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可愛いは正義
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2013年1月21日
昼休み。
3階の屋上に繋がる階段の踊り場。
陽の光が程よく差し込むここは、冬でも中々心地よく、未来と琉空は専らそこでランチタイムを過ごしていた。
「で、どうだったの?合同レッスン」
怖い先輩いた?
と瞳を輝かせ聞いてくる琉空に、未来はお弁当の卵焼きを飲み込みこんだ。
「いないよ。皆優しくしてくれたし」
昨日の合同レッスンの事を思い出しながら未来はそう答えた。
大和に紹介された海斗達しかり、同じグループになったAクラスの先輩達も皆いい人そうな人ばかりだった。
「ふ~ん。な~んだ、つまんない。たまには虐められればいいのに」
至極残念そうにそんな台詞を吐く琉空に、未来は顔を顰めた。
友達なら普通虐められない事を願うものだろう。
「何それ、ひどっ。でも残念でしたぁ。僕は虐められないよ」
「へ~、それって気付いてないだけじゃない?お前が鈍感で」
琉空の悪態に負ける未来ではなかったが、琉空も大人しく引き下がる気はなかった。
「はははっ。それもあるかも。でも一番の理由は違いま~す」
鈍感という琉空のフレーズに、未来は自分でも確かにその節はあると感じていたので思わず笑ってしまうが、しかし正解の答えではない。
「…何だよ、一番の理由って」
琉空は何となく、その理由を聞くのに嫌な予感を感じながらも、何故かそう投げかけてしまった。
「え~、そんなの決まってるじゃん?僕が可愛いからにさ」
したり顔を浮かべペットボトルのお茶を飲む未来に、やはり聞かなければ良かったと琉空は口端を引き攣らせた。
※※※
未来と琉空が学校でランチタイムをしているのと同時刻。
オリバーエンターテインメント事務所の談話室では、デパ地下のテイクアウトをテーブルに広げ、海斗・旬・斗真の三人が会食していた。
若い男三人が何故こんな場所で会食などしているかと言えば、忙しい斗真は2人とランチする時間も最近ではなく、また店にいけばたちまち人だかりになってしまう為ここを選んだのだ。
「も~っ、めちゃめちゃ可愛かったよねっ?未來。ね?旬君っ」
「え、あぁ、うん。そうだな」
相変わらずテンション高く、海斗は今日も未来を絶賛していた。
そんな海斗に同意を求められた旬は大人しく肯定するも、当たり前に彼の様なテンションはない。
「ふ~ん、そうなんだ。そんなに可愛いなら俺も見てみたいなぁ~。今度レッスン覗きにいこっかな」
海斗の浮かれように興味をそそられた斗真がそう言うと、瞳をキラキラと輝かせ海斗は身を乗り出した。
「来なよ来なよっ。本当に超可愛いから。見に来る価値あるよ~」
「え~、いや、まぁ確かに可愛いけどさ。でも別にわざわざ見に行く程ではないと思うけど…」
日々忙しい毎日をおくる斗真。
そんな彼の貴重な時間を割いてまで行く必要はないと旬は思う。
「そうなの?でも結構注目されてるっぽいよ?ほら、週刊紙でも取り上げられてるし」
斗真が何気なく眺めていた週刊誌。
なんともタイムリーな事に、たまたま未来の記事が載っていて、斗真はそのページをひろげ2人に見せた。
「あ、本当だっ。ってえっ?これ明日発売されるやつじゃんっ」
事務所の談話室には所属タレントが関わる様々な雑誌が置かれていて、中には未発売の物もある。
海斗は斗真から雑誌を奪い表紙を確認すると、そこには未発売を知らせる印と日付が書かれていた。
未来の話題は中々に大きな見出しで載っているので、きっと彼は明日至る所で騒ぎ立てられるだろう。
大丈夫かな、とそんな未来の事を海斗は心配に思った。
昼休み。
3階の屋上に繋がる階段の踊り場。
陽の光が程よく差し込むここは、冬でも中々心地よく、未来と琉空は専らそこでランチタイムを過ごしていた。
「で、どうだったの?合同レッスン」
怖い先輩いた?
と瞳を輝かせ聞いてくる琉空に、未来はお弁当の卵焼きを飲み込みこんだ。
「いないよ。皆優しくしてくれたし」
昨日の合同レッスンの事を思い出しながら未来はそう答えた。
大和に紹介された海斗達しかり、同じグループになったAクラスの先輩達も皆いい人そうな人ばかりだった。
「ふ~ん。な~んだ、つまんない。たまには虐められればいいのに」
至極残念そうにそんな台詞を吐く琉空に、未来は顔を顰めた。
友達なら普通虐められない事を願うものだろう。
「何それ、ひどっ。でも残念でしたぁ。僕は虐められないよ」
「へ~、それって気付いてないだけじゃない?お前が鈍感で」
琉空の悪態に負ける未来ではなかったが、琉空も大人しく引き下がる気はなかった。
「はははっ。それもあるかも。でも一番の理由は違いま~す」
鈍感という琉空のフレーズに、未来は自分でも確かにその節はあると感じていたので思わず笑ってしまうが、しかし正解の答えではない。
「…何だよ、一番の理由って」
琉空は何となく、その理由を聞くのに嫌な予感を感じながらも、何故かそう投げかけてしまった。
「え~、そんなの決まってるじゃん?僕が可愛いからにさ」
したり顔を浮かべペットボトルのお茶を飲む未来に、やはり聞かなければ良かったと琉空は口端を引き攣らせた。
※※※
未来と琉空が学校でランチタイムをしているのと同時刻。
オリバーエンターテインメント事務所の談話室では、デパ地下のテイクアウトをテーブルに広げ、海斗・旬・斗真の三人が会食していた。
若い男三人が何故こんな場所で会食などしているかと言えば、忙しい斗真は2人とランチする時間も最近ではなく、また店にいけばたちまち人だかりになってしまう為ここを選んだのだ。
「も~っ、めちゃめちゃ可愛かったよねっ?未來。ね?旬君っ」
「え、あぁ、うん。そうだな」
相変わらずテンション高く、海斗は今日も未来を絶賛していた。
そんな海斗に同意を求められた旬は大人しく肯定するも、当たり前に彼の様なテンションはない。
「ふ~ん、そうなんだ。そんなに可愛いなら俺も見てみたいなぁ~。今度レッスン覗きにいこっかな」
海斗の浮かれように興味をそそられた斗真がそう言うと、瞳をキラキラと輝かせ海斗は身を乗り出した。
「来なよ来なよっ。本当に超可愛いから。見に来る価値あるよ~」
「え~、いや、まぁ確かに可愛いけどさ。でも別にわざわざ見に行く程ではないと思うけど…」
日々忙しい毎日をおくる斗真。
そんな彼の貴重な時間を割いてまで行く必要はないと旬は思う。
「そうなの?でも結構注目されてるっぽいよ?ほら、週刊紙でも取り上げられてるし」
斗真が何気なく眺めていた週刊誌。
なんともタイムリーな事に、たまたま未来の記事が載っていて、斗真はそのページをひろげ2人に見せた。
「あ、本当だっ。ってえっ?これ明日発売されるやつじゃんっ」
事務所の談話室には所属タレントが関わる様々な雑誌が置かれていて、中には未発売の物もある。
海斗は斗真から雑誌を奪い表紙を確認すると、そこには未発売を知らせる印と日付が書かれていた。
未来の話題は中々に大きな見出しで載っているので、きっと彼は明日至る所で騒ぎ立てられるだろう。
大丈夫かな、とそんな未来の事を海斗は心配に思った。
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