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冬空に舞うリボン
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駅前の広場には、もうすぐクリスマスが来ることを告げる大きなツリーが飾られていた。カラフルな電飾が冷たい空気の中でキラキラと光り、賑やかな音楽が聞こえてくる。そんな中、私はひとりベンチに座り、手の中のスマホをじっと見つめていた。
通知は、来ない。
何度リロードしても、彼からのメッセージは届かなかった。
「もう諦めなよ」
親友の真希にそう言われたのは、昨日のことだ。彼と最後に会ったのは三ヶ月前。その時も、些細なすれ違いから喧嘩になり、それっきりだった。
「まだ好きなんだよ」
そう言い返した私に、真希はため息をついた。
確かに、彼のことを忘れるべきなのかもしれない。でも、簡単に忘れられるような恋じゃなかった。彼の優しい声も、笑った時の目元のシワも、全部が頭から離れない。
その時、ふわりと風が吹き、私の首元に巻いていた赤いマフラーがほどけて飛んでいった。慌てて立ち上がり追いかけるが、人混みの中で見失ってしまう。ツリーの近くまで来たとき、誰かが声をかけてきた。
「これ、君の?」
振り返ると、そこには見覚えのある顔があった。彼だった。
「どうして…?」
驚きで声が詰まる私に、彼は少し照れたように笑った。
「なんか、君がここにいる気がしてさ。…って、これ、ドラマみたいだよな」
彼の手には、私の赤いマフラーが握られていた。渡されたそれを手に取ると、じんわりと温かい感触が伝わってくる。
「…なんでここに?」
震える声で問いかけると、彼は少し目を伏せた。
「ずっと連絡しようと思ってた。でも、タイミングを逃して…ごめん、俺、言いたいことがあったんだ」
「言いたいこと…?」
彼は少し息を吸い込んでから、真っ直ぐに私を見つめた。
「やっぱり、君が好きだ。あの日のこと、ちゃんと謝りたかった。でも、それ以上に、もう一度やり直したいと思ってた」
胸の奥が熱くなる。ずっと聞きたかった言葉が、今ここで彼の口から紡がれた。
「私も…私も、ずっと好きだったよ」
涙が頬を伝うのも気づかないまま、私は彼に飛び込むように抱きしめた。彼の腕がそっと私を包み込み、冷たい風の中、心だけが不思議なくらい温かかった。
広場にはクリスマスソングが流れ、人々の笑顔が溢れている。そんな中、私たちの赤いマフラーは、冬空の下でそっと絡み合っていた。
通知は、来ない。
何度リロードしても、彼からのメッセージは届かなかった。
「もう諦めなよ」
親友の真希にそう言われたのは、昨日のことだ。彼と最後に会ったのは三ヶ月前。その時も、些細なすれ違いから喧嘩になり、それっきりだった。
「まだ好きなんだよ」
そう言い返した私に、真希はため息をついた。
確かに、彼のことを忘れるべきなのかもしれない。でも、簡単に忘れられるような恋じゃなかった。彼の優しい声も、笑った時の目元のシワも、全部が頭から離れない。
その時、ふわりと風が吹き、私の首元に巻いていた赤いマフラーがほどけて飛んでいった。慌てて立ち上がり追いかけるが、人混みの中で見失ってしまう。ツリーの近くまで来たとき、誰かが声をかけてきた。
「これ、君の?」
振り返ると、そこには見覚えのある顔があった。彼だった。
「どうして…?」
驚きで声が詰まる私に、彼は少し照れたように笑った。
「なんか、君がここにいる気がしてさ。…って、これ、ドラマみたいだよな」
彼の手には、私の赤いマフラーが握られていた。渡されたそれを手に取ると、じんわりと温かい感触が伝わってくる。
「…なんでここに?」
震える声で問いかけると、彼は少し目を伏せた。
「ずっと連絡しようと思ってた。でも、タイミングを逃して…ごめん、俺、言いたいことがあったんだ」
「言いたいこと…?」
彼は少し息を吸い込んでから、真っ直ぐに私を見つめた。
「やっぱり、君が好きだ。あの日のこと、ちゃんと謝りたかった。でも、それ以上に、もう一度やり直したいと思ってた」
胸の奥が熱くなる。ずっと聞きたかった言葉が、今ここで彼の口から紡がれた。
「私も…私も、ずっと好きだったよ」
涙が頬を伝うのも気づかないまま、私は彼に飛び込むように抱きしめた。彼の腕がそっと私を包み込み、冷たい風の中、心だけが不思議なくらい温かかった。
広場にはクリスマスソングが流れ、人々の笑顔が溢れている。そんな中、私たちの赤いマフラーは、冬空の下でそっと絡み合っていた。
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