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春の芽吹き

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〔シュワルツside〕


あれから慰霊碑に花を供えに行って、さらに月日が経過した。
城から連絡があり、カイゼルから茶会のお招きがあった。
今回は、共に勇者一行として旅をしたサーニャも一緒に。

「カイゼルったら呼ぶのが遅いのよ!」

「街を復興させるのに忙しいに決まってるだろ」

「それでも遅ーい!」

頭から生えた大きな耳をピクピクと動かしながら文句を言う。
サーニャは人間とヤマネコのハーフで、いわゆる獣人だ。
幼馴染でもあり、俺がカタストロフ討伐部隊に選ばれた際に
無理矢理付いてきた奴だ。付いてきた理由は分からないが、戦力には
なるので同行が許された。


「そういえば、デリクがいるんだ」

「え…?」

わかりやすく眉間に皺を寄せる。

「デリクって、あのデリク…?」

「そうだ。しかも、妙な姿になってる」

「妙って、どんなのよ」

「髪が白くて、目と肌が黒い」

「何それ、会ったらチビりそう」

予想していた反応とは大きく違って、カタストロフの
元凶であるデリクに怒りを見せる様子はない。
カタストロフ討伐の際も、国を守るために勇者一行に自ら
志願したわけではないので、そもそも興味がないのだろうか。
とにかく、能天気すぎる。

「じゃあ前までは可愛さで勝てないと思ってたけど、
 今ならサーニャの方が可愛いんじゃなーい?!」

「いや、デリクは前より可愛いかも」

「はぁー?!」

「刺々しさがなくなったんだよ」

「え?」

「別人みたいに大人しい」

「嘘、あんなキッツイ性格なのに?」

「サーニャより清楚な感じあるぞ」

「なによそれ?!てか!!今日私髪型可愛いはず
 なんですけど!!ほら!!」

いつも通りのおさげかと思いつつよく見ると、細かく
編み込みが施されている。が、男の俺には可愛さはよくわからない。

「はいはい、着いたぞ」

門を守る兵士に声をかけるとそのまま通された。
カタストロフ終息後一度来た長い回廊。
デリクと再会した裏の庭を思い起こす。
今日もいるのかな、と思いながら
謁見の間に足を運んだ。
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