元売れっ子?ラノベ作家、異世界へ行く

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元売れっ子?ラノベ作家、異世界へ立つ

木を伐採して探索を続けましょう

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 コーン コーン コーン

 森の中に響き渡る石と木のぶつかり合う音。
私は今、木を切っている。

 昨日の探索で見つけた赤樫の木とウォールナット。
朝、起きてから今現在11時まで切り続けていた。

 探索はどうしたのかって?
探索はまだ水筒が出来上がっていないので午後からに回した。

 起きてからすぐ湖に向かい、ずっと漬けてあったすきモドキと石斧モドキを鑑定した。
両方ともマジックアイテムに成っていたので鋤モドキと石斧モドキ2本を回収。
ついでに水筒を鑑定したのだが、こちらはまだ完成していなかった。
梯子はすぐに出来たのに、水筒はまだ出来ていない。
 何が違うのかは分からないが、出来ていないのは仕方が無いので遠出は諦め、午前中は石斧モドキの性能を確かめるべく、昨日印をつけたところで伐採に勤しんでいたというところだ。

 朝から2時間。
ウォールナットを1本、赤樫を1本切った。
しかしまあ、デカい。
どちらも高さが7mほど。
直径が40cmほど。

でもこれでまだ成長途中のはずなんだよなぁ。


……硬かった。
ウォールナットは多少硬かった程度だが問題は赤樫の硬さ。
正直7割は赤樫に時間を割いた。

 それでも切って良かったと思う。
何しろ副産物が取れたからだ。
 両方から実が取れた。
うん、そういえばウォールナットって和名が胡桃なんだよね。
当然赤樫からはドングリ。

 先日の探索でクルミやドングリは見つからなかった。
何故見つからなかった、普通なら1粒でも落ちているはず。
理由は単純。
木が倒れても実が落ちないほど頑丈に付いていたからだ。
正直石のナイフでゴリゴリとやって何とか引きはがすことが出来るほどだ。
私は数粒のクルミとドングリを回収しただけで、後は木ごと腕輪の中へ収納した。

 そして現在、追加でウォールナットを切っている。
今切っているのは先ほどまで切ったものより小さいのでそれほど時間はかからないだろう。

 今回木を切ってみて分かったことの1つは身体能力が桁外れに上がっているということだ。
普通なら重たい石斧で切るのには相当時間がかかるし、重い分疲れるはず。
それなのに重い石斧を凄まじい速度で振れる。
しかも一撃で喰い込む深さが桁違いだった。
5cmくらい喰い込むんだ。
それを30分程度なら休憩無しで行える。
 結構肉体は強化されているようだ。

 もう1つは石斧モドキ。
さすがマジックアイテムということで木に打ち付けてもビクともしない。
鋭利さは無いが破壊力は抜群だった。
追加であと数本作っておこう。

 と、考えている間に直径30cm、高さ5m程のウォールナットを切り終えた。
メリメリという音を立て、倒れる方向に立っている小さな木をなぎ倒し、更に大きな木に引っ掛かり止まる。
中途半端に残った幹に石斧を叩き込み、完全に切れたら即収納。


 昼を少し回るくらいで本日の伐採を終え湖の畔に引き返す。
理由は単純。
ペットボトルの水が無くなったからだ。
 肉体はすさまじく強化されているようだが、何となく燃費が悪いような気がする。
普段はそれほどでもないのだが、動いたらとにかく消耗が激しい。
疲れるとかではなく空腹と水分がとにかく抜ける。
もう少し考えて改造してほしかった……。
贅沢かなぁ?

■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□
 
 さて、午後から森の探索を再開する。

 今回はラピスの木の群生地分が無いのでそれほど距離は稼ぐことは出来ないだろう。
森に入り数時間、鑑定を使いながらゆっくりと進んでゆく。

 植生しょくせいは変わらない。
特に目新しい物を発見できずに奥へ奥へと進んでゆく。

 結局は新しいものを何も見つけることが出来ずに16時を迎えた。
そこから日が暮れるまでに湖へ戻ろうと足を速めたのだが一向に暗くなる気配が無い。

 17時。
湖へ到着。
そこで何故暗くならないかに気が付いた。

 昼は気が付かなかったが光源が3つ浮かんでいる。
どうやら1サイクル過ぎたようだ。
これでまた2日ほどは日が沈まなない。
しかしまあ、疲れているのか観察能力が落ちているようだ。

 私は日が落ちないのならこれ幸いと、水分を補給し、減ってきていたラピスの実の収穫を始めた。

 休めばいいのに休めないところが日本人の感覚が抜けていないのかなぁ。

■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□

 それから数日。
湖の周りをほぼ1周したので、今日でローラー作戦は終わる。

 そう、最初に入ってきたところから今の仮野営地(木の上)の間の探索だ。
正直期待はしていない。
沈めたラピスの木はすべて回収済みなのだが、いかんせん蓋が無いのでまだ水筒としては使えない。
最悪、湖の近くに拠点を構え、移動式住居と松明を作成することになりそうだ。

 そして水筒は石のナイフを駆使して蓋を作る。
ちなみにコルクはかなりの量を確保してある。

 本来ならもっと落ち着いた拠点で大量に作りたかったのだが行動範囲を広げるために10個ほど先に水筒を作る。
そうでもしないとここで一生を過ごすことになりそうだ。

 まだこの世界に来て2週間ほどしかたっていないのだがそろそろ限界だ。
精神は強化されているようだが、それでも結構くる。
とりあえずは探索を開始する。

 少々疲れた体を引きずって森の奥へと私は歩き始めた。


 「はあ、今日も空振りか……」

 やはり駄目だったかと、近くにあった赤樫の木へ寄り掛かった。
今日持ってきた水もペットボトルに4分の1程度しか残っていない。
さて帰るか……と湖の方を向こうとした時、それは光った。

 ちらちらと紅い光が視線の中に入ってくる。
私は重くなった身体に力を入れゆっくりと光の飛んでくる方へと歩き出した。

■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□

 急に視界が開ける。
森の中に突然現れたもの。

 綺麗に並んだ石畳。
そして崩れ落ちた天井とそれを支えていたと思われる石造りの柱。

 私は数歩歩き、硬い石畳の感触をスニーカー越しに味わった瞬間、膝から崩れ落ちた。
膝に感じる土とは違った硬い感触。

 やっと、やっと拠点となりそうな場所を見つけることが出来た。

 遠回りかよ、ちくせう。
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