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覚醒と召喚とランク社会
4 守るべきは嫁
しおりを挟む夢だと思いたい。
きっと現実じゃないんだ。
だってさ、こんなのおかしいじゃん。
世界がスローモーションに見える。
ビルや店を破壊しながら、此方へと接近する黒龍。
あそこお気に入りのショップだったのに、なんて事を頭の片隅で考えながら、俺はその店の数100メートル手前にいるタケちゃんの方へと全力で走る。
「た、けッちゃ!!ーーー」
いや、なんで走ってんだろ俺。どうしてこの状態で、命よりもくじの景品守ろうとしてる馬鹿の為に走ってんの?
「こっちだ!!皆んな!地下に潜るんだ!!」
「あの龍は常に飛行しているから、地下までは侵入しないはずです!さぁ、早く避難を!!」
「安心しろ。地下鉄内は頑丈に作られている。空調設備も整っているから大丈夫だ。」
すぐ左脇でそんな声が聞こえて、俺は必死に駆けながらも、ふと声の主を一瞥した。
‥、あぁ、なんて偶然。噂をすればなんとやら。
俺達とは違う国松制服。陽のオーラで身を纏った3人組。
見覚えのあるその顔ブレに、嫌な喪失感が襲う。
Kくん、Rくん、Mちゃん‥。
変わってないな‥。
離れてから数年。関わりは一切無かった。もう他人に等しいのに‥。
すぐに気がついてしまった自分が、嫌になる。
まだ、3人共、仲良いんだ。
活発で明るいケイ。いつも冷静なルイ。可愛くて優しいモモちゃん。
そっか、そうだよ。だってお前ら仲良く俺を置いてAランクだったもんな。
地下鉄の出入口か。さすが高ランク。こんなにも近くにあるのに、俺には考えもつかなかった。
あいつらが誘導して、皆んながそこに駆け込んで、
きっと助かる。沢山の人が助かるんだ。
ふと
世界の役にたつって、こういうことなのかな、なんて思った。
それと同時に、俺ははたして必要なのか?と疑問が浮かぶ。
こんな状況で、真っ当な解決法も無く、走ることしかできない能無しなのに。
あぁ、なんかこれって
嫉妬してるみたいだーー。
3人とふいに目があった気がして、
俺は即座に視線を逸らした。
虚しい。苦しい。自信がない。怖い。
頼むから‥あの時゛のように、俺を見ないでくれッ。
どうしようもない感情が胸を締め付けてくる。
心臓が止まりそうだーー。
「ッ~‥!!」
あの頃は同等だった。何でも一緒にできたし、そこに差なんてなかった。それなのに今じゃこんなにも違う。惨めだ。嫌だ。かっこ悪いかっこ悪いかっこ悪いーー。
ハァハァと息が上がって苦しい。
俺は必死で親友の元へ掛ける。
大きな身体。牙。口、眼球。
騒音。煙。瓦礫の欠片。
死ぬ。これ絶対、俺とタケちゃん死ぬ。
「た、けッちゃ!!!!ーーー」
今更、どうしようもない事。
アイツらとは同じになれない。そんな頭も才能もないってランク付けされたから。
ランク付け‥。
そうだ‥ランク付けされなければ‥俺だって必死で努力すれば‥未来の事なんて、誰にも分からないのにーーー。
あと数センチ、タケちゃんに体当たりして、地面に伏せさせて、低空飛行してる龍と地面の間に伏せていれば運が良ければ助かるかも。なんて、一か八かの賭け。
俺は最後の一歩を踏み出す。
くじのショップバッグを抱えて蹲っているタケちゃんに全力で突進した。
「ふんがああああッッ!!!!」
「ッ、はえ‥?
ぐはっーー!?」
それは予想外で、
だけど、物事はうまくいかない事を証明していて
こういう時って、なんて言えばいんだろう。
ポヨンッと効果音がして、俺は弾力のあるタケちゃんの贅肉により後ろへと弾き飛ばされた。
刹那、破壊された建物の残骸が、爆風とともに俺に押し寄せてきて、流されるままその場に尻餅をつく。
嵐のように視界が曇り、風が吹き荒れる。
急に勢いよく立ち上がったタケちゃんが、唸り声を上げて、贅肉が風に靡いて‥あぁ、泣きそうだ‥。
とどめに瓦礫の破片みたいなのが、俺の足に刺さって、この歳で本気で涙が出た。
そうだ、これは不運゛って言うんだ。
はは、俺は運まで低ランクなんだな。
「ッーー、、おわ、た‥」
後悔、痛み、恐怖ーー
目の前には、はみ出した贅肉と、それを飲み込もうと大きな口を開ける2体の黒龍。
あぁ、もうどうでもいいや‥。
なんだか本当に情けなくて、恥ずかしくてどうしようもなくて。
陰キャ馬鹿同士仲良く死にましたって明日教室で笑い者にされて終わるだけ。
なんかこれ、Dランクっぽい死に方で笑える。はは、ははは
ほんと‥
クソくらえ世界。ーーー、
俺は静かに、目を閉じたーーー。
ーーーー、、、、。
「‥?」
ーーーー。
それは、とても不思議な音だった。
キーンッと頭に響くような変な音。
それを聞いた途端に、頭の中の線が一本ふにゃりと曲がってしまうような音ーーー。
「ふんぬッ、渡さんッ死んでも渡さんッ拙者の嫁達は僕が守るでござるッ!!ふおおおおおおおお
ーーいでよっ゛邪眼゛んんん!!」
たけちゃんの声だーー。
一瞬、頬を刺す風の流れが止まって、逆方向へとまた吹き荒れる。
視界以外の感覚が研ぎ澄まされる中、
いつまでもこない痛みに、疑問を感じた。
あれ?俺達、まだ死んでないのか?
それとも痛みも感じずに亡霊と化して‥、
俺は、恐る恐るソッと、閉じていた瞳を開ける。
「‥は、」
最初に頭に浮かんだ言葉はこうだ。
゛龍の丸呑み゛
思わず、口を開けて固まってしまうほど、
血が流れる足の痛みを忘れてしまうほど、
その光景はとても異様で、
とてつもなく、現実とかけ離れていて、
゛新たな能力を確認致しましたーーー
そんな言葉だけが、ポツリと頭に浮かんだのだった。
ーーーウガガガアアアアッッ!?!?ーーー
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