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第2の調査
瀬戸内の気候
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瀬戸内州の気候についても調査したいと思う。ひと口に瀬戸内州と言っても、北部から南部まで全て同じ気候というわけではないのだ。具体的には、日本海側と瀬戸内海の沿岸部、そして太平洋側と大きく3つに区分することが出来る。
まずは日本海側から見てい区ことにしよう。日本海側では大陸の影響を大きく受ける。乾いた風が常に吹き寄せてくる。海水の蒸発によって雲が少しずつ大きくなって陸地の上を通過していく。それが北瀬戸内区を横に貫く山地にぶつかって上昇していく。そして山より高くなった位置まで届くとそこで冷やされて、周囲の雲とくっついて一緒になる。
そのくらいの高さには緩く風が吹いており、雲の塊はゆっくりと南下する。そして北瀬戸内区の南部に湿った空気として流れ込み、雨を降らせる。大陸からの風が強ければ強いほど、雨量が多くなることが分かっている。なお、これはいつの時代も変わらずに続いている気象である。
実際にこの時代でも風速などを調べてみたところ、現代と全く変わらないことが分かった。現代においては気候についての知識があるので、風速を観測することで雨の強さを予測することが出来る。しかしこの時代ではそういう概念はないし、まして科学は発達していない。
万物が精霊信仰によって支えられ、全ては天の意志によるものだと信じられていた時代である。そのため、自然災害とその被害すらも仕方のないこと、受け入れるべきものだと考えていた記録が残っている。しかし、南西州で見たように噴火に備えて避難穴を作っている村もあった。
なので実際に自分の目で見て確かめてみることが重要である。この時代の記録によれば水害が起こったことになっている。時期としては稲刈り後で米に被害は無かったと書かれている。しかし人的被害については書かれていない。おそらく数日中には実際に大雨が降ることだろう。その様子をしっかりと観察したい。
具体的な日付は記録に書かれていないが、その日は急に気温が上がったとなっている。ここ数日は平均気温より低い日が続いている。温度計で観測しているが今のところ気温が上昇する気配はない。しばらくは様子観察ということになる。
もし稲刈りの時期よりも前に水害が起こってしまうと、米に大打撃となってしまう。そうなれば納税が苦しくなるし、食糧不足になってしまうことは想像に難くないだろう。普段は雨による恩恵にあずかっているわけだが、それが時として脅威になることもありうるのだ。
それから数日が経った。とうとうその日がやってきた。今日は朝からすごく暑いし、湿度もかなり高くなっている。昨日の夜中あたりからずっと雨が降り続いている。そこまで強くはないが、止む気配は全くない。
少しずつ雨が強くなってきている。このまま降り続けば、被害が出てもおかしくないだろう。川の状況を見てみると、溢れる寸前まで水位が上昇している。すぐ近くに人家があるわけではないものの、3分の2以上が浸水してしまいそうな低い場所に住んでいる。高台に住んでいるのは、身分の高い一部の人間だけだ。
山の方を見てみると、側面から水が流れ出している。これ以上は貯めれないくらいに地中に水分が溢れているのだろう。この状況ではいつ土砂災害が起きてもおかしくはない。記録上は雨しか書かれていないが、この時代に土砂災害そのものが認知されていたかどうかは不明である。
バケツをひっくり返したような、本格的な豪雨になってきた。風は強くないが、外に出ている人は誰もいない。家の中で家族が一箇所に固まって座っている。あまりの雨音に、泣いてしまっている子どもが多い。これだけの音であれば無理もない。大人が寄り添っている。
さらに雨足が強くなってきた。住民たちは避難する気配がない。ずっと家の中に留まり続けている。やはりこの地域では避難という概念はないようだ。そして川が氾濫してしまったようだ。ものすごい勢いで濁流が村に押し寄せてくる。あらゆるものが濁流で押し流されている。住居も例外ではない。住民が逃げ惑い、慌てふためいている。
高台に住む身分の高い人たちが、こっちへ逃げるように指示している。何とか辿り着けた人もいるが、多くの人が濁流に飲み込まれてしまったようだ。残念なことだが、我々が手出しすべきではない。歴史を変えてしまうことは許されないのだ。複雑な気持ちになるが、それはメンバーも同様だ。メンタルケアには気を配らなければならないだろう。
無事に避難できたのは3分の1もいないだろう。家族の中で一人だけ生存したり、子どもだけが生存したりと、孤独感やサバイバーズ・ギルドに苛まれる可能性も十分にあるだろう。この時代ではおそらく地域で支え合うのだろう。これまでの調査でつながりの強さを見てきた。
その上で、地域で支え合って困難を乗り越えていくであろうことが想像できるのだ。きっとこの地域でも、先の南西州のように復興を遂げることだろう。人類の力は並大抵のことでは潰えないのだ。
まずは後片付けから作業開始だ。みんなで土砂をすくって一箇所にまとめている。子どもたちも小さな容器を使いながら、せっせと土砂を運んでいる。自分にできることをそれぞれが頑張っている。その姿を見ていると、みんなすごく頼もしく見える。
午前の作業が終わったようだ。住居などの優先すべきところから手をつけて、半分ほど終わったみたいだ。被害としては土砂災害は無かった。しかし、地盤が緩んでいる状態に変わりはない。後から崩れる可能性もあるのだ。
住民はお昼休憩のようだ。豪雨の影響でかなりの食材がやられてしまったはずである。どのようにして食事を作るのか。その様子を見ていたところ、各住居の地下部分が貯蔵スペースになっているようだ。そのおかげで食材は無事だったのだ。理由としては地下の方が涼しいからというものだが、それが結果的に防災にもつながったわけだ。
とはいえ畑は被害を受けている。今後はどうするのだろうかと思ったが、人口は急激に減少している。それに悲しくも犠牲となった世帯では食糧が余っているわけだ。それを均等に分配することになった。もちろん個人を偲ぶ気持ちは忘れていないようだが。
お昼を挟んだのちに、午後の作業が再開した。住居地域はあと少しで片付けが終わる。午後からは二手に分かれて作業するようだ。もう一方のグループは畑や墓地の片付けをするようだ。少しずつ復興が進んでいく。
住居地域では片付けの後、建物の整理もある。水に浸かったので、ほとんどの家が壊さなければならない状態だ。この時代には木造建築しかない。水だけなら腐る前に対応すればいいのだが、泥水とあっては、木材へのダメージはより大きくなってしまう。結局高台にある建物を除いて全てを取り壊すことになった。
取り壊しは力のある男性陣が行っている。女性や子どもたちが木材を小さくして運んでいる。しっかりと乾かして、燃料にするようだ。あらゆる資源を無駄にしない、素晴らしい考えだ。取り壊しにはそれなりの手間を要する。時間がかかりながらも夕方までに半分は終わらせることができた。
今日の作業が終わったところで、みんなが集合し進捗状況を確認しあった。住居地域では残り半分の取り壊しと新しい住居の建築だ。墓地は作業が終わって、畑も植えるための準備をするだけだ。住居用の木材を明日から切り出す作業も必要になってくる。人員配置をみんなで話し合うようだ。
その日の夜、今回の水害で犠牲となった人たちの葬儀が行われた。みんなしっかりと供養して、墓地に埋葬された。みんな同じ村の仲間であり、その死を悲しんでいるようだ。心からの弔いをしているのだった。
まずは日本海側から見てい区ことにしよう。日本海側では大陸の影響を大きく受ける。乾いた風が常に吹き寄せてくる。海水の蒸発によって雲が少しずつ大きくなって陸地の上を通過していく。それが北瀬戸内区を横に貫く山地にぶつかって上昇していく。そして山より高くなった位置まで届くとそこで冷やされて、周囲の雲とくっついて一緒になる。
そのくらいの高さには緩く風が吹いており、雲の塊はゆっくりと南下する。そして北瀬戸内区の南部に湿った空気として流れ込み、雨を降らせる。大陸からの風が強ければ強いほど、雨量が多くなることが分かっている。なお、これはいつの時代も変わらずに続いている気象である。
実際にこの時代でも風速などを調べてみたところ、現代と全く変わらないことが分かった。現代においては気候についての知識があるので、風速を観測することで雨の強さを予測することが出来る。しかしこの時代ではそういう概念はないし、まして科学は発達していない。
万物が精霊信仰によって支えられ、全ては天の意志によるものだと信じられていた時代である。そのため、自然災害とその被害すらも仕方のないこと、受け入れるべきものだと考えていた記録が残っている。しかし、南西州で見たように噴火に備えて避難穴を作っている村もあった。
なので実際に自分の目で見て確かめてみることが重要である。この時代の記録によれば水害が起こったことになっている。時期としては稲刈り後で米に被害は無かったと書かれている。しかし人的被害については書かれていない。おそらく数日中には実際に大雨が降ることだろう。その様子をしっかりと観察したい。
具体的な日付は記録に書かれていないが、その日は急に気温が上がったとなっている。ここ数日は平均気温より低い日が続いている。温度計で観測しているが今のところ気温が上昇する気配はない。しばらくは様子観察ということになる。
もし稲刈りの時期よりも前に水害が起こってしまうと、米に大打撃となってしまう。そうなれば納税が苦しくなるし、食糧不足になってしまうことは想像に難くないだろう。普段は雨による恩恵にあずかっているわけだが、それが時として脅威になることもありうるのだ。
それから数日が経った。とうとうその日がやってきた。今日は朝からすごく暑いし、湿度もかなり高くなっている。昨日の夜中あたりからずっと雨が降り続いている。そこまで強くはないが、止む気配は全くない。
少しずつ雨が強くなってきている。このまま降り続けば、被害が出てもおかしくないだろう。川の状況を見てみると、溢れる寸前まで水位が上昇している。すぐ近くに人家があるわけではないものの、3分の2以上が浸水してしまいそうな低い場所に住んでいる。高台に住んでいるのは、身分の高い一部の人間だけだ。
山の方を見てみると、側面から水が流れ出している。これ以上は貯めれないくらいに地中に水分が溢れているのだろう。この状況ではいつ土砂災害が起きてもおかしくはない。記録上は雨しか書かれていないが、この時代に土砂災害そのものが認知されていたかどうかは不明である。
バケツをひっくり返したような、本格的な豪雨になってきた。風は強くないが、外に出ている人は誰もいない。家の中で家族が一箇所に固まって座っている。あまりの雨音に、泣いてしまっている子どもが多い。これだけの音であれば無理もない。大人が寄り添っている。
さらに雨足が強くなってきた。住民たちは避難する気配がない。ずっと家の中に留まり続けている。やはりこの地域では避難という概念はないようだ。そして川が氾濫してしまったようだ。ものすごい勢いで濁流が村に押し寄せてくる。あらゆるものが濁流で押し流されている。住居も例外ではない。住民が逃げ惑い、慌てふためいている。
高台に住む身分の高い人たちが、こっちへ逃げるように指示している。何とか辿り着けた人もいるが、多くの人が濁流に飲み込まれてしまったようだ。残念なことだが、我々が手出しすべきではない。歴史を変えてしまうことは許されないのだ。複雑な気持ちになるが、それはメンバーも同様だ。メンタルケアには気を配らなければならないだろう。
無事に避難できたのは3分の1もいないだろう。家族の中で一人だけ生存したり、子どもだけが生存したりと、孤独感やサバイバーズ・ギルドに苛まれる可能性も十分にあるだろう。この時代ではおそらく地域で支え合うのだろう。これまでの調査でつながりの強さを見てきた。
その上で、地域で支え合って困難を乗り越えていくであろうことが想像できるのだ。きっとこの地域でも、先の南西州のように復興を遂げることだろう。人類の力は並大抵のことでは潰えないのだ。
まずは後片付けから作業開始だ。みんなで土砂をすくって一箇所にまとめている。子どもたちも小さな容器を使いながら、せっせと土砂を運んでいる。自分にできることをそれぞれが頑張っている。その姿を見ていると、みんなすごく頼もしく見える。
午前の作業が終わったようだ。住居などの優先すべきところから手をつけて、半分ほど終わったみたいだ。被害としては土砂災害は無かった。しかし、地盤が緩んでいる状態に変わりはない。後から崩れる可能性もあるのだ。
住民はお昼休憩のようだ。豪雨の影響でかなりの食材がやられてしまったはずである。どのようにして食事を作るのか。その様子を見ていたところ、各住居の地下部分が貯蔵スペースになっているようだ。そのおかげで食材は無事だったのだ。理由としては地下の方が涼しいからというものだが、それが結果的に防災にもつながったわけだ。
とはいえ畑は被害を受けている。今後はどうするのだろうかと思ったが、人口は急激に減少している。それに悲しくも犠牲となった世帯では食糧が余っているわけだ。それを均等に分配することになった。もちろん個人を偲ぶ気持ちは忘れていないようだが。
お昼を挟んだのちに、午後の作業が再開した。住居地域はあと少しで片付けが終わる。午後からは二手に分かれて作業するようだ。もう一方のグループは畑や墓地の片付けをするようだ。少しずつ復興が進んでいく。
住居地域では片付けの後、建物の整理もある。水に浸かったので、ほとんどの家が壊さなければならない状態だ。この時代には木造建築しかない。水だけなら腐る前に対応すればいいのだが、泥水とあっては、木材へのダメージはより大きくなってしまう。結局高台にある建物を除いて全てを取り壊すことになった。
取り壊しは力のある男性陣が行っている。女性や子どもたちが木材を小さくして運んでいる。しっかりと乾かして、燃料にするようだ。あらゆる資源を無駄にしない、素晴らしい考えだ。取り壊しにはそれなりの手間を要する。時間がかかりながらも夕方までに半分は終わらせることができた。
今日の作業が終わったところで、みんなが集合し進捗状況を確認しあった。住居地域では残り半分の取り壊しと新しい住居の建築だ。墓地は作業が終わって、畑も植えるための準備をするだけだ。住居用の木材を明日から切り出す作業も必要になってくる。人員配置をみんなで話し合うようだ。
その日の夜、今回の水害で犠牲となった人たちの葬儀が行われた。みんなしっかりと供養して、墓地に埋葬された。みんな同じ村の仲間であり、その死を悲しんでいるようだ。心からの弔いをしているのだった。
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