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細谷 淳平
第37話 細谷 淳平 ⑰
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貴美が亡くなってから直ぐに、お通夜と葬儀の日程が決まった。
貴美の両親は、嫌で無ければと、俺に家族側の席を準備してくれた。
遺影の横には、貴美が中学と高校で使っていたバレー部のユニフォームやシューズが並べられ、訪れた同級生や部活の友人の涙を誘う。
その中に、島崎さんも含まれていた。
「今日は、高坂さんと一緒じゃないんだな」
「うん、あれから口きいてないんだ。細谷くん・・・・やっぱり君は偉いよ。貴美ちゃんの事、本当にありがとう。きっと喜んでたと思う」
俺は、最後に病室で、ささやかではあるけど、結婚式を挙げた事を伝えると。それまでクールを装っていた島崎さんが悲鳴を押し殺すように両手を口元に当てて泣き出した。
そして俺に「ありがとう、細谷君、ありがとう」と何度も言う。
あんなに気丈な島崎さんが、こんなにも友達を想って泣くんだと思ったら、俺もつられて涙が流れた。
周囲からも、女子高生達の啜り泣く声が聞こえてきて、本当に辛かった。
貴美、本当に死んでしまったんだな。
時々、現実味が無くなって、実はまだ生きていました、なんてことにならないかと、本気で考えたりもした。
そんな妄想を、目の前に居る女子の涙が打ち砕いて行く。
島崎さんは、また明日の葬儀にも来ると言って、その日は帰っていった。
それと入れ替わるように、今度は高坂さんが葬儀場を訪れる。
「・・・・三日ぶり、かな」
高坂さんは、既にハンカチをびしょびしょに濡らし、俺の前に来た。
「細谷君、君はやっぱり私のヒーローだよ。貴美ちゃんの最後を看取ってくれたんでしょ。本当にありがとう・・・・」
もう、泣き声の合間を縫うように、一所懸命言葉を伝えようとする高坂さんが、俺には切なくて仕方がなかった。
棺から覗かせる貴美の顔を見た途端、高坂さんは小さく声を挙げた。小さく、振り絞るように、本当に小さく「貴美ちゃん」とつぶやきながら。
「貴美ちゃん、穏やかな表情だね、苦しまなくて済んだんだね」
肺の転移による病死、本当は苦しかったに違いない。俺に苦しい顔を見せまいと、17歳の精一杯の頑張りだったのだと。
こうして、お通夜から葬儀までめまぐるしく終わると、貴美は荼毘に付された。
貴美のご両親から、一緒に来ますか? と聞かれたが、もう限界だった。
最後に貴美の母親から、彼女の日記が手渡された。
こんな大事なものを、俺に?
それでも、ご両親は俺に持っていてほしいと託してくれたのだった。
自宅に帰ると、さすがにもう何も出来ないほど疲れ果てていた、身も心も。
ちょっと休みたいな。
部屋を暗くして、俺はベッドに入る。貴美の日記を見たかったけど、もう貴美はこの世に居ないんだから。
第一、見るには勇気が要る。それよりこの疲労感をなんとかしなければ。
精神の限界が、俺の体から熱を発しているようだ。
俺はベッドに入った途端、高熱にうなされた。抱えていたものが一気に崩落して行くような錯覚に陥り、体温を正常に保てなくなってしまった。
随分寝たらしい。
富田が学校のプリントを届けに寄ってくれたらしいが、そんな記憶もない。そして、携帯には心配する高坂さんと島崎さんからそれぞれ沢山メールが届いていた、いや、二人だけではない、クラスや部活のみんなからも、励ましの言葉が沢山届いていた。
・・・・心配かけてしまったな。
熱のせいか、身体がフワフワとした感じで気持ち悪い。
全部夢だったような。
本当に、これが全部夢ならいいのに。
机に目をやると、貴美の日記帳が置いてある。現実に引き戻される。
そうだ、貴美は死んだんだ。
少し冷静になって、俺はタオルケットを頭から被って一人で泣いた。冷静になるのが怖い。
日記を読もうか、かなり迷った。でも、こんな状態で読むのは、貴美に悪いと感じる。
そんな時、家のチャイムを鳴らす音が聞こえた。
貴美の両親は、嫌で無ければと、俺に家族側の席を準備してくれた。
遺影の横には、貴美が中学と高校で使っていたバレー部のユニフォームやシューズが並べられ、訪れた同級生や部活の友人の涙を誘う。
その中に、島崎さんも含まれていた。
「今日は、高坂さんと一緒じゃないんだな」
「うん、あれから口きいてないんだ。細谷くん・・・・やっぱり君は偉いよ。貴美ちゃんの事、本当にありがとう。きっと喜んでたと思う」
俺は、最後に病室で、ささやかではあるけど、結婚式を挙げた事を伝えると。それまでクールを装っていた島崎さんが悲鳴を押し殺すように両手を口元に当てて泣き出した。
そして俺に「ありがとう、細谷君、ありがとう」と何度も言う。
あんなに気丈な島崎さんが、こんなにも友達を想って泣くんだと思ったら、俺もつられて涙が流れた。
周囲からも、女子高生達の啜り泣く声が聞こえてきて、本当に辛かった。
貴美、本当に死んでしまったんだな。
時々、現実味が無くなって、実はまだ生きていました、なんてことにならないかと、本気で考えたりもした。
そんな妄想を、目の前に居る女子の涙が打ち砕いて行く。
島崎さんは、また明日の葬儀にも来ると言って、その日は帰っていった。
それと入れ替わるように、今度は高坂さんが葬儀場を訪れる。
「・・・・三日ぶり、かな」
高坂さんは、既にハンカチをびしょびしょに濡らし、俺の前に来た。
「細谷君、君はやっぱり私のヒーローだよ。貴美ちゃんの最後を看取ってくれたんでしょ。本当にありがとう・・・・」
もう、泣き声の合間を縫うように、一所懸命言葉を伝えようとする高坂さんが、俺には切なくて仕方がなかった。
棺から覗かせる貴美の顔を見た途端、高坂さんは小さく声を挙げた。小さく、振り絞るように、本当に小さく「貴美ちゃん」とつぶやきながら。
「貴美ちゃん、穏やかな表情だね、苦しまなくて済んだんだね」
肺の転移による病死、本当は苦しかったに違いない。俺に苦しい顔を見せまいと、17歳の精一杯の頑張りだったのだと。
こうして、お通夜から葬儀までめまぐるしく終わると、貴美は荼毘に付された。
貴美のご両親から、一緒に来ますか? と聞かれたが、もう限界だった。
最後に貴美の母親から、彼女の日記が手渡された。
こんな大事なものを、俺に?
それでも、ご両親は俺に持っていてほしいと託してくれたのだった。
自宅に帰ると、さすがにもう何も出来ないほど疲れ果てていた、身も心も。
ちょっと休みたいな。
部屋を暗くして、俺はベッドに入る。貴美の日記を見たかったけど、もう貴美はこの世に居ないんだから。
第一、見るには勇気が要る。それよりこの疲労感をなんとかしなければ。
精神の限界が、俺の体から熱を発しているようだ。
俺はベッドに入った途端、高熱にうなされた。抱えていたものが一気に崩落して行くような錯覚に陥り、体温を正常に保てなくなってしまった。
随分寝たらしい。
富田が学校のプリントを届けに寄ってくれたらしいが、そんな記憶もない。そして、携帯には心配する高坂さんと島崎さんからそれぞれ沢山メールが届いていた、いや、二人だけではない、クラスや部活のみんなからも、励ましの言葉が沢山届いていた。
・・・・心配かけてしまったな。
熱のせいか、身体がフワフワとした感じで気持ち悪い。
全部夢だったような。
本当に、これが全部夢ならいいのに。
机に目をやると、貴美の日記帳が置いてある。現実に引き戻される。
そうだ、貴美は死んだんだ。
少し冷静になって、俺はタオルケットを頭から被って一人で泣いた。冷静になるのが怖い。
日記を読もうか、かなり迷った。でも、こんな状態で読むのは、貴美に悪いと感じる。
そんな時、家のチャイムを鳴らす音が聞こえた。
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