【寡黙者Dの狂乱】〜最低ランクの俺、魔王の手下になって勇者様をぶっ潰す仮

白丸 さく

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覚醒と召喚とランク社会

2 イケメンからはお花畑の香りがした。

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12才って色んな感情が芽生える時期じゃん。気の合う友人と悪ふざけして、ちょっくら世の中に逆らいたくなったり、隣の席のあの子の事が気になっちゃったり?皆んなたくさんの経験をして成長する。

俺、根岸 環(ねぎし たまき)にもそんな存在が居た。

友人のKとRくんとは、3歳からのマブダチ。秘密基地を作り、小っ恥ずかしい必殺技も考えた仲だ。隣の席のMちゃんの事気になるって言ったら、全力で応援してくれた良い奴等。
楽しかった。毎日が、光り輝いていた。ピカピカしてた。お日様みたいに。
でも、そんな日常なんて、ランクが決まれば関係ない。

ランクごとに変わる日常。学ぶ勉強内容の違い、それまで気にもしなかった優先順位。KやRくん、そしてMちゃんに向けられる羨望の眼差しと同時に、憐まれる存在。それが俺なんだって理解した途端、目の前が真っ暗になった。

忘れられない。人の感情って目に現れるんだよ。にさ。が怖い。あのが。沢山のが俺を見て細められる。

母さんは俺をそのに映して涙した。父さんは、俺を睨み付けて‥母さんに怒鳴ってそれから‥。そうだ。出て行ったんだ。俺のせいで出て行った。俺のランクが低かったから。未だに帰ってこない。薄情な野郎。今頃、中年太りでもして母さんの手料理恋しさに毎晩枕を濡らしているはずだ。きっとストレスでハゲてるね。ざまあみろ。散々後悔してそれで、無残な姿で帰ってくれば、許してやるのに。

‥ああ、最後、親父となんて話したんだっけ。

もう思い出せないや。

「おい、ネギー!起きてー!」
「ッ!?‥たけ、ちゃん‥」

薄らとチャイムの音がして、目を開けると、目の前にふくよかなぷよぷよお肉‥視界を妨害するそれ。ああ、そのパーカーのサイズ、少し小さいんじゃないかってあれ程言ったのに‥。また女子にハミ肉ダルマって呼ばれるぞ‥。俺知らないからな。

「ど、し、た‥?」
「ネギー!まさかっ忘れてっ!?それはひどいぞ!?今日はマコたんのくじ発売日だから一緒に行こうって行ったじゃん!!」

行き帰り以外クラスの自分の席でソシャゲに集中してるたけちゃんが来たって事は、もう下校時間か。
高等部2年、季節は春。この学園での生活も、もう一年と1ヶ月を過ぎようとしていた今日のこの頃。

何時間近く寝ていたんだろう。
一緒に行こう、って‥そんな約束してたっけか‥?

嬉しそうな、興奮したかのようなたけちゃんの顔に苦笑いを返す。

たけちゃんは、俺の友人だ。
ランク付けされた日から、人の目を見ることが苦手になった。いつも下を向くようになって、人と接する事を避けていたら、いつの間にか話す事すら上手くいかなくて‥
見事に人見知りコミ障発動しちゃった俺。

中学時代ぼっちで過ごしていると、同じくぼっちだったたけちゃんと、何かある毎にペアになっていて。
‥気づけば変な仲間意識が芽生えてよく行動を共にするようになった。
今では冗談を言い合えるよき友人だ。たまについていけない時あるけど。いやほんと。

「それでさ~1等賞がマコたんの等身大抱き枕なんだよ~!想像しただけで僕ッ‥」

たけちゃんと、不気味なほど静かな廊下を歩く。

ここ新東京ーー国松くにまつ学園高等学部は、新日本中央都市新東京都に住む、中等部卒業資格のある者全てが入学を義務付けられた学園である。

ランク社会になってから、日本は国名を【新日本】に変更し、それに伴い全ての都道府県の始に同じく【新】の文字を付け加えた。

国松の部活は全ランク共同で、低ランクの連中は、皆んな必死こいて入部する。
少しでも高ランクの連中と親しくなっておけば、後々の就職活動の際に力添えしてくれる可能性があるし、自慢できるしで、青春なんてあったものじゃない。
悪く言えば媚売り。今頃、帰路の為の廊下など使わずに、媚び活動に走り回っている頃だろう。お疲れ様です。

そんな訳で、いつも賑わうこのD.E共同廊下も人っ子1人いない訳だ。

「そ、なん、だ。あた、ると、いい、ね」

「ッ!?お、おい、ネギーっ、ちょ、ちょっと!?」

「ん?たけ、ちゃ、どし、た?」

廊下を歩いていると、急に縮こまるたけちゃんに首を傾げる。冷や汗をダラダラと垂れ流すたけちゃん。顔が真っ赤だ。どうしたんだろう?お腹痛いのか?

たけちゃんが見つめている先を辿っていくと、フワリと開いた廊下の窓から風が吹いて、なんだか花畑みたいな匂いがした。

「カイっ!待ちなさいよッ!!こんな汚らわしい所に、何の用事だってのよ!?」

「はぁ、マリア、落ち着け。頼まれたんだから仕方ないだろ?任務だと思ってっ、‥低ランククラスの生徒か‥?」

窓の外から夕日が差し込んで、彼等を照らす。サラサラと揺れる金の髪。同期の奴らもこんな風に同じ色に染めてるけど、なんだろうな‥毛の痛み具合だろうか?何か‥決定的に違うのだ。
一瞬、漫画から勇者とかそういう異世界の人が飛び出てきたんじゃないかって思うほど、そのが明確で。

後ろのツインテールの女の子だってそうだ。あんな真っ赤で長い髪、たけちゃんが好きな魔法少女系アニメのマコたんにそっくり‥。
あぁ、だからたけちゃん、こんなに顔を赤くして‥。


「マコ、たん‥?」

たけちゃんが、結構大きめの声で呟いた。俺はゾッとして息が止まる。
おいいい、たけちゃんッ馬鹿なの?!こういう時は目を合わせず早走りしようって、不良に絡まれた時誓ったじゃん!?もう忘れたのかあの恐怖をっあの屈辱をっ!?駆逐されるぞっ、俺達なんて頭からパックリだかんねっ!?

「何、こいつら‥底辺の中のド底辺って感じね。」

ひぃ、赤毛ツインテが虫ケラを見るような目で俺たちを見ている。気づかれた。どうすんのこれ、え、こわ。むり、こわ。どうしよ、壁に頭ぶつけて気絶したほうがいいかんじ?

俺が壁に頭を捩じ込ませようと覚悟を決めた時だ。たけちゃんが、グイッと俺の肩を引き寄せて、隣に並ばせた。‥は?

「おいマリアッ!失礼だぞ!すまない、こいつ、いつも口が悪いんだ。許してやってくれ‥。」

「い、いえっ!!現実世界に舞い降りた天使マコたんと口を聞けただけでも幸せというかッ光栄すぎて僕っ、はうあっ!!」

たけちゃんが隣で奇声を上げる。急に話しかけられた事と、たけちゃんにより戦場に立たされた恐怖で頭の処理が追いつかない俺は、オロオロとたけちゃんと彼等を交差に見ることしかできない。

うわあ、コミ力高すぎてどうしよっ。普通話しかけてきます?挨拶するべき?はじめまして?こんにちは?どうしたんですか?何か用ですか?どれが正解だ。おいたけちゃん、機能してくれよ。いつまで俺の肩を抱きしめてるの?少女漫画展開ですか?なにそれ虚しい。赤毛ツインテの娘、今にも人を殺しそうな目をしてるからね?ッひぃ、見てしまったっ、不覚ッ怖い怖い怖い。‥俯こう。そうしよう。地面は俺の大親友。廊下のヒビを数えながら、時が過ぎ去るのを待とう。そうしよう。1本‥2本‥3

「な、なんなのっ!?こいつらっキモちわるいッ」

女の子が、俺達に向かって叫んでいるのが分かる。いや、分かるよ。その気持ち。イケメン同士ならまだしも、モブがひっついてるのなんか見たくないよね。分かるけどね、分かるけども‥そんな目をするなら‥嫌なら、放っておいてくれればいいのに‥。皆んな部活やらで、帰宅部である俺たち以外はここにはいない。だから話しかけたのだろうけど、ほんとうについていない‥。だってこんな‥あたかも私達ハイランクですってタスキつけて歩いてるような人間達と出くわしてしまうなんて‥。

「マリアッ!!」

「ふん!」

「はあ、君たち、少し聞きたいことがあるんだが、少しいいか?」

「はひぃっ!?感激のあまり飛んでいた、だとッ!?ふぐう、な、なんのようでござるか!?見たところハイランクの様方‥そこの麗しき姫‥怒った顔も蔑む表情も‥尊い‥」

「見んなデブ!ほんっっと!気持ち悪いからッ!?」

「‥はあ‥少し用事でな‥。お前達、低ランククラスの中で、怪しい人間や噂なんかを聞いたりした事がないか?」

「怪し、い‥話‥。ッ!?」

あ、たけちゃん復活した。なにか話がいい感じに進んで、良い感じに空気になってる俺。このまま流れに乗って影になれば、ふぅ、一安心。なんてことを地面を見つめながら考えていたら、なんとなーく聞き覚えのある話が上がって、口に出してしまう言葉。俺は慌てて口を閉じる。幸い、俺よりは話が通じるであろうたけちゃんに注目していた2人は、俺が喋った事にすら気づいていない。俺はほっと胸を撫で下ろし、再度地面と見つめ合った。

‥そういえば、Eランクの連中が最近何かこそこそ動き回ってるとかどうとかって、クラスメイトが騒いでたけど、それってこの人達にとっては怪しい事になるのかな?

通称ランクEとは政府の公認ではないが、影のルールかDクラスとは教室が分けられている。そうだな。柄の悪い連中が多い。近づきたくないけれど、必然的に俺達DクラスはEクラスとお隣同士で‥運が悪ければ、Eクラスの乱闘に巻き込まれる時だってある。

危害を加えられたり、気分を害されたり、そういうは、政府に報告して罰してもらう事が可能だ。なのに、誰一人としてそうしないのはきっと‥俺達は、なんとなく、がそうする気持ちがわかるから‥皆んな陰では愚痴ったりするけど、何も言わないし、よほどの事が無い限り問題にはしない。それがランクDの裏鉄則。底辺同士の争いもあれば、情だって出来てしまうものなのだろうか。

「い、いえ!!特にはッ!!」

「そうか‥ありがとう。急に話しかけて悪かったな。行くぞ、マリア。」

「ふんっ」

またフワリと香る花の匂い。立ち去る姿まで絵になる2人。たけちゃんと顔を見合わせて、ため息をついた。だって、話すだけで‥こんなにも疲労感が‥。俺達にとって、彼等みたいなのと関わると、寿命削れるというか何というか。とにかく疲れるし気を使うし苦手な存在だ。

「‥イケ、メン、匂い、まで、イケメ?」

「くうっ、違うよネギー‥あんなのトイレの消臭剤ぶっかけたようなもんだよっ!か、可愛い女の子をっ、ましてやリアル実写マコたんを連れ歩けるなんてッくうっ、イケメン爆発しろおっ‥。ゔう、どうしてハイランク連中が僕等の楽園をうろちょろしてるんだよー‥。‥、なんか僕、ちゃんと話せてたと思う。あんなランクが高い陽キャくんと会話してた。凄くない?もしかしてコミ力はSランクだったとかっ!?」

「‥たけ、ちゃ‥。」

「あれ?でも、‥もしそうなら、他のスペックの殆どがランクDって事になるんじゃ‥。それで平均が下がってランクDに‥?なにそれ‥悲しすぎる‥。ぐへえ‥」

「‥う、あ、‥え‥」

「‥いいよ、ネギー‥。励まそうとしてくれて、言葉が出なかったんでしょ‥。はは、これだから現実ってやつは好きになれないのさッ、さあ、気を取り直して行くよネギーっ!リアルブレイカーたけおッ、突撃じゃああああ!!待っててマコたんっ今行くよおおおおお」

「まっ‥!?‥はぁ‥」

違うんだたけちゃん。俺は今日はもう疲れたから大人しく帰ろうって‥そう言いたかったんだよ‥。
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