。

「はぁ……なんか、疲れたな……」

深く息を吐く。

肉体的には、それほど酷使したわけじゃない。
けど、今日はあまりにも “濃い” 一日だった。
俺を庇って負傷したハルカ。怒りに任せてスコルを殺した自分。
エミの憎しみに満ちた眼。
そのすべてが、胸に重くのしかかる。

光に手をかざすと、指先が微かに震えていた。

「今頃になって……かよ」

自嘲しながら、拳を握る。

俺は―― 死ぬところだった。

スコルの不意打ちに気づけなかった。
あのとき、ハルカが庇ってくれなかったら、俺は確実に燃え尽きていた。

「……こんな簡単なことで、死ぬのか」

そう思うと、怖くなった。

死は、いつだって突然訪れる。
何の前触れもなく、あっけなく、人は命を落とす。
俺がいた世界でも、それは同じだった。

―― 俺の祖父は、山菜を採りに裏山へ行った帰り、足を滑らせて死んだ。
特別な事件ではなく、事故だった。
ちょっとした不注意で、人生は終わる。
人は呆気なく死ぬ。

……俺だって、今日、死んでいたかもしれない。

じわじわと、恐怖がこみ上げる。
もし本当に命を落としていたら、もう二度と元の世界に帰れない。
両親にも、友達にも、ペットのアインとシュタインにも会えなくなる。
それどころか―― そもそも俺が死んだことすら、誰も知ることがない。

どこか遠い異世界で、無名のまま消え去る。
そんなの、あんまりだろ……。

「……俺、何やってんだろ……」

いつの間にか、頬を伝う涙が枕を濡らしていた。
抑えようとしても、止まらなかった。

「帰りたいよ……」

声にならない言葉が、虚空に消えた。

突然の訪問者

コンコン。

ドアをノックする音で目が覚めた。

「……ん?」

ぼんやりと意識を取り戻し、寝返りを打つ。
窓の外は暗い。時計を見ると、18時を指していた。

「いつの間にか寝てたのか……」

コンコン。

「しつこいな……」

俺はベッドから降り、部屋のドアを開けた。

そこには、見たことのない女学生が立っていた。
深い緑の髪を背中まで伸ばし、赤縁の眼鏡をかけた少女。
肌は透き通るように白く、紫のローブを纏っていた。

―― つまり、上級生。

「……誰ですか?」

「まぁまぁ、そんな怖い顔しないで。泣いていたの?」

彼女は、俺の顔をじっと見て、くすっと笑った。
どうやら、目が赤いことに気づかれたらしい。

「……寝てただけです。それで、何の用ですか?」

「シルベスター先生からの伝言よ。学舎の南門の広場まで来るように、だって」

「南門の広場? なんでそんなところに?」

「詳しくは知らないけど、ハルカの容態が悪化したらしいわ。
 大学の治癒師の先生がちょうど外出していて、外部の治癒師を呼んだんですって。
 あなたも付き添いで呼ばれてるそうよ」

「……何だと!? ハルカの容態が……」

嫌な予感がした。
足は治ったはずなのに、悪化ってどういうことだ?
もしかして、何か別の症状が出たのか?

「詳しい話は分からないけど、急いだほうがいいわよ」

「分かった。すぐに行く」

俺は礼を言い、部屋を飛び出した。
去っていく俺の背中を、少女はじっと見つめていた。

「……さようなら」



南門へ向かう途中、中庭を突っ切る。
辺りはすでに薄暗く、人の姿はほとんど見えなかった。
俺は焦りながら、南門の先にある広場へと足を踏み入れた。

木々に囲まれた静かな場所。
土の広場には、古びた木製のベンチが並んでいる。
ここか……。

「……遅いな」

不安になりながら、俺はベンチに腰掛けた。
緊張を落ち着かせるために深呼吸する。

すると――

ピカッッ!!!!

視界が一瞬、真っ白に染まった。

「――ッ!?」

次の瞬間、俺の全身に “焼けるような痛み” が走った。

「ぐああああああっ!!」

バチバチと音を立てながら、青白い電撃が俺の体を締め上げる。
激痛が脳に直接響き、体が痙攣した。
全身の筋肉が強張り、動けない。

電撃ロープ――!?

身体強化も、フォースシールドも発動できない。
何もできないまま、俺は地面に倒れ込んだ。

「よし、捕らえたぞ!」

どこからか、声が聞こえた。

「これで終わりね。さっさと運びましょう」

「待て……! 近づくな! こいつはヤバい!」

「は? ただの人間でしょう?」

「お前はあの光景を見てないから、そんなことが言えるんだ……!」

足音が近づく。

「終わりだ」

ドガッ!!

巨大な足が俺の顔を踏みつける。

「ぐっ……!」

口の中が鉄の味でいっぱいになり、意識が遠のいていく。

(……くそ……こんな……ところで……)

ドガッ!!

もう一度、踏みつけられた瞬間、俺の意識は深い闇へ沈んだ――。
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