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プロローグ

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 待って。
 行かないで。

 身動きの取れない状態で、僕はにっこり笑ってこう言った。

「行って、早く。僕は大丈夫だから」

 顔の見えない誰かは、最後まで僕の名前を叫んでいて、その姿が見えなくなる頃、僕は「待って」「行かないで」と泣いた。足が動かないんだ。知っているだろう? 全然言うことを聞いてくれないんだよ。

 空襲警報が鳴り響く中、僕は真っ赤な天を仰ぎ、愛する人の名前を呼んで、たった一つを祈った。

「××××」と。

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