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第8章 決戦の刻
十話 絶望的事実
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「まさか、本当に一人で全員倒してしまうとは……な」
アザミは幾多もの屍を築き上げ、その上を鎮座する様に見えたユキへ感心した様に呟く。
「あと……一人」
ユキは刀をアザミに向け、構えながら見据える。
アザミはそれまで組んでいた腕を解き、褒め称える様に両の手の平を叩いた。
「一人で軍団長三名を含む精鋭五十一名を倒すとは、流石は特異点と云った処か。だが、これまでだ」
アザミはユキの顔を直視し、口許に笑みを浮かべながら続ける。
「お前の闘い、興味深く観戦させて貰ったが、その歳でそれ程までの強さに達するとは、特異点という事を差し引いても驚異的と云っていい」
アザミはユキの強さを純粋に称えた。これに裏は無い。本当に感心しているのだ、その口調から。
「そんなお前の唯一にして最大の欠点。まあ、これはどうしようも無い事だが……」
だがアザミは認めながらも冷静に、その如何ともし難い事実を伝え始めた。
「それはお前の体積の容量による、持続力の限界。どんなに強かろうが、その身体に見合った体力しか無い。平然さを装って隠してはいるが、スタミナが切れかかっている」
アザミの指摘に、ユキの額から冷汗が流れ落ちる。
“ちっ……見抜かれている”
事実ユキの体力は限界に来ていた。アザミが余裕を持って喋っている間に斬り掛かろうにも、スタミナが底を尽きかけた今、動きたくても動けず、仮に下手に動いても返り討ちに遭うだろう。
ならアザミが喋っている間に、少しでも体力を回復させるのが得策と判断した。
アザミに生半可な攻撃は通用しないと、その雰囲気で感じ取れるからだ。
「お前のスタミナが切れるのを待っていた訳でも無いが、まずは勝つ事を優先する。悪く思うな。それともう一つ、いや二つかな? 最期に絶望的な事実を教えておいてやろう」
アザミはゆっくりと、そして余裕を以てその事実を口にする。
「侍レベルーーまあこれはこの”時代”に合わせた強さの指標を現す数値だが、お前の侍レベルは臨界突破“第一マックスオーバーレベル”推定『150%』以上と云った処か。仮にまだ隠しているものを併せても、第二マックスオーバー迄は届かないだろう」
“……何を言っている?”
アザミはその現実のみならず、この“時代”という不明瞭な言葉を紡いだ。勿論、ユキにはそれが何を意味するのか分かる筈も無いが。
「まあ、これでも驚異的な数値だが……。ちなみに俺のレベルは臨界突破第二マックスオーバーレベル『205%』だ。これで解っただろう? 仮にお前が万全状態でも、俺には僅かに及ばない事が」
アザミの言っている事に全ては理解出来ないが、少なくともアザミが自身より強いであろう事を、ユキも最初に見た時から感じ取っていた。
事実アザミの臨界突破レベルは狂座に於いて、冥王に次ぐものを持っていた。レベルだけなら直属の中でも最強を誇る。
その他、臨界突破レベルが『200%』を超えている者は、四死刀と呼ばれた者達のみだった。だからこそ狂座は四死刀を、類を見ない脅威の存在として認知している。
「二つ目、冥王様のレベルは“臨界突破第三マックスオーバーレベル『300%』を軽く超えているーー」
それは埋め様の無い実力差、レベル差という現実を、アザミは冷酷に口にするのであった。
「まさか、本当に一人で全員倒してしまうとは……な」
アザミは幾多もの屍を築き上げ、その上を鎮座する様に見えたユキへ感心した様に呟く。
「あと……一人」
ユキは刀をアザミに向け、構えながら見据える。
アザミはそれまで組んでいた腕を解き、褒め称える様に両の手の平を叩いた。
「一人で軍団長三名を含む精鋭五十一名を倒すとは、流石は特異点と云った処か。だが、これまでだ」
アザミはユキの顔を直視し、口許に笑みを浮かべながら続ける。
「お前の闘い、興味深く観戦させて貰ったが、その歳でそれ程までの強さに達するとは、特異点という事を差し引いても驚異的と云っていい」
アザミはユキの強さを純粋に称えた。これに裏は無い。本当に感心しているのだ、その口調から。
「そんなお前の唯一にして最大の欠点。まあ、これはどうしようも無い事だが……」
だがアザミは認めながらも冷静に、その如何ともし難い事実を伝え始めた。
「それはお前の体積の容量による、持続力の限界。どんなに強かろうが、その身体に見合った体力しか無い。平然さを装って隠してはいるが、スタミナが切れかかっている」
アザミの指摘に、ユキの額から冷汗が流れ落ちる。
“ちっ……見抜かれている”
事実ユキの体力は限界に来ていた。アザミが余裕を持って喋っている間に斬り掛かろうにも、スタミナが底を尽きかけた今、動きたくても動けず、仮に下手に動いても返り討ちに遭うだろう。
ならアザミが喋っている間に、少しでも体力を回復させるのが得策と判断した。
アザミに生半可な攻撃は通用しないと、その雰囲気で感じ取れるからだ。
「お前のスタミナが切れるのを待っていた訳でも無いが、まずは勝つ事を優先する。悪く思うな。それともう一つ、いや二つかな? 最期に絶望的な事実を教えておいてやろう」
アザミはゆっくりと、そして余裕を以てその事実を口にする。
「侍レベルーーまあこれはこの”時代”に合わせた強さの指標を現す数値だが、お前の侍レベルは臨界突破“第一マックスオーバーレベル”推定『150%』以上と云った処か。仮にまだ隠しているものを併せても、第二マックスオーバー迄は届かないだろう」
“……何を言っている?”
アザミはその現実のみならず、この“時代”という不明瞭な言葉を紡いだ。勿論、ユキにはそれが何を意味するのか分かる筈も無いが。
「まあ、これでも驚異的な数値だが……。ちなみに俺のレベルは臨界突破第二マックスオーバーレベル『205%』だ。これで解っただろう? 仮にお前が万全状態でも、俺には僅かに及ばない事が」
アザミの言っている事に全ては理解出来ないが、少なくともアザミが自身より強いであろう事を、ユキも最初に見た時から感じ取っていた。
事実アザミの臨界突破レベルは狂座に於いて、冥王に次ぐものを持っていた。レベルだけなら直属の中でも最強を誇る。
その他、臨界突破レベルが『200%』を超えている者は、四死刀と呼ばれた者達のみだった。だからこそ狂座は四死刀を、類を見ない脅威の存在として認知している。
「二つ目、冥王様のレベルは“臨界突破第三マックスオーバーレベル『300%』を軽く超えているーー」
それは埋め様の無い実力差、レベル差という現実を、アザミは冷酷に口にするのであった。
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