MIRAI~美少年な王子様は愛されて当然なんです~『改訂版』

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2013年1月14日
授業合間の休み時間。
お気に入りの窓際の後ろの席を確保した未来と琉空は、次の授業の始まりを雑談しながら待っていた。

「へ~、じゃあ何?わざわざお前に会いに来たって事?事務所のトップが。すげーな、お前」

未来から昨日の出来事を聞いた後、琉空はそう感嘆の声を上げた。

「うん。僕もまさか来てくれるなんて思ってなかったから凄いびっくりしたけど、でも凄く親しみやすい人だったよ」

いつかは会えると思っていたが、その時はきっとまだ先で、勿論その時は自分からオリバーを訪ねると思っていた未来なので、昨日の出来事は予想外だったが、早くに彼に会えた事を嬉しく思いながら昨日のオリバーの事を思い浮かべた。
彼があんなキャラだったのが1番予想外だったのだが。

「ふ~ん、そっか。まぁでもお前なら大丈夫だとは思ってたけどね」

どんなに厳しい先生でも未来には皆優しい。
だからオリバーの様に人懐っこい人でなくとも、例え気難しそうな親父が相手だったとしても、年上受けのすこぶるいい未来なら大丈夫、気に入られない事はないだろうと琉空は思っていた。

「ん?何で?」

しかしそれを皆まで言わない琉空なので、何が大丈夫か解らず小首を傾げ疑問を口にする未来。

「ん~?可愛いって特だねって事。親に感謝しろよ?」
「は?何?急に」

しかし返ってきた琉空の台詞は全くもって突拍子なもので。
何をいきなり言い出すんだと、未来は怪訝な表情を浮かべた。

「べっつに~」

そんな未来に琉空はこれ以上何か返す気はさらさらなくて。
ただ、自分ももうちょっと可愛い顔してたらきっと人生変わったんだろうな、といつだって周りからちやほやされている未来を少し羨ましく思っていた所で、休み時間が終わりを告げるベルが鳴った。



※※※



1日の授業が終わりレッスンを受け、帰り支度も済ませ母の迎えを待っている時間。
それに付き合ってくれている先輩達と未来は談話室にいた。

「じゃぁ、ちょっと前までアメリカにいたんだ?」

対になるソファー。
未来の正面に座る蒼真は、今しがた聞いた未来の話に驚き顔でそう言った。

「はい。そうです」
「そうなんだ。じゃぁアメリカに行くから芸能界休業したの?苛められて~とか、体調崩して~とかじゃなくて?」

未来の芸能界休業の報道の際、その理由はこの2つが掲げられていて、未来の隣に座る綾人もなんの疑いもなくそうなんだと思っていたのだが。

「あははは。全然違いますよ。普通に家庭の事情です。父さんが転勤になったんでついてっただけです」
「そっか、そうなんだ~」

けたけたと笑って応える未来から、嘘を付いている様はない。
やっぱり噂と真実は違うものだなと、マスコミの大概さを改めて大和は感じた。

「でもさ、何でうちに入ったの?うちじゃなくても未來ならもっと大手からお誘いあったでしょ?勿論うちも大手だけど、でも未來は俳優志望だろ?」

大手芸能事務所の中でオリバーはアイドル業に力を入れている。
勿論ドラマや映画といった役者業に携わる者も多いが、しかしそれらを本業としている事務所に比べればその仕事の数は如何せん少なくなる。
演技を高く評価されていた未来なら、そちらを選ぶのではと蒼真は思ったのだが。

「え?いや、お芝居は好きですしこれからもやりたいと思ってますけど、でも俳優志望じゃないですよ?僕も皆と同じアーティスト志望です」

きっぱりとそう応える未来に3人は少し意表をつかれるも。

「まぁでもそうだよな。じゃなきゃAクラスでもいいしね」

Sクラスと比べるとAクラスに在籍する者の方が圧倒的に俳優を兼任する者が多い。
オリバーを選び、そしてSクラスを選んだ未来から、その意思は聞かずとも察せる事だった。

「でもうちはそっち方面ではまじで厳しいよ?」

アーティストとして活動したいだけなら、他の事務所の方が門は広い。
現にオリバーで涙を流した者達が、他所でデビュー出来たケースもざらにある。
それだけ厳選に厳選をかけた逸材しか、Sクラスからのデビューは叶わないのだ。

「はい。知ってます。でも僕の夢ですから頑張ります」
「夢?うちでデビューする事が?」

3人の疑問を大和が代弁する。

「ん~、まぁ勿論それはそうですけど。僕の夢は……」

揺るぎのない瞳で話だした未来を、3人は興味深そうに見つめていた。
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