目覚めたら猫耳⁉ ~神隠しで別宇宙のアイドル級猫耳メイド魔法使い⁉に大変身!~

INASAKU6

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第183話 ルクス・マギナ攻略作戦 ⁉其の五十七

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 洞窟内は、息をするのも困難なほどの緊張感に包まれていた。

 地盤は脆弱で、ほんのわずかな振動でも崩落を引き起こす危険があった。

 壁や天井には無数の亀裂が走り、まるでこの地底の空間全体が息を呑むように静かに揺れている。

 リリカの足元も、不規則な揺れに反応して微妙に軋む感覚が伝わってきた。

 目の前に立ちはだかるのは、双頭の蛇――その巨大な体は洞窟の暗闇の中でもはっきりとした存在感を放っている。

  その双頭の蛇がリリカを同時に睨みつけ、鋭い牙をむき出しにして威嚇の唸り声を響かせた。

 蛇の一撃をまともに受ければ無事では済まない。

 しかし、蛇を倒さなければここからの脱出も不可能だった。

 リリカの脳裏には、魔力を解放して一気に強力な攻撃を放つ選択肢が浮かんだ。

 自分の光と火の魔法ならば、この蛇の硬い鱗を焼き尽くし、瞬く間に仕留めることができるだろう。

 しかし、それは同時に洞窟全体を崩壊させる危険を孕んでいた。

「ステラみたいに……もっと魔力をコントロールできれば……」

 そう呟きながら、リリカは自分の力不足に歯がゆさを感じた。

 ステラであれば、この状況でも精密に魔力を扱い、周囲に影響を与えずに蛇を倒すことができるだろう。

 しかし今のリリカにそのような余裕はなかった。

 それでも、目の前で揺らめく敵の姿を見つめ、リリカの中に新たな決意が芽生えた。

 自分にできる範囲で、最善を尽くす。

 それが今の自分の戦い方だと悟ったのだ。

 深く息を吸い込み、彼女は心の中で言い聞かせた。

「一撃で仕留める!やるしかない!」

 リリカの声は洞窟の中に静かに響いたが、その言葉には揺るぎない覚悟が込められていた。

「洞窟がこれ以上崩れないようにしないと。物理攻撃のみ……となると.....」

 リリカは腰の短剣を手に取り

「ファイアーブレード!」

 短剣に炎の魔力を注ぎ込む。

 だが、次の瞬間。

 「うう......何。急に気分が......」

 魔力が急に途切れ、血の気が引いていく。

 「こんな時に......サーガ! 聞こえる?」

 サーガの応答もない。

 「火龍!」

 得意の炎の魔法も発動できず、みるみる体の力は抜けていき、メイドアーマーさえ消えてしまった。

 「魔法が使えない......」

 その状況は、リリカにとって圧倒的に不利な条件を意味していた。

 魔力が使えなければ、双頭の蛇に対抗する術はほとんどなくなる。

 しかし、それでも彼女には戦う以外の道がなかった。

 魔法が使えず、かつ洞窟の崩落を防ぎつつ蛇を倒すという、絶望的ともいえる状況に直面している。

 リリカは短剣を強く握りしめた。その剣は、魔法の力を一切帯びていない純粋な武器だった。

 冷たい鉄の感触が彼女の指先に伝わる。

 深呼吸をして心を落ち着けた後、リリカは静かに地を蹴り

「やるしかない……!」

 リリカは短剣を片手に双頭の大蛇に立ち向かった。
  
 「チャチャお願い!」

 リリカはチャチャの背中に乗り、大蛇の攻撃を交わしながら宙を舞う。

 片方の大蛇の背後に回り込むと脳天めがけて短剣を力一杯突き刺した!

 大蛇もたまらず振り払おうとするがリリカの右足が短剣ごと大蛇の脳天を突き破った!

 「やったね!チャチャ。魔法無しでもやれる。あと一匹!」

 リリカは再びチャチャの背中に飛び乗ると喜びの声をあげた。
 
 

 だが、それも束の間。

「……ッ! 何なの?」

 突然、右足に冷たい感覚と鋭い痛みが走った。

 視線を下に向けると、蛇の血が足元にどっぷりと付いているのが目に入った。

 その血はどす黒く、冷たさが肌を刺すようだった。

 リリカの皮膚に触れた部分は赤黒くただれ始め、見る見るうちに感覚が失われていく。

「毒……?」

 リリカの表情から笑みが消え、不安の色が濃くなった。

 右足が使えなくなり、体重を支えることさえ困難になっていく。

 その時、洞窟内に低く唸る音が響いた。

 顔を上げると、もう片方の蛇の頭が光る瞳でリリカを睨みつけていた。

 その怨念のこもった視線は、まるで彼女を地獄へ引きずり込むような力を持っていた。

「やばいな……この状況」
  
 リリカの胸に焦燥感が広がる中、蛇が再び突進してきた。

 その速度は尋常ではなく、リリカは右足の痛みと毒による影響で回避することができなかった。

「ニャオ――!」
  
 小さな声が洞窟内に響いた。リリカの前に飛び出したのは、愛猫のチャチャだった。

 小さな体が盾となり、蛇の牙を防ぎ、その喉元に鋭い爪を突き立てた。

「チャチャ!」
  
 リリカの叫びが洞窟内に反響する。

 だが、蛇は咄嗟に頭を振り、チャチャを牙で咥えると、無情にも地面に叩きつけた。

「チャチャ――!」
  
 リリカの叫び声が洞窟全体に響き渡る。チャチャの小さな体は地面に転がり、そのまま動かなくなった。

「チャチャ……ごめんね……」
  
 リリカの胸に怒りと悲しみが渦巻く。

 彼女は涙を拭い、左足だけで立ち上がった。

 蛇は再びリリカに向かって突進してきた。

 その巨体が洞窟全体を揺るがし、殺気が彼女を襲う。

 リリカはその動きを凝視し、一瞬の隙を見極めた。

「来い!」

 渾身の力で左足だけを使って跳躍し、蛇の牙をかわして背後に回り込む。

「ここだ!」
  
 彼女は手刀を大蛇の脳天に振り下ろし、全力で蛇の鱗の隙間に打撃を加えた。

 蛇が苦しみの咆哮を上げ、その巨体を激しくくねらせる中、リリカは何度も攻撃を繰り返した。

 指先が蛇の毒に触れるたびに激痛が走るが、彼女は耐え抜いた。

「倒れるまで、何度でもやる!」

 蛇は体を激しくくねらせてリリカを振るい落とすが、リリカは左足で洞窟の壁を蹴り、地面に着地した。

 そして、崩れた岩を拾い上げると、それを力いっぱい蛇の顔面に投げつけた。

「これでもくらえ!」

 岩が蛇の目に直撃し、その動きが一瞬止まる。その隙を逃さず、リリカは蛇の頭に飛び乗り、全力で拳を振り下ろした。

「これで終わりよ!」

 渾身の一撃が蛇の頭部を貫き、洞窟内に鈍い音が響いた。

 蛇の巨体が崩れ落ち、ついに完全に動きを止めた。

 リリカは荒い息をつきながらその場に座り込んだ。

 洞窟内には静寂が戻り、双頭の蛇の巨体は沈黙していた。

 ふと、彼女の視界にチャチャの小さな体が映った。

 震える体を引きずりながら彼の元へ向かうと、その小さな体に手を伸ばした。

「チャチャ……大丈夫?……」
  
 リリカは彼を抱き上げ、その温もりを感じた。微かに動くチャチャの体に、彼女の目から涙が溢れる。

「よかった……本当に……よかった……」
  
 リリカはチャチャをしっかりと抱きしめ、その小さな命が無事であることに心から感謝した。

 洞窟内の極限状態の中、リリカは双頭の巨大な蛇に挑む。魔力を封じられ、体一つで挑む覚悟を固めた彼女は、毒に侵され右足が使えない状況で戦い抜く。その中で愛猫チャチャが彼女を守るために身を挺し、倒されてしまう。激昂したリリカは渾身の力で蛇を仕留める。チャチャの無事を確認し安堵するが、自分の未熟さと戦いの難しさを痛感するリリカであった。――。
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