上 下
29 / 60
【結】 俺たちの答え

ー side 嵐 ー 1

しおりを挟む
 金玉、すっからかんになった気がした。
 兄ちゃんのオナニーを見て、俺の名前を呼ぶ声に興奮した。そして「理性を壊してくれ」と言われた。

 本当は兄ちゃんは俺じゃない誰かを今も好きで、その影を追い続けてるんだってずっと思ってた。でも違ったんだ。兄ちゃんは過去の男じゃなくて、自分の理性と戦ってた。
 俺が高校生だから、俺が未成年だから……。

 そう分かったら、もう俺の感情が抑えきれなくなった。親に止められても俺は兄ちゃんちに通いつめて毎日抱いた。
 兄ちゃんの理性が壊れてなくなるまで、抱き潰してやろうって思ったんだ。

 兄ちゃんは相変わらず従順で絶対にそれを嫌がらなかったけど、俺は見てしまう。あのレシピノートに記されていた水色ゼリーのメニュー案が、漆黒のバツ印で消されていることを。

 ざわざわと胸が騒ぎ、急にまた怖くなった。

 そしてすっからかんになった金玉みたいに、俺もなんか猛烈な虚無感に襲われた。

 俺はまた……そうして兄ちゃんの家に行くのを止めた。それは兄ちゃんの店がついにオープンする日の前夜のことだった。


 店は大盛況だった。オープン半年は無休で頑張ると言っていた兄ちゃんはその言葉通り、本当に休みなく働いていて、家に帰ってくるとすぐに寝てしまうと笑っていた。

 俺が兄ちゃんに会いに行っていないという事すら気付いていないような気がする。なんなら忙しい兄ちゃんを気遣ってるんだと勘違いしていそうだ。もちろんそれは間違っていないけど、そういう理由で会いに行かないわけじゃないから。


 大きくバツされた水色ゼリー案。


 それはまるで、俺を否定された気分だった。
 大人の兄ちゃんは俺の将来も考えるって言ってた。だからいつかあのゼリー案みたいに俺は見切りをつけられてしまうんじゃないかって。

 それなら夏季限定でもいいから使って欲しい。夏だけの関係がいいならそれでもいい。性欲処理班でいいから俺を傍に……置いて欲しいんだ。

 俺は兄ちゃんと居たい。他に男が出来ようとも、兄ちゃんから要らないと言われようとも、俺は兄ちゃんと一緒に居たいよ。
しおりを挟む

処理中です...