薄明宮の奪還

ria

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第3部.リムウル 第3章

27.暴走

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「魔力の暴走か……どうしたんだ、いったい? よく眠っていたと思ったのに」

見慣れたトパーズの瞳が、すぐ近くで気遣わしげに自分を見下ろしている。

アイリーンにはそれが、この世にまたとない、尊く美しい奇跡の宝石と思えた。

こみ上げてくる涙を押さえ込むように、アイリーンはまたギュッときつく目を閉じ、ギメリックにしがみついた。

「……あなたがどこかへ行ってしまったかと思って……」

「……」

どうしてこうも余計な時に察しが良いのかとあきれながら、ギメリックは無言で彼女を運び、元通りベッドに寝かせた。

毛布をかけてくれた彼の手をとって、アイリーンは自分の頬に押し当てた。

その温かさに目を閉じて安堵の息を漏らし、小さな声でつぶやく。

「……良かった……生きてる……」

「……バカだな。危なかったのはお前の方だ」

“ウソ!……死のうとしていたくせに!”

アイリーンはそう思ったが、口に出すのがためらわれた。

“いったい、何をどう言えば、この人の心の闇を払ってあげられるのだろう……”


石の力で過去を旅してきたとは言え、訪れた場面はとぎれとぎれで、それらをつなぎ合わせてよくよく考えてみることもできていない。

理解よりも混乱の方が大きく、アイリーンの中で全ての謎が解けたわけでもなかった。

それでも、ギメリックについて、今はかなりのことを知っている。

そのあまりにも悲運に満ちた人生に、自分の方が圧倒され、言うべき言葉が見つからないのだった。


不安そうに見つめてくるアイリーンに、ギメリックはゆっくりと、噛んで含めるように言って聞かせた。

「ここはソルグの村と言って、魔力保持者たちが住む村だ。大きな結界で守られている、何も心配はない。お前のことも頼んでおいた」

「……どこへも行かないで。私のそばにいてくれる?」

一瞬、うろたえた様子のギメリックに、アイリーンはますます不安そうな表情になり、彼の手を握る指に力をこめた。


そんな彼女を見下ろし、ギメリックは考えた。

彼女が不安に思うのは……当然かも知れない。

同じ魔力を持つ者同士と言っても、村人たちのほとんどは一面識もない他国の民だ。

アドニア城の中ですら、ろくに人との関わりがなかった彼女にとって、ひとりぼっちで他人の中に置いていかれるのはどんなに心細いことだろう……。

それに、村人たちのあの様子では、彼女を石の主と納得したかどうか疑わしい。

よもや村から追い出すようなまねはしないだろうが、彼らが本心から彼女を受け入れたと思えるまで、安心できない。


やがて彼は、諦めたようにため息をついた。

「とにかく、もう少し寝ろ!……ここにいるから」

“せめて彼女の体が回復し、村人たちと馴染めるまで……どとまるしかなさそうだな……”

そんなギメリックの想いを感じ取ったのか、アイリーンは少し落ち着いた様子で、ベッドに身を沈めた。

ギメリックは緩んだ彼女の指から手を引き抜き、テーブルのそばから椅子を引き寄せてそれに座った。
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