異世界グロウデイズ〜ぼっちでも冒険者やってます〜

どんぐりあざらし

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陰キャボッチアメーバと鋭利な少女

憲兵と犯罪ギルド

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『次のニュースです。ロランゼールでの犯罪ギルドの活動が問題になっており、治安悪化が叫ばれています。ロランゼール当局はこれに対し捜査を強化していくと発表しています』
「あの、店長さん。あの後…」
「大丈夫、あれ以来そういう話は来てないから」
「何かあったんですか?」
「ちょっとな、それより項垂れてないでしゃんとしろ」

 犯罪ギルドに攫われて以来、そういう話はミシェルの元に届くことは無くなったと聞いてソルは胸を撫で下ろす。

「店長、犯罪ギルドって具体的に何してるんですか?」
「んぁ?そりゃ違法賭博とか金貸しとか強盗とか…あとは麻薬作って売ったり殺し請け負ったりだろ」
「(つまり私たちの世界でいうマフィアみたいなものなのね)」
「しかもこの街はデカい麻薬ギルドがあるからそこら中に売人いるんだよ。あんた達も変な奴に近づくなよ

 三人がテレビを眺めながら話しているとカランカランと扉の鐘が鳴り男女二人組が入ってきた。

「ロランゼール市兵のソライドだ。こっちはオンデルス。少し話を聞かせてもらいたい」
「憲兵が何の用?」

 青い制服を着た茶髪の亜人、動物の耳を生やした女性の憲兵ソライドとその部下であろう赤髪の男性ハッシュ、この二人はどうやら聞き込みを行なっている様だ。

「最近犯罪ギルドに武器を横流しする武具店が増えてきていてな、許可証や台帳などを確認させてもらいたい」
「いきなり来て店の中引っ搔き回す気?お客居るんだけど?」
「それは申し訳ないがこちらも捜査なのでな。やましいことが無いなら問題ないはずだが?」
「ああ?税金で飯食ってる分際でなにその態度?喧嘩売ってんの?」
「すいません!この人ちょっと言葉選びが悪いんすよ!ほんと申し訳ないっす!」

 一触即発という二人の間にオンデルスが慌てて仲裁に入った。

「ほらぁ、犯罪ギルドが大きくなると市民の皆さんも安心して外で歩けないじゃないっすか、俺たちも税金で飯食わせてもらってるからには仕事しないと申し訳ないでしょ?もちろんお姉さんを疑ってるわけじゃないんですが、これも仕事の一環でして…ね?ご協力頂けないっすかね?」
「ちっ、今ある分しか見せられないよ」
「それで大丈夫っす!ご協力ありがとうございますっす!」

 ミシェルはソライドをひと睨みし、許可証と取引台帳を持ってくるため奥へと引っ込んでいった。

「リゼル先輩、良くないっすよあの言い方は」
「反抗的な人間には仕方ない部分もあるだろう」
「いやいや、聞き込みしに来たのに喧嘩打ってどうするんすか。先輩ただでさえ顔怖くて誤解されるのに」
「目つきが鋭いのは生まれつきだ!」
「全く…あっ、お騒がせして申し訳ないっす」

 二人のやりとりをただ漠然と見ているソルとミナミ、オンデルスは二人に気付いたのか自身のIDカードを見せながら頭を下げた。

「ハッシュ・オンデルスと言います。こっちは先輩のリゼル・ソライドさん。お二人は学生さんっすかね?」
「あっ、いえ、私たちは冒険者なんです。私はかつらっ、ミナミ・カツラギで、こっちはソル…」

 ミナミがソルの紹介をしようとした時、彼が居ないことに気づいた。
 どこに行ってしまったのだろうかと店内を見渡すがどこにもいない。

「もしかしてあそこのゴミ箱に入っている彼のことか?」
「ソル君!?」

 リゼルが指す方向にはソル専用と書かれた大きめのゴミ箱に入ってこちらをチラ見している哀れなボッチマンの姿があった。

「何してるのよ!出て来なさーい!」
「だだだだだだってすごく険悪なムードでしたし」
「ほら先輩、怖がっちゃってるじゃないですか」
「私のせいなのか!?あ、いや、すまなかった」

 無理やりソルをゴミ箱から引っ張り出すがそれでも怖いのかカウンターの下に隠れてしまう。なんとも情けない男である。

「お二人はギルドに所属してたりは?」
「いえ、してないです(この人たちはこの世界でいう警察なのね)」
「無所属なんすね。最近変わったこととか気になる事とかありました?」
「いえ、ニュースで怖い人が多いなぁってくらいで」
「まあロランゼールはお世辞にも治安がいい街とは言いにくいですからね。今も犯罪ギルドの麻薬が横行してますし…」

 現在エグザミア皇国では犯罪ギルドによる麻薬問題が社会問題になっている。麻薬中毒で死亡する事例なども珍しくなく、ロランゼール憲兵は捜査を続けているが被害は減っていない。
 その後ミシェルが許可証と直近1ヶ月の取引台帳を提出し、確認が終わった二人は店を後にした。

「ちっ、税金泥棒どもめ」
「あはは…(どの世界でも警察って嫌われるものなのね…)」
「口ではああ言ってるけど憲兵が犯罪ギルドと繋がってるとかザラだからな。信用しすぎるなよ」
「あ、あのぉ…僕そろそろ失礼します…」
「おう、またな」
「またねソル君」

 ソルはフラフラになりながら店の外へと出ていった。
 
「かわいそうに…ソルのやつ憲兵どもにいじめられたんだな…」
「いや、憲兵の人何もしてないですよ」

 ソルが三人以上の空間にいると加速的に疲労するデバフを持っているだけである。
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