その失踪事件には 〇〇人が関与している

独立国家の作り方

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細谷 淳平

第35話 細谷 淳平 ⑮

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 結局俺は、高坂さんが泣きやむまで、ずっと側に居てあげるしか出来なかった。
 もう夜も8時を回って、泣きやんだ高坂さんを家まで送ろうとした時、彼女は再び怖い事を言った。

「細谷君、今日私が言った事は忘れて。今は貴美ちゃんだけを見て。貴美ちゃんを幸せにしたいと言う気持ちも、あなたを好きと言う気持ち、どっちも嘘では無いわ。だからお願い、貴美ちゃんの旦那さんを貫いて」

「前にも言ったけど、俺は男のルアーが居るのなら、貴美を釣り上げて欲しいと本気で思っている、でも、貴美と別れて誰かと付き合うとか、考えてないんだ、それは貴美に申し訳ないから」

「それじゃあ、細谷君の気持ちは一体どうなるの? そんなのダメだよ、私、貴美ちゃんを真っ直ぐ好きな細谷君が好きなの、あなたの真っ直ぐな所が、本当に・・・・」

「うん、わかった。だからもう泣かないで。苦手なんだよ、女子の涙ってさ」

「ありがとう。やっぱり細谷君はそうじゃなきゃね。頑張って、もうここまででいいから」

「危ないよ、家まで送るよ」

「いいから! 今からでも貴美ちゃんの所に行ってあげて、きっと待っているよ」

 もうすぐ梅雨が終わる、ようやく沈んだ日は、もう夏間近だと言うのに、少し肌寒いと感じる風を運ぶ。
 今日は貴美に会いにくいな。どんな事情があれ、貴美以外の人とキスしてしまった。
 気持ちが入っていない形式上のキスであっても、貴美は不快に思うだろう。
 それでも、高坂さんの気持ちを考えると、やっぱり貴美の家に俺の足は向いてしまう。
 そうだ、そう言えば携帯を見ていなかった。貴美からメールが入っているかもしれない。
 しかし、貴美からのメールは、昨日を最後に一回も入っていない。
 いつもは昼間でも入ってくるのに、そう言えば、今日に限って妙ではないか。
 俺は、なんだか嫌な予感がして、貴美の家に走った。
 すっかり暗くなった町を、俺は全力で走る。
 神様、俺が貴美以外の女性にふらふらしたから、怒って貴美を俺から奪おうってんじゃないよな。
 彼女の家が見えて来て、俺は愕然とした。

 中谷家の家の灯りは点いていなかったんだから。

 慌てて貴美に電話をかける。神様、もう本当にごめんなさい、俺、何でもしますから、どうか貴美を俺から奪わないでください!。
 貴美は電話に出ない。
 もう、こうなったら病院に走るしかない。
 俺は自宅に、遅くなるって電話をかけた、その時知った、貴美が再入院したって事を。

 俺は走るのを止めた。多分、今この時間から行っても、面会は出来ない。家族以外。
 自分が戸籍上、法律上の夫で無いことが、本当に嫌になる。
 俺は、何をやってもだめだな。

 それでも俺は、どうしても諦めがつかず、貴美が居るであろう病院へ向けて歩き出した。
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