決戦の夜が明ける ~第3堡塁の側壁~

独立国家の作り方

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第1堡塁の戦い

第67話 心 酔

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 そんな空気を察して、優が囁いた

「、、、そうだよ、三枝君が、我々の指揮官がそうだということは、皆で貫こう、きっと今回も、三枝君には策があるんだよ。」
 
 優はいつもそうだった、龍二を信じて疑わない、そんな姿勢が周囲に伝わり、龍二を信じてみようという気持ちにさせるのだ。
 それは優が龍二に絶大な信頼を置いているからに他ならない。
 そんな優を、不思議な感触で見つめるのは幸であった、男同士の友情なのか、その正体が今一つ見えないでいた。
 たしかにそれは無理もない話だったかもしれない、優の龍二に対する感情は、友情を越え、心酔に近いものがあった。
二人がまだ、高校サッカーで無名だった時代から、優は龍二のことをよく理解していた。
 それは単純に、選手としての質の高さだけではなく、寡黙でありながら、些細な人間関係も、個人の能力や癖すらも見逃さず、驚くほどに適材適所に人事をまとめ上げ、弱小無名だったサッカー部を一気に全国区へ伸し挙げたのは、三枝龍二の采配の勝利でもあったのだ。
 その域は、単にチーム内の人事に収まらず、校内、校外に至る人材発掘、人事配置にまで及んでいた。
 しかし、それはほんの一部の人間にしか理解できていないだろう、それほど彼の人並み外れた運動能力とサッカー選手としてのセンスが目立っていたのである。
 そんな中、優だけは陰日向なく1年生の頃から龍二を見続けてきた、それもマネージャーと選手の両方を兼務してきた優だからこそ理解が出来る事なのかもしれない。
 優だけは気付いていたのである、龍二が非凡なのは、その個々としての才能ではなく、采配が天才的なのである。
 どんなに困難な状況であっても、なぜか自然とそうなってしまったように、それは違和感なく、たとえば高校サッカーで無名であったチームが、全国大会に出場したとしても、なんとなく周囲は納得してしまう不思議な説得力。
 それは、紆余曲折あったとしても、最後の最後にはしっかりと最良の方向性に向いてしまう、結果に出てしまうというスマートさである。

 しかし、そこにはとてつもない思考の葛藤と、凡人が1分間で考える数倍から数十倍の速度で思考を伸展させ結論に至るプロセスがあることを、優だけは理解しているのである。
 それは、軍隊の世界、特に戦術の世界では、とても有利であることも、優は理解出来ていた。
 むしろ、優自身は、龍二のこの思考回路が戦上手《いくさじょうず》であることに、一番最初に気付いた友人であったのかもしれない。
それ故に、今回の空挺降下作戦に、何もしていないように見えて、そこには深い考えがあることに確信を持っていた。

 実は、優自身も人並み外れた思考回路の持ち主である。

 彼自身も気付いてはいるが、優の思考回路は自身が考えるより遙かに戦術向きな思考回路であった。
 その優が考える、大凡《おおよそ》こうだろうと考える方向性の遙か上を行ってしまうのが龍二の思考である。
 それ故に、優はこの龍二の沈黙に対し、絶大な信頼をもってサポートしようとするのである。

 優は、国防大学校に入学するまで、龍二が慌てたところをほとんど見たことが無かった。
 いや、本当はあったのかもしれないが、ポーカーフェイスで上手に周囲に悟らせ無かっただけなのかもしれない。
 あの龍二に弱点があるとは、高校時代には予想すらしてこなかったのである。
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