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5 しょうじょとなまえ
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その日の夕方、小雨がちらついてきて二人は急いで小屋に避難した。
ひとしきり、息を切らしたあと、話始めたのはキラの方からだった。
「そういえばおねえさん。」
「お、おねえさん...!」
少女は、もう聞かないであろうと思っていた自分の呼び名を聞き、感動に陥った。
頬を染め、嬉しそうに視線を泳がせるその姿は、とてもおねえさんとは言いがたい。
少し面倒くさい、と感じながらも続ける。
「このいかだよくできてますね。...おねえさんが作ったものではないでしょう?」
「...そうですけど。」
少女は、自分の身長を確認したあと、言葉を続けたキラにたいして心底不満げに言葉を返した。
「誰が作ったものなんですか?」
「そう。それ、私知らないんだよね。」
「そうなんですね。」
「...。」
「...。」
((会話が続かない...!))
お互い、闇を持った少女である。
下手に質問をして、地雷を踏んだときが一番こわいのである。
これから、恐らく一緒に暮らすにあたって、仲が悪くなることだけは避けたかった。
「そ、そうだ、そういえばキラちゃん。」
「あっ、はい。なんでしょう。」
お互い緊張している。
相手のでかたをうかがった少女は、気になっていた質問を口にする。
「何で名前だけ教えてくれたの?」
「...?」
うまく伝わらなかったようで、回答者は首をかしげた。
「ああいや、キラちゃんに私が、質問攻めしたとき、名前だけ教えてくれた時の。」
この少女の本質はこっちである。
キラのことを少しでも知りたいと考えるのも、自然なことであった。
「あぁ、その、
「...私の名前、私の友達がつけてくれたんですよ。」
少女は静かに答えた。
どこか遠くを見るようにして。
「...その友達、男?女?」
「同じくらいの年の、女の子でした。」
「でした」。
少女もなにかを察していた。
その上で、
「えっ、あの...」
「いいこいいこ。」
「あぅ、はい」
その上で、言葉をかけなかったのは、相手を思う気持ちだったのだろうか。
少し背伸びをするようにして、キラの頭に手をのせる少女。
「...おねえさん、」
「はいはい、なに?」
キラは、自分の表情がわからなく、そっぽを向いたまま少しづつ質問の言葉を話した。
「...おねえさん名前何て言うんですか?」
「ないよ?」
「えっ。」
驚くキラを気にするようすもなく、少女は言葉を続ける。
「独り暮らしで、名前も要らなかったからね。」
「えっと...、じゃあ呼ばれてたあだ名とか、師匠がいたんですよね。」
困惑した状況のなか、微かな記憶をたよりに言葉を紡ぎだす。
「少女A。」
「ひどっ。」
キラは驚いてばかりであった。
「師匠、元々頭が少しおかしいからね、自分のことを、他人に、幼女Aと紹介していた。」
「少し...?」
キラの頭のなかでは、かなりの変態が浮かんでいた。
「見た目は、ただの小さい娘だよ。見た目は。」
「そ、そうなんですか。」
もうなにも信じられなくなりそうだった。
「今、その方の場所を、目指してこのいかだが進んでるんですよね...。今どのくらいですか?」
「うーん、分かんないんだわ。」
「ぇえ...。」
心の底から心配になった。
のんびりで、後先考えず動いている少女。
はたして信じていいものか。
「常に安全なルートを進むようになっているらしいから。操縦はできないよ。」
「...自動運転機能ついてるんですか!?バッチリ科学じゃないですか!」
ファンタジーの世界と言っておきながら見事な手のひら返しだった。
「でも、壊れてるから。そのせいで遠回りになってるらしい。
「どっちにしても、目的地も、進行状況も、到着予想時間もわからんよ。」
「ほぼ、漂流じゃないですか...。」
頑丈には見えるものの、いつタイタニックしてもおかしくない。
乗ったあとに、ジェットコースターだと知らされたようなものだった。
「現在進行形で、漂流中。題して、「ヒョウリュニング」」
「取って付けたかのような、現在進行形のingやめてください。」
「突っ込みが辛辣だぁ」
すでにボケとつっこみの役割分担が完了した。
「ねえキラちゃん。」
「なんですか?」
「それでも、一緒に来る?」
「...私、他にいく宛がないんですけど。こんな大海原で。この質問一択ですよね?」
笑いながら、どこか嬉しそうに。
「だめだよ、キラちゃん。今のところは「先輩!わたし、どこまでもついていきますぅ!」って言う萌えポイントだよ。」
「わたし、なんて突っ込めばいいですかね」
いくら相手より背が少し高くてもこの場においては関係なかったのだ。
ひとしきり、息を切らしたあと、話始めたのはキラの方からだった。
「そういえばおねえさん。」
「お、おねえさん...!」
少女は、もう聞かないであろうと思っていた自分の呼び名を聞き、感動に陥った。
頬を染め、嬉しそうに視線を泳がせるその姿は、とてもおねえさんとは言いがたい。
少し面倒くさい、と感じながらも続ける。
「このいかだよくできてますね。...おねえさんが作ったものではないでしょう?」
「...そうですけど。」
少女は、自分の身長を確認したあと、言葉を続けたキラにたいして心底不満げに言葉を返した。
「誰が作ったものなんですか?」
「そう。それ、私知らないんだよね。」
「そうなんですね。」
「...。」
「...。」
((会話が続かない...!))
お互い、闇を持った少女である。
下手に質問をして、地雷を踏んだときが一番こわいのである。
これから、恐らく一緒に暮らすにあたって、仲が悪くなることだけは避けたかった。
「そ、そうだ、そういえばキラちゃん。」
「あっ、はい。なんでしょう。」
お互い緊張している。
相手のでかたをうかがった少女は、気になっていた質問を口にする。
「何で名前だけ教えてくれたの?」
「...?」
うまく伝わらなかったようで、回答者は首をかしげた。
「ああいや、キラちゃんに私が、質問攻めしたとき、名前だけ教えてくれた時の。」
この少女の本質はこっちである。
キラのことを少しでも知りたいと考えるのも、自然なことであった。
「あぁ、その、
「...私の名前、私の友達がつけてくれたんですよ。」
少女は静かに答えた。
どこか遠くを見るようにして。
「...その友達、男?女?」
「同じくらいの年の、女の子でした。」
「でした」。
少女もなにかを察していた。
その上で、
「えっ、あの...」
「いいこいいこ。」
「あぅ、はい」
その上で、言葉をかけなかったのは、相手を思う気持ちだったのだろうか。
少し背伸びをするようにして、キラの頭に手をのせる少女。
「...おねえさん、」
「はいはい、なに?」
キラは、自分の表情がわからなく、そっぽを向いたまま少しづつ質問の言葉を話した。
「...おねえさん名前何て言うんですか?」
「ないよ?」
「えっ。」
驚くキラを気にするようすもなく、少女は言葉を続ける。
「独り暮らしで、名前も要らなかったからね。」
「えっと...、じゃあ呼ばれてたあだ名とか、師匠がいたんですよね。」
困惑した状況のなか、微かな記憶をたよりに言葉を紡ぎだす。
「少女A。」
「ひどっ。」
キラは驚いてばかりであった。
「師匠、元々頭が少しおかしいからね、自分のことを、他人に、幼女Aと紹介していた。」
「少し...?」
キラの頭のなかでは、かなりの変態が浮かんでいた。
「見た目は、ただの小さい娘だよ。見た目は。」
「そ、そうなんですか。」
もうなにも信じられなくなりそうだった。
「今、その方の場所を、目指してこのいかだが進んでるんですよね...。今どのくらいですか?」
「うーん、分かんないんだわ。」
「ぇえ...。」
心の底から心配になった。
のんびりで、後先考えず動いている少女。
はたして信じていいものか。
「常に安全なルートを進むようになっているらしいから。操縦はできないよ。」
「...自動運転機能ついてるんですか!?バッチリ科学じゃないですか!」
ファンタジーの世界と言っておきながら見事な手のひら返しだった。
「でも、壊れてるから。そのせいで遠回りになってるらしい。
「どっちにしても、目的地も、進行状況も、到着予想時間もわからんよ。」
「ほぼ、漂流じゃないですか...。」
頑丈には見えるものの、いつタイタニックしてもおかしくない。
乗ったあとに、ジェットコースターだと知らされたようなものだった。
「現在進行形で、漂流中。題して、「ヒョウリュニング」」
「取って付けたかのような、現在進行形のingやめてください。」
「突っ込みが辛辣だぁ」
すでにボケとつっこみの役割分担が完了した。
「ねえキラちゃん。」
「なんですか?」
「それでも、一緒に来る?」
「...私、他にいく宛がないんですけど。こんな大海原で。この質問一択ですよね?」
笑いながら、どこか嬉しそうに。
「だめだよ、キラちゃん。今のところは「先輩!わたし、どこまでもついていきますぅ!」って言う萌えポイントだよ。」
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