幸せの青い線

マッシー 短編小説家

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幸せの青い線

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高橋結衣が初めてその「青い線」を見たのは、大学の講義が終わった帰り道だった。
夕暮れの薄暗い空の下、彼女はふと立ち寄った電車の高架下で、薄く光る青いラインを見つけた。それは、地面に引かれたスプレーの跡のようでありながら、どこか温かい光を放っていた。

「何だろう、これ…」

触れようと指を伸ばした瞬間、背後から声が聞こえた。

「触ると消えるよ。」

驚いて振り返ると、そこには見知らぬ青年が立っていた。年は同じくらいだろうか。黒縁のメガネの奥から、穏やかな視線が結衣を見つめている。

「この線、君にも見えるんだね。」

彼はそう言うと、青いラインの先を指さした。その先には、また別の線が続いている。

「この線、何なんですか?」

「これはね、人と人をつなぐ線なんだ。」

彼は少し笑って、説明を続けた。「この線をたどっていくと、運命の人に会えるんだよ。」

「運命の人…?」

結衣は信じられないという表情で青年を見つめた。だが、彼の瞳には嘘偽りのない誠実さが宿っていた。

「僕もさ、数年前にこの線を見つけたんだ。そして、たどっていくうちに君に会った。」

「えっ…?」

胸が大きく高鳴る。彼の言葉が結衣の心に深く突き刺さった。

「僕の線の先には、君がいた。でも、君がこの線を見ることができる日をずっと待ってた。」

「私が…運命の人?」

結衣の中で、現実感が一瞬遠のいたような気がした。でも、目の前の彼が、自分をじっと見つめている瞳だけは本物だった。

「信じられないなら、君もこの線をたどってみるといいよ。きっと、答えがわかる。」

青年は青い線に視線を落とし、少しだけ微笑むと、線の先へと歩き出した。

結衣は迷った。けれども、次第に胸の中に芽生えた「確信」が彼女の足を動かした。

線を追いかける彼の背中を、結衣も静かに追いかける。そうして2人が並んで歩き始めたとき、青い線が、今まで以上に明るく光り輝いた。

それはまるで、彼女たちの未来を祝福しているようだった。

青い線の先に何があるのか、それはまだ誰にもわからない。
でも、少なくとも今は、この線が彼らの「始まり」であることだけは、確かだった。
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