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第1堡塁の戦い
第81話 実はちょっと気になって
しおりを挟む陸軍工科学校の生徒たちは、不慣れな学生同盟参加者の食事や弾薬の補給にはじまり、明日以降、第2堡塁攻略に必要な、制圧した第1堡塁の要塞砲などの主要火器の掌握、使用方法の習得、未明に予定されている戦闘予行に向けた資料や作戦計画の作成、更に末端隊員に至るまでの命令下達要領など、明朝の第2次攻撃へ向けた準備に追われていた。
第1堡塁の指揮所や作戦室が使えるようになったことで、狭い装甲車での指揮所活動から大幅に広くなった指揮所に、一同は戦いに勝つということの意味を噛みしめていた。
明日以降の戦いでは、万が一の事があれば後退し、第1堡塁に逃げ込むことも出来る。
しかし、そんな安心感が最初からあれば、背水の陣で挑んだ今日の奇跡は起こらなかっただろう。
そう思うと、再び排水の陣で挑むことを再認識する昭三であった。
静香と麻里は、そんな軍人としての葛藤している昭三や他の工科学校の生徒たちを見て、正直、頼もしいと心を寄せていた。
もちろん、女子生徒を気遣って駆け寄る、他校の生徒会役員男子もかなり格好良く見えたが、同じ年代で現役の軍人たちと対等かそれ以上に活躍する工科学校の生徒の格好良さは郡を抜いていた。
静香は、実はちょっと気になっていた、昭三の同級生である経塚のことを探していた。
しかし、いくら探しても見つからない、もしや戦死判定を受けたのでは、と不安になるものの、小隊長の昭三より堅実でしっかりした印象の彼が早々に戦死するとは思えなかった。
そう、経塚はこの時、戦闘には参加していなかった。
陸軍工科学校から、唯一制服に身を包み、指揮所内で龍二や優達と同じ場所で見習い士官のような立ち位置で、通信手として参加していたのである。
実はこの経塚、工科学校でも成績トップで、将来は間違いなく国防大学校へ進学するだろうとの期待から、人事交流という特例での指揮所参加であった。
そのため、参謀部の金色の飾緒とは別に、工科学校の儀礼で使用される白い飾著を装着しての参加であった。
そんな経塚生徒は、一連の戦闘指揮を見て、人生観に影響が出るほどの衝撃を受けていた。
陸軍軍人としてサラブレッドと言える人生とは、陸軍工科学校から国防大学校、そして陸軍士官学校へと進み、参謀本部勤務と、概ね決まっているようなものだった。
それは、海軍や空軍に、陸軍と同様の「工科学校」が再発足した現在においても、その道順は同じなのである。
そんな中、まだ陸軍士官学校も出ていない国防大学校の学生が、第一師団の現役相手にこれほどの善戦をしている様は、圧倒的であった。
幼い頃から戦国時代の知識が豊富な経塚であったが、何か別次元のものを感じていた。
本作戦において、昭三たちと第一線で戦えないことを正直残念に感じていたが、今は全く逆の認識になっていた。
自分も三枝龍二のようになりたい。
そんな茫漠とした願望が心の中に芽生えていた、そして誓うのである、自分も必ず国防大学校に入学し、陸軍の士官となるのだ、と言うことを。
そんな羨望の眼差しに気付くこともなく、生徒会参謀部と三枝龍二たちは、明日の戦いに備え作戦を整理していた。
「明日の朝から第1堡塁の装備を使用した要塞戦が可能となるのは、かなり有り難いことだな」
城島が機嫌良く話す。
しかし、龍二はいつもの通り冷静で感情があまり表に出ていない。
周囲は、龍二自身も本日の勝利と、第1堡塁の陥落を喜んでいるものと考えていた。
しかし、当の本人は第1堡塁の制圧は、作戦行程の一部でしかなく、特に喜ばしいとの感情が無かった。
むしろ、明日以降が龍二にとって正念場と言える。
これまでの戦いは、ほとんど龍二の考案した通りに進み、明日以降の戦いの足がかりとしては大きな問題は無かった。
しかし、敵の損耗状況が正確に判明しない以上、それは予想の範囲でしか行動出来ない。
当然不足事態は発生する。
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