MIRAI~美少年な王子様は愛されて当然なんです~『改訂版』

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帰り道

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2013年2月6日
レッスン後の更衣室。
あらかた着替えの終わった未来は、そろそろ迎えに着くだろう母、ありさと連絡を取る為、スマホを鞄の中から取り出そうとした所、着信を知らせる振動が手に伝わってきた。
相手はありさに違いない。
未来は慌ててスマホを手繰り寄せ、“母さん”の名前が表示された画面をスワイプした。

「え?まじ?…うん、うん…、はぁ~。もう解ったよ。聞いてみるから。うん、じゃぁね」

未来はありさとの通話を切ると、深いため息を吐いた。
その様子を隣で見聞きしていた綾人が彼に声をかける。

「どうしたの?何かあった?」
「あ、はい。実は……」

少し落胆した表情を浮かべながら、未来はありさとの会話を話出した。



「そっか、どうしような。俺送ってってもいいけど。この後別に用事ないし」

綾人と共に未来の話を聞いたのは大和と蒼真の三人で、聞き終えると一番に蒼真が名乗り出てくれた。

「いや、でもお前未來んちと真逆じゃん。いいよ、俺が送ってくよ」

蒼真の家と未来の家は、このレッスンスタジオを真ん中に丁度東と西に位置していた。
なので未来と同じ西方向に家のある綾人が次に立候補したのだが。

「でもお前用事あんだろ?」
「そうだけど、でも俺なら通り道だし…」
「だったら俺が送るよ」

未来と綾人と同じく西方向の大和が手を上げた。

「え?でも大和君だって用事あるんですよね?」
「まぁ、でも多分俺が一番未來んちから近いと思うし。それに俺の用事は海斗だからさ。別に遅れるって言えばすむ話だし」

蒼真が大丈夫なのかと大和の顔を見れば、大和はにかりと笑って親指を立てた。
同じく用事があるならより近い方。
そして相手も知った間柄、海斗なら是非そうしろ、寧ろそうしてくれと言ってくれるに違いないと大和は思う。

「…いいの?大和君…」

それでも何だか役目を変わって貰った様な気のした綾人が、そう大和にお伺いをたてる。

「全然いいよ。一緒に帰ろうな、未來」

大和は片手を振ってなんの問題もない事を綾人に伝え、そして未来に人好きする顔で呼びかけた。



2022年12月31日
すっかり暗くなり、家々に光が灯る住宅街。
帰宅途中の学生達が自転車で家路をいそぐ姿がちらほら伺える頃。
大和は白の国産セダン車を、通行の邪魔にならない道路脇にハザードをたきながら止め、運転席から電飾が綺麗に光る大きなもみの木のある白い家を眺めた。
明るい光が盛れるその家に、大和はふわりと口元が綻んだ。
そしてしばらくその柔らかい灯りを見つめた後、シフトレバーをパーキングからドライブに変えて、静かにゆっくりと車を発射させた。



2013年2月6日



「あ、ここです。ここが僕の家です」

洋風な造りの白い家の前に着くと、未来がその家を指先した。

「へ~、お洒落な家だな~。立地もいいし」

今風の、所謂北欧系な外観のその家を見て、大和が感嘆の声を漏らす。

「そうですか?駅からちょっと遠いんで結構面倒ですよ?」

山手線沿いとはいえ駅から歩いて20分そこそこ。
歩けない距離では決してないが、近いとは言いずらい。

「あ~、まぁ確かにちょっと距離ある」
「未來っ!ごめんねっ?迎えに行けなくって。用事が長引いちゃってっ」

大和が未来の台詞に納得した時、丁度家の裏手側からありさが駆けて来た。

「いいよ。送ってもらえたから。でもこれからはもうちょっと早く教えてね?」
「うん、解った。あ、やだ私ったらっ。ご挨拶遅れちゃってすみませんっ。未來の母です。いつもこの子がお世話になってます。それと、今日はごめんなさいね?わざわざ送って頂いちゃって」

未来の隣にいる大和に気づいたありさは、慌てて頭を下げた。
そんなありさに大和は恐縮した面持ちで両手を左右に振った。

「あ、いえ、全然!通り道みたいなもんなんで。あ、森山大和です。初めまして」

頭をぺこりと下げて言う大和は、ありさの容姿が想像以上に綺麗で、思わず顔を少し赤らめた。

「あら、貴方が大和君?未來から話は聞いてます。仲良くして頂いてるって。ありがとうございます」
「や、いや、そんな全然俺はっ…」

再び頭を下げてくるありさに、大和は否定の言葉と共に何度も首を振ったり頭を下げたりと忙しい。

「あっ、お夕飯まだよね?良かったら食べていかない?ご都合よければだけど」

そんな大和の好感の持てる態度に気をよくしたありさは、くすりと笑いながら大和を誘った。

「あぁ~っと…」
「大和君用事あるから」

断りづらそうに言葉を濁す大和に、未来がその台詞を代弁した。

「そう…。それは残念…」
「すみませんっ」

しゅんと肩を落とすありさに、大和は慌てて謝罪の言葉を口にするが。

「そんなっ、謝らないで?寧ろ用事があったのに本当にすみませんでした」
「いやっ、それは全然大丈夫ですからっ」

再度頭を深々と下げてくるありさに、大和も再びおどおどと困った表情を浮かべながら、気にしないで欲しい事を伝えた。

「そう言って頂けると助かるわ。今日は本当にありがとうね。あ、良かったら今度ゆっくり遊びにいらして?その時はしっかりご馳走させてね」

大和の言葉に徐に顔を上げたありさは、未来とそっくりなキラキラとした笑顔を大和に向けそう言った。
そんなありさに大和も爽やかな笑顔で答えた。

「はいっ。楽しみにしてますっ」
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