りんご飴

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りんご飴

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リンゴあめ

熱帯夜(ねったいや)は、日本の気象庁の用語で、「夜間(夕方から翌朝まで)の最低気温が摂氏25度以上のことをいう。(ウィキペディア引用))))

要するに暑い。こんなときは、エアコンの効いた部屋でアイスを食べる。ごく普通の人間ならそう考える。だけども、夏という季節はときに人間の頭のネジを奪い去って行ったりもする。
でなければ、こんな暑い夜、いわるゆ熱帯夜に人が集まるわけがない。謎。それはもうどんな天才が考えても見出せない答え。なぜ、今日、この場所に、なんのためにこんなこんなこんな、、、!




「花火を見るためだよ」




、、、、。





天才がいた。



その天才、わたしの友人、嶋野唯。

「もー、千尋、独り言、また漏れてたよ」


あどけない笑顔を見せる彼女はとても愛らしい容姿で、学校でもモテるタイプ。そして私の小さい頃からの幼馴染。

対してわたしは、人見知りの無口。決して美人ではない。とだけ言う。あいにくだが、現実は見ない主義だ。
学校では友達は唯のみ。

そんな正反対の2人がどーして17才になる今まで共に過ごしてこれたのかは謎だ。




そして2人はいま、浴衣をきて花火大会に来ている。
元々唯と行く予定だった子に彼氏ができてしまったらしく、私はその代わりである。全くもって人扱いの荒いのだが、十年以上付き合ってると母性というのが湧いてくるものである。


花火までまだ時間があるといって、りんご飴を買う。



りんご飴。
りんごの酸っぱさと、飴の甘みが相混ざりあって、それは甘酸っぱいという言葉で言い表す味覚。

まだりんごに届かず、ひたすらくどい甘みが続く。


ドンッ




誰かにぶつかる。





わたしより、かなり背丈のあるであろう相手を見上げると、同じクラスの相模だった。




「あーっ、さがみんじゃん!偶然!」

彼をあだ名呼びする唯はやっぱり、コミュ症のわたしからすれば、神である。

気づかないうちに、会話は2人の中で成り立ってしまっている。
互いにクラスの人気者。会話が弾む弾む。




相模の後ろにもう1人いることに気づく。


どっ どっどっ どっ



なんだうるさいな、花火上がったのか?
そうではないことは 、わかってる。
これはわたしの鼓動の音で、その理由はそのもう1人が川崎であったからであって。


川崎たくや

隣の席の地味めの男子。
これといった魅力があるわけではない。
けれどなぜか彼は私の鼓動をどうにかする能力が、あるらしく。それも謎である。


本当は謎なんかではなく、簡単なことなんだけれども。


きっと、彼も同じ状況なんだろう。クラスの人気者の嶋野さんと相模が話している、自分は全く会話に入れないな、、といった風に。

彼と私はよく似ている。
だから痛いほどよくわかる。
そんな彼をまじまじと見ていると、あっちもこちらに気づいた。


「あ、、綾瀬?」

恐る恐る話す感じも彼らしく、そして私らしい。


「、、うん」


「嶋野さんときてたんだな。」


「うん。」

「それなに。」


「りんごあめ.」

アップテンポなあちらの会話とは違ってなんて静寂な。


ため息をはく。


甲高い音がどこからとなく響く。追いかけるようにも爆発音。
あぁ。
花火だ。



「千尋!花火だよっ」
そう話す唯はすっかり相模の隣を占領していた。

つまりは、つまり。
今、川崎の隣は私だということだ。



いやでも意識してしまう。




彼の横顔が花火の明かりにぼんやりと照らされて


とりわけ整ったわけでもない顔がすこしばかりかっこよく見える。




「...好きだな」

思わず呟いてしまった



「なにかいった?」
花火の音が?惜き消していってしまったらしい。彼には聞こえなかった。



「、、いや、べつに、、」

不思議そうに見られるので俯向く。

なんてありきたりな。花火で聞こえなかったなんて、どこの少女漫画だよ、と心の中で突っ込む。
あー、恥ずかしい。かじったリンゴがなぜかいつまでも甘ったるい。



もう一度。

もう一度いえば届くだろうか



もう一度、、、



「す、、







「千尋てばっ!」

バシっ

肩に衝撃が走る。


目の前には唯。そこには彼も相模もいない。唯だけである。


「もう、急に固まっちゃうんだから。花火始まっちゃうよ!」




。。。。。。。



綾瀬千尋 17歳 趣味は妄想である。






歩き出す2人。
かじったリンゴはうんと酸っぱい。
こんなに酸っぱかっただろうか。。




なぜだか虚しい気持ちが胸中を占める。

唯が慌ただしく話す。

「あ、ねねね、あれ、さがみんじゃない?話し掛けようよっ」



相模?唯の指差す方向を見るとそこには確かに相模がいた。



そして、その後ろに

彼もいた。


まだ妄想の中?いや、肩の痛みの感覚はまだかすかに残っている。


これは現実。



再び淡い期待がふつふつと沸き起こる。



もう一度。。。




相模と唯の弾む会話。そして、困惑している彼の顔。


もうすぐ彼は私に気づくはず。
そして花火が始まる。

そしたら私は。。


期待を込めてかじったリンゴは甘酸っぱかった。























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