消えたクラスメイト

消えたクラスメイト

高校2年の夏、クラスメイトの田中くんが突然学校に来なくなった。明るくて目立つタイプだった彼の不在は、クラス全体に妙な空気を漂わせた。でも、担任の先生やクラスメイトたちも特に話題にせず、まるで彼が最初からいなかったように振る舞うのだ。

違和感を覚えた私は、親しい友人の彩香に「田中くん、最近どうしたんだろうね？」と尋ねた。すると彼女は、不安そうな顔でこう答えた。

「……田中くんって、誰？」

その言葉に背筋が凍った。彩香だけじゃない。ほかのクラスメイトに聞いても、誰も田中くんのことを覚えていなかった。まるで彼の存在自体が消え去ったようだった。

家に帰ってからも気になって仕方がなく、私はクラスの集合写真を探した。今年の春に撮ったものだ。田中くんは確かに写っていた。彼の存在が確かであることにほっとしつつ、さらに不安になった。みんなはなぜ彼を覚えていないのだろう？

次の日、勇気を出して担任の先生に直接聞いてみた。「田中くんは、どうして学校に来てないんですか？」
先生は驚いたような顔をしてから、微笑んだ。
「田中くん？……そんな生徒、うちのクラスにいないよ」

その言葉を聞いた瞬間、頭の中が真っ白になった。
慌ててカバンから集合写真を取り出し、先生に見せた。だが、そこに写っていたはずの田中くんの顔は、真っ黒に塗りつぶされていた。

帰り道、胸騒ぎが収まらないまま、田中くんの家に向かった。しかし、そこには田中という家は存在せず、空き地が広がっていた。

帰宅後、スマホを開くと通知が一つ。見覚えのない番号からのメッセージだった。
「もう忘れて。次は君の番だから。」

気づけば、私の名前がクラスの連絡網から消えていた。

ポイント：田中くんが「消えた」理由も怖いが、主人公が次に「消される」暗示が含まれている。読者が「忘れられる」という恐怖にリンクするのが狙い。