Eliminator~エリミネ-タ- 都市伝説の殺人代行サイト~あなたはアクセス出来ますか?

ユキナ

文字の大きさ
62 / 69
四の罪状

御願い

しおりを挟む
「何の用だ? 裏と表は介入不可は知っているはず……。依頼なら狂座ネットワークを通じてからにしろ」


通常の経路を通さない琉月の“それ”に、幸人の機嫌はすこぶる悪い。只でさえ本日は気が滅入っている時にこれだ。


『いえいえ、今回個人的に電話をお掛けしたのは、通常の依頼とは少しばかり勝手が違うのですよ』


「……どういう意味だ?」


幸人はその真意を図りかねている。


つまり琉月のそれは、依頼とは別用件という意味なのか。


『これはSS級であるのみならず、如月幸人さん“個人”としてへの御願いですかね? 詳しい事は仲介室でお話致します。では今夜、何時もの場所でお待ちしておりますね』


「オイ! 何を勝手に――」


“雫としてのみならず、個人的にだと?”


疑惑を感じる間も無く、通話は有無を言わせず打ち切られていた。


それは赴くかどうかの選択肢は無く、必ず来てくれとも取れる。


「何の電話だったんだ?」


怪訝そうに携帯片手に固まっている幸人へ、ジュウベエも興味津々。


幸人の口調から狂座からの電話である事は分かったが、依頼とは異なる内容、その真意が気になるのだ。


「仲介人から、俺に個人的に用がある……だとよ」


「おおっ! あの表は超美人らしい仮面女からか! こりゃあアレだな、深夜の逢瀬の御誘い」


猫らしからぬ、恋愛ドラマの見過ぎ感のある御都合展開思考だが、個人的にと言う事でジュウベエは茶化さずにはいられない。


「いやぁ、お前にも遂に春が来たか。アイツといい、ライバルは多そうだけどな、ククク」


「そんな訳有るか! そもそも興味が無い……」


変な方向に囃し立てるジュウベエへ、不満の意を述べる幸人だが――


「いや分かんねえぞぉ。彼女も満更ではないかもしれん。まあロリコンのお前には、彼女はちょっと年増かも知れんが」


「んなっ!?」


ジュウベエは止まらない。幸人の性癖まで暴露した感がある。


“ロリコン”


それが定かではないし冗談だろうが、幸人は図星でも突かれたかのように固まってしまった。


「なっ……何を馬鹿なっ!?」


どもった口調から幸人は明らかに焦っている。


「ククク、隠してもバレバレなんだよ」


「こいつ!」


尚も囃し立てるジュウベエに、幸人は首根っこを掴もうと手を伸ばすが――


「焦りで動きが鈍ってるぜ?」


ジュウベエはその俊敏な動きで楽にかわし、逆に幸人の背後を取った。


「まあ気持ちは分かるがよ……。いい加減自分の幸せにも目を向けな。人として……」


それは説教では無い。長々と共にした主人だからこその。


「もう……報われる事があってもいいんじゃねえのか?」


“幸人は未だに縛られ続けている”


それはエリミネーターとして、“あの日”以来己に課した誓約。


このままで良いはずがない。主人には人としての幸せを掴んで欲しいのだ。


だが幸人は振り返る事もないまま、ただ項垂れるように固まっている。


「――何を馬鹿な事を……。悪が報われる必要は無い。それがエリミネーターの道を自ら選んだ者の掟、例外の無い業……」


そして独り言のように呟くそれは、ジュウベエの気持ちが分かっていながらも曲げられぬ――


“哀しいまでの信念の証”


どんな綺麗事や大義名分を飾っても、エリミネーターは悪であり、許されざる人殺し集団である事に変わりはない。


「やれやれ……」


答は分かっていた。


ジュウベエはやりきれない溜め息を吐きながらも、幸人の左肩へと飛び乗る。


「とりあえず行くぞ」


それは仲介所への斡旋。


「いや、俺は……」


「返事はイエッサー、オッケー? まあ話聞いてみるだけでもいいじゃねえか(面白そうだし)」


渋る感のある幸人へ有無を言わせぬジュウベエ。


返事こそ無かったが、幸人はドアへと向けて動き出す。


「よっしゃ! さあ行くぜ、新たなる世界へ」


「…………」


ジュウベエのみじゃない。幸人もまた、これまでに無い何か新たな事が開かれる、ある予感がしていたのだ。


渋りながらも結局突き動かすのは、無意識なるそれか?


二人は何時も通り赴く。


琉月の待つ、闇の仲介所へ――
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

借金した女(SМ小説です)

浅野浩二
現代文学
ヤミ金融に借金した女のSМ小説です。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語

jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
 中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ  ★作品はマリーの語り、一人称で進行します。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

処理中です...